第27話 セスタと鉛のドングリ

昼、教会の離れで羊皮紙に書きものをしていると


「ソウシロウ!いるかー!?」


扉の外から声が聞こえた。


扉を開けて外に出るとセスタが立っていた。


「ペンとインクを片付けるから少し待ってくれ」


そう言って離れの中に戻り羽ペンとインクを片付け、リュックサックを背負う。


「待たせたな」


「おう」


総士郎に返事するセスタはなぜか偉そうに胸を張った。


外周沿いに移動し、駅馬車を待つ。設定された駅ではないが、手を上げていればだいたい止まってくれる、らしい。


「市での売り上げの方はどうだった?」


なんとなく雑談で話題を振った。


「んー、イマイチだな。可愛く作れてるとは思うんだけどなぁ」


セスタは少し顔をしかめて答えた。


「ああ、デザインは悪くはないと思うし、複製技術も大したもんだと思うぞ」


「ソウシロウは話がわかるな。いいヤツだ」


そんなふうに雑談しながらセスタの工房まで駅馬車に乗って向かった。




「親父!帰ったぞ!」


セスタはそう言って工房の扉を開けた。


工房は2階建ての建物の1階で大きな炉を備えた大き目の部屋だった。


鍛冶の仕事をするからだろう床には板が張られてなく、土のままだ。


「おう、セスタ、お帰り。って、そっちの人はなんだ?」


「アタイの客だ。注文とアタイの仕事が見たいそうだ」


「ほー、こんな小娘の仕事を見たいとは変わってるな」


セスタの父親だろう。筋骨隆々の日焼けした体にハゲ上がった頭、仕事中なのか手には革の手袋をして金槌を持っていた。


「オレはロウダン、ロウダン・アニティだ。この工房で釘や針なんかを作ってる。コイツの父親だ。ヨロシクな」


「総士郎・関だ。一応、魔法使いだな。よろしく」


手袋を外したロウダンと握手を交わす。なぜか今日は握手することの多い日だ。


「ソウシロウは最近話題の両断の魔法使いらしいぞ」


セスタがなぜか得意そうに言った。


「両断の魔法使いって何でも真っ二つにしちまうって噂のか?すごい魔法使いって言うから歳のいったじぃさんかと思ってたんだが、かなり若いんだな」


ロウダンは総士郎をまじまじと見た。


「まぁ、若いのはいいことだ。セスタの仕事がだらしなかったらオレに言ってくれ。ゲンコツ落として気合い入れ直さしてやっからよ、ハッハッハッ!」


そう言って豪快に笑いながらロウダンは仕事に戻っていった。


「ふん、こっちは気合い十分だっての。親父はほっといて仕事だ、仕事」


そう言うとセスタは総士郎が彫ったドングリ型の木片を取り出した。


木彫りのドングリを真剣な表情で見つめる。


「んー穴があるから普通に横には作れないか。縦に作るか。鉛なら大丈夫だろ。コイツにインクで印を付けるけどいいか?」


「ああ、構わないぞ」


セスタは羽ペンでドングリ型の真ん中ら辺に印をつけた。


「木枠は人形と同じでいいか。あと、砂を少し濡らして、こうして。型がずれないように印を着けて」


2つの木枠を用意し、その中に砂を詰める。そこに浅い穴を開けた後、総士郎の彫ったドングリを押し当てる。


「こんなもんかな?あとは鉛を通す道を切って、、、できた」


鉛を流し込む砂型ができたらしい。


「もっと複雑な形なら粘土をもっと混ぜて、粘土が乾くまで待ったりするんだけどな。これは模様とかも入ってないしコレでいけるはずだ」


ドングリ型の頭の方とお尻の方を作る2つの砂型をぴったりとくっつける。


そこに、あらかじめ用意していた溶けた鉛を流し込んだ。


「鉛はちゃんと通ったみたいだな。後は少し待つだけだ」


セスタは鉛を取り出すときの炉から熱で汗をかいていた。


「これって鉄で作ることはできないか?」


総士郎はセスタに質問した。


「んー、鉄は難しいな。質のいい鉄を溶かせるほどに炉の温度を上げられないからな。質の悪い鉄ならできるけど脆いし錆びやすいから実用品には向かないな」


「なら、軽銀はどうだ?」


「軽銀か。軽銀ならできるけど、今、軽銀は手に入りにくいからなぁ」


「そうなのか?」


「今は地下迷宮に潜って軽銀を取ってくるヤツがいないからな。安いのに手に入らない状態だな。時々、ご法度の硬貨を鋳潰すヤツが出るくらいだ」


「へー」


軽銀、アルミニウムは手に入りにくいのか。そして、質の悪い鉄なら鋳造で形を作ることができるらしい。


「そろそろいい頃だろ」


セスタは鉛を注いだ砂型を鉄の棒で叩いて崩した。


「いい感じだな」


砂の中からドングリ型の鉛の塊が4つ繋がった形で出てきた。


「おー、短時間できれいにできるもんだな」


総士郎は感心する。


「ソウシロウのものは形が単純だったしな」


そう言いながらセスタはたがねを当てて4つ繋がっていたドングリ型を切り離していく。


そしてその1つを布で掴んで総士郎に差し出した。


「まだ熱いから直接持つなよ」


総士郎は注意に従い布で包まれたまま鉛を受け取る。


鉛なので重量はあるが総士郎が木で彫ったそのままの形だ。ドングリ型のお尻の部分に開けた穴もきちんとできている。


「こんな感じだな。切り離した部分は後でヤスリをかけて整えるがだいたい出来上がりだ。とうだ?満足行く出来か?」


「いい感じだな」


「わかった。じゃあ、これを5セットで20個作るゼ」


「そうだな、頼む。あと、もう1つ注文があるんだがいいか?こういうのを質の悪い鉄でいいから作って欲しいんだが、、、」


総士郎は新たな注文をセスタにお願いするのだった。

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