聖幼女の悩み

みなさま。

電話を受けたらいきなり怒鳴られた経験、ありますか。


あたくし、たった今いきなり怒鳴られました。


『こらジーナてめぇ、今月の技能維持飛行レポート出してねぇだろ!年内に出せんのか!』何をいきなり怒ってるんだという顔で、内線電話器の上に浮かんだハゲ頭を睨んで差し上げます。

「はい大佐殿、状況は大変厳しいと報告した通りであります!」

『お前のライセンス剥奪で済まねぇから連絡入れてんだよ。だいたいNBの方の業務予定入れてねぇんなら時計付けとけ時計。いくら連邦とNBの掛け持ちで機密規制されてるっつってもお前、自分のオフィスなら時計メディアウォッチしてられてるだろ…』

「せやかてゴルディーニ大佐殿、あたし前から言うとるやん。電話以前に乗れるモンあらへんねんて。だいたいなおしがついこないだ着陸しくじってバンシーF-300のケツこすってさ、嘉手納の組立センターF A C O送りにしてるん知ってるやろ?しかもドゥブルヴェF-310引き上げてくれたんは良いとして代替機来てへんやん。今うちらカリバーンM-IKLA21以外にすぐ動かせる機材ない状態やねんで?カリバーンで飛んで認証してくれるん?」

『カデナに乗りに来い。それが面倒なら宇宙軍のドゥブルヴェIF-170にするか? 401IFS第401防空飛行隊の機材借り出しといてやるぞ』

「あたし、あの件以降はドゥブルヴェ乗るん嫌や言うてるやん…それに嘉手納にカリバーン降ろされへんのも前から言うてるやんか。あれ一応NBの最高機密機材やで。しかも嘉手納に向けて飛ばしたら怒りよんねんで? あれ自分の意思あるからあたしが行きたくてもやで、あーこりゃ軍機上でヤバいて判断したら勝手に戻りよるねんから」

『めんどくせぇ飛行機だなおい』

「文句はNBに言うて。あとせめて3日待ってえや。そしたらロンドンからクリスがアークロイヤルHMS901ごと帰ってくるし、ついでにアークロイヤルに何機かハンター23積んでるから、それ借りる事も出来るねんよ?」

『だから横着してNBの機体飛ばそうとするんじゃねぇよ。頼むから宙兵隊でも宇宙軍でもどっちでもいいから、連邦の機体で飛んでくれ。60分だけでいいから!』

「ほな申請通してえや。1年前からドゥブルヴェやったら使い勝手悪すぎや言うてるやん。デカいわ偵察ポッド積まれへんわでウチらで持て余すから困るねんて。月かモハーベ砂漠でモスボってるバンシー1機整備してくれたらええねんて」実はバンシーという戦闘機ですが、話に上がっているドゥブルヴェより少し幅が狭いだけで結構おっきいのは内緒の方向で。バンシーがF-15くらいと言え、それでたいていの人は理解できると天の声がありましたが、ようわからんです。

『だからバンシーは今ダメっつってるだろ。お前らが面白い使い方したせいでな、アレの価値見直しって事で、再整備配置令が出て保管機があらかた出払ってんだよ。ムッシュ千葉も恨んでたぞ、お前のこと』

「えー、それ千葉ちゃんの八つ当たりやで?あたしわるないもーん。それかこの際ババヤガーで我慢します贅沢言いません言うて申請本文にも書いといたやんか」

『おめーなぁ、ババヤガーって…ババヤガーF-400は現役バリバリの配備機だぞ。NBの連中の目に触れる場所に置かせるなって主計や基地司令部が喚いてんだぞ』

「いーまーさーらー。それ言うんやったら、未だに領事館の地下格納庫にルドゥタブルHHMM-21F2みたいなもん1発置いてんのバレたらどないするんよ。あれこそ戦略機密やん。アレかて早よ引き取り入れて欲しいねんで?なんぼ領事館敷地や言うてもやで、指向性純融合タイプ言うても100メガトンあんねんでアレの弾頭出力。テリブルHHMM-06F2だけでもええ加減ヒヤヒヤしとんのにやで、こんなもんいつまでも大阪市内に置かんと、はよ嘉手納の弾薬庫でもマーズリングでもトロヤでもどこでもええから持って行ってえや」

『あー分かった分かった。機材補充申請は督促してやるから、とりあえず25日までに何とかしてカデナに来い。最悪、ナハの航空自衛軍のニンフェットIF-200J使えるように頼んでやるから!』と言い残して、ゴルディーニ大佐のハゲ頭の表示が消えました。

…あのドハゲのいた場所からするに、宙兵隊教導軍団嘉手納基地分駐隊事務所だなと。

で、かいつまんで説明いたしましょう。

あたくし高木ジーナですが、現在は汎銀河人類連邦宙兵隊・英国並びにNBニューブリテン領事館付武官少佐を拝命しております。

そして「12月分の技能維持飛行義務を果たしてないではないか、お前の戦闘飛行ライセンス剥奪だけで済まずに教導監督責任で軍団丸ごと怒られるんだよ立場考えろよ」と、直接上司でもない腐れ縁の昔の上官にして教官に叱られていた訳ですねん。

ちなみにわたくし、日本国民ならびに連邦市民としての名前は高木ジーナですが、NBと英国での名前はジーナ・タカギ・ワーズワースで旧姓名の連邦表記はジーナ・イワノブナ・タカギです。

旦那様のおかげでNB宇宙軍特命准将という特進階級も頂き、向こうではアークロイヤル級汎用航宙戦闘母艦艦長資格とか艦隊指揮ライセンスも貰っておりますが、日本国はおろか連邦と正式に国交を結んでいないどころか、数年前にやーーーっと交戦国から準戦時関係国扱いに対応を緩めた国の国籍や軍籍を掛け持ちしている立場なんですが、あたし。


どうしてこうなった。


ところでさっきの会話に違和感を感じた人はいませんか。普通なら「え?沖縄に民間の飛行機飛んでないの?旅客便があるなら乗ればいいじゃん」となりますよね。

ですが、地球での在大阪英国領事館こと実質駐日NB大使館関係者は非常に危うくややこしい立場なんですよ。

テロ対象となりかねないのでなるべく軍用機、出来れば武装機で移動しろと連邦・NB関係者合意のもと内々の通達が出ておるのですよ。旦那クリスがいくらおかねもちでプライベートジェットくらいすぐ買えるとしても、どこかの富豪のような安楽な移動どころか戦闘機や倍力防護装甲TAPPSや、最悪は今回のクリスのロンドン行きのように宇宙空母で飛んで行かざるを得ないわけなんですよ、私ら。


どーしよーかなーM-IKLA20クロス(エオン)に頼み込んでババヤガー一機無理矢理作ってもらおうかなーとか考えているとですね。

更に頭の痛いお方、来られました。

そちらの世界だと、こういう時は青いタヌキ型お助けロボットというのですか、役に立つか立たんのかようわからんのが机の引き出しから出てくるらしいですね。

ですが、うちの金色のクレーゼえもん、クローゼットから出てくるんですよ。

しかもこちらの問題を解決するのは良いとして、あっちの問題を持ち込む事しばし。

「お、ね、え、さ、ま」


そしてもっと問題がございます。


このお方が我々の側の地球…連邦世界の住人に頭痛を起こさせる理由の一つがこの方の普段の格好なんです。


いきなり目の前にですね。

金ピカ装身具だけの裸の女性、現れたらどうしますか。

もう神○サンバパレードとか浅○サンバ祭りとかのレベルじゃないんですよ。

本場リオでもここまで露出すんのかって感じなんです。

「あー、また痴女が来た。はい何でしょ愛しの義妹よ」

で、前編で申しました通り、この女性があたしの子供を実際に出産した人物で、義妹となります。

「誰が痴女ですか。痴女とは殿方をのべつまくなしに欲するものでは?という話はともかくと致しますが」つまり、わざわざ空間転移して来ただけの話があるんでしょ、義妹よ。

「そう言えばマリアリーゼも…そちらの暦では5歳になりますかしら」

「そうなりますかねぇ。あ、お茶かなんかいる?」

「そうなりますか、ではありませんわ。お義姉様方の方の義務教育とやらがございますでしょ?あとお義姉様のこれを頂きますわ。これが間接なんとやらでございますのね♪」

うん、この義妹、諸事情で男より女な部類なので困ってるんです。

「えー、待て待てあんたの分のコーヒーちゃんと用意さすから、あたしん飲まんといてお願い!それとマリアはクレーゼの後継ぎ確定みたいなもんやん。それにあの子、うちらの幼稚園とか行かしても絶対浮くて!」

「あたくしもそう思いました。ですが、これはマリアリーゼのたっての希望。となればクリス様とお義姉様に相談させて頂くしかございませんの」言うなりあたしの飲みかけコーヒー全部飲みやがるし。

「つまりぃ。今でも既に大学院卒余裕の知能を有しててやで、更にあんた譲りの能力者で普通のちきう人からしたら神様みたいな子が幼稚園なり小学校なりに行きたいと」

「左様ですわ。ああお義姉様、あたくしも説いて聞かせましたのよ。マリアリーゼ・ワーズワース・アクエリアス、貴方もいずれは聖院金衣女聖の地位を継ぐ立場なのをこんこんと」

「で、マリアは何と言うとんのさ」

「少々お待ちを」

言うなりクレーゼさんは専用の黄金椅子に座り込まれます。

ぶっちゃけ連邦歴0130年に迫ろうかという12月の冬場なんですけど、今。

ですがこの季節には似つかわしくないどころかですね、重ねて申しますが、絶対に街中に出したくないお姿なんですよ。


…ですが、この痴女姿でないと、彼女の周囲のありとあらゆる物質、数百度から千度以上の高熱に晒されてえらい事になるのは関係者一同が渋々ながらも了承している件でもあるのです…。

(熱気は溜め込みますから大丈夫ですわよ)

これ、彼女たち女官種が心話と称していますけど、思念通話です。

早い話が一種のテレパスみたいな能力で話しかけてくるのです。


はい、この能力だけでもとんでもない話ですよね。


ですが今から更に驚きの技を披露しようとしています。椅子に座ってるのはその際に出る熱を吸わせようと考えてくれているせいもあります…つまり異なる次元時空にいる相手を含めた複数参加の双方向リアルタイム会議、これを機械の力を借りずにやってのけようとしているのですよ。

もっとも、会議どころか娘の教育方針についての母娘喧嘩アンド実姉妹と義理の姉の乱戦口バトルになるのが確実なのが何とも情けない話です。

これを技術とか能力の無駄遣いと申します。


で、母娘の対話の前にクレーゼさんの能力と体質について説明してきましょか。


先ほどから申しております通り、このお方の今の姿。

ブラジルのサンバカーニバルとか千夜一夜物語な踊り子さん、それも露出度極限な部類をご想像下さい。


そして想像できない人に言うと、この人、ぶっちゃけ宝石類をちりばめた金属製…ほとんど金製の鎖で出来たスリングショット水着まがいしか普段から身につけてはりません。

乳頭や下の毛はおろか、股を開けばありがたい観音様も拝観できるお姿です。

日本で生まれ育った方にはあまりご縁がないでしょうけど、南ヨーロッパや南太平洋系のリゾート地でしたら、この時代でも普通に痴女淫女姿で歩いたり泳いだり寝てるのん、割といてはります。


ただ、そんな格好してて聖女扱いされるのは宇宙というか諸々の次元時空を探しても、とりあえずクレーゼ金衣女聖率いる聖院が統治する別次元の地球くらいだろうな、とは思いますよ!


で、金というのは融点、つまり溶け出す温度が摂氏一千度を超える、熱に強い金属です。

そしてこの金の椅子、見るからに金の使用量が100gや200gどころではありません。

持ち上げてもかなり重い代物でして、10kgは最低でもありそうです。1kg辺りの価格を七百万円としても…おい。


で、この金の椅子の素材の出所ですが、言いたくないです。


青森の恐山あるでしょ、あの幸福を科学する人みたいな感じで、あなたの知りたくない死後の世界から人を呼んで代わりに話してくれる巫女さんみたいなおばーちゃんがいるとこ。

で、硫化水素ガスか塩素ガスか知りませんけど、吸ったら確実に死ぬか身体の調子が悪くなる火山性有毒ガスがそこかしこで噴出してて、辺り一面卵が腐ったような匂いが立ち込めてる怪しいとこ。

ある日の深夜、あそこの山中でまさにその毒ガス噴出量が洒落にならなさすぎて短時間で死ぬから立ち入り禁止になってる辺りでですね、なぜか馬鹿でかい穴が一瞬だけ開いたと思えばすぐ塞がったようなことが起きたと思ってください。

そして、仮にその時の穴が開く前と塞がった後でですね、恐山一帯の土砂や岩石の重量をもし比較する手段があった場合、恐らく10kgくらいの何かの成分が消滅しているはずなんですよげふんげふんげふん。


つまり、そこらから毒ガスが噴き出している上に土にもヒ素を多量に含んだ猛毒の火山からあっという間に数キロの純金を抽出する事もできちゃうと言う、そんな魔法というか超能力というか神通力めいたものを行使できる魔法使いみたいな巫女さんの筆頭格が、他ならぬクレーゼさんと思ってくだされ。

で、その力の代償に、普段から体温が高めな上に行使する力の程度によって周りに熱気が放射される訳でしてね。

そして巫女さん…向こうの言い方だと女官の能力レベルが上がるほど、体から発する熱気の温度や発熱量が上がっていく理屈があるそうです。

そして、いちばん上の位のクレーゼさんや実姉で銀衣騎士のアレーゼさんが本気で能力を行使すると、小型戦術核くらいの熱量と温度の熱波は普通に出してくる上に、このクラスの人が他人と会う場合は手加減というか我慢の名に値する行為をして頂かないと、普通の人間は近づき辛いくらい熱い訳なんですね。


ええ、そんな「あんたは昔の特撮映画の怪獣か何かか」と突っ込みを入れたくなるような歩く高温度熱源にですね、普通の人間が着るおべべを着せても一瞬で燃え上がるか炭化してしまうのですよ。

で、聖院では逆にこの特性を利用して「新人でもえらい人がすぐ分かる」制服制度を築き上げてらっしゃる訳で。

うん、あたしも何度も行ってるから知っております、この階級章代わりの被服制度。

そして、名前の最後の発音のゼやレやアやヤの区分けでも階級がわかるそうなんですが、それを知るためだけにわざわざお名前をお伺いせずともですね、対象が裸に近いほど偉い人だと一瞬で見分けられるんですよ。


そして、あたしやクリスが行くと本来は来客用ローブを支給されます。

このローブ…男性参詣客が聖院に来た際に着用を義務付けられる服でもあるのですが。

このローブは下足処という聖院本宮内の受付でお布施を払うと貸し出されます。

そしてこれに着替えて待合処で呼び出されるのを待つという、どこの日本の風俗店やねんと言いたくなる光景があるわけなんですけど、この辺りの話はおいおい出てきますから、今はそういうもんがあるとだけ覚えておいてくださいね。


で、あたくしとクリスはマリアリーゼ出生にあたって遺伝子を提供した立場です。

そして、その関係で次期金衣たるマリアリーゼの父母認定を受けております。

そのあたしらに一般参詣客用の上着を着せるのかという話もありましたし、あたしらも先ほどからお話している「聖院本宮の中をうろついてる女性ほぼ全員高温熱源」という環境では彼女たちに合わせるしかないということで、あたしらの世界でのすけべ水着に該当する露出度の高いなにがしかの着用を許されております。

(聖環さえ装着頂いておりましたら、クリス様とお義姉様は全裸でも構いませんのに…)

(護衛つけなクリスが襲われるやないか。…うちでも襲われるて言うん、あんたら自身が記憶共有で知ってるやろ…)


で、その聖院本宮。

そんな歩く高温度熱源が常時千名はうろうろしている場所ですが、一体どんな場所か。

これまた、前編でお話しました通りです。

うちらでいうインドネシアのあたりにある活火山が存在「した」大きめの島の山脈を適当に吹き飛ばした人がこの聖院を開闢した初代の金衣の方だそうです。

で、その方がその山を吹き飛ばしてくぼみを作っておっきな湖をこしらえた上で、湖を堰き止めた石造りのダムを湖の南側に作りまして、そのダムの前に石造りの巨大な神殿をおったてた、そうご想像して頂けますでしょうか。

そしてダムの水を利用しまして、神殿内に絶えず冷却水が流れるという、なんとも古代のローマかギリシャかアステカか、はたまたインカ帝国もびっくりな壮大な造りになっています。

そういやインドネシアにもボロブドールってゴツい石の遺跡、あったよな。

(そこのお話はまた後日に…初代様の話にも関わることでしてよ…)

そして、外壁だけでなく天井や床も二重以上の構造になってるそうでして、その中を冷却水が流れているそうです。そして場所によっては壁や床にすら常に水が流れております。

で、建物自体も一種の吹き抜けに近い構造です。

ですので天然のクーラーみたいに肌寒いところすらあります。

ですから、女官というか巫女さんの能力というか地位が低いほど、普通の繊維の面積を増やさないと寒くてやってられないそうです。ですので必然的に入ったばかりの新人さんとか、昇格がまだの人ほど肌色面積が少なくなる格好されてますよ。


ま、クレーゼさんの服に話を戻しましょう。そんなお方であらせられるので、こちらの地球の常識に応えたくても、物理的になかなか応えられるもんでないのが理解いただけましたでしょうか。

そしてクレーゼさんの能力を受け継いでいるマリアリーゼも全く同じ体質を有していますので、万一にもこちらの学校に通わせるとすると、制服を着せるどころか普段の姿からして軋轢が発生する訳でしてね。

「これがまだ下っ端さんとか女騎士さんなら誤魔化せるねんけどさぁ」

(ジーナ母様、マリアリーゼにございます)

(あーそんなかしこまらんでもええよ。で、幼稚園か学校に行きたいて?)

(はい、今後わたくしの代になりました際には、今より更にこちらとそちらの往来もあるかと。そうなりました暁にはですね、そちらの皆様の普段の振る舞いに知見を得ませねば、こちらから人を寄越すにも何かと差し障りがあるかと存じます)むう、正論な上にも正論やん。

(幸いにしてこのマリアリーゼ、まだ公式には金衣を譲られてはおりません故、今は自由と言えば自由の身。加えて摂政位のアレーゼお姉様が暫定金衣であれば聖院宮や院領経営は磐石も同然と考えます)

(えー、アレーゼさん、そこまで反省して精勤してんのー?)

(やかましい売女! 貴様も私の現状、良く知る所であろう! 加えてクレーゼもクレーゼだ!私の声が聞こえておろう!)えーと、この売女ってのはあたしの事です。アレーゼさんもクレーゼさん同様、あたしの頭の中が全て見えます。そして、昔あたしが嘉手納基地で上司にお願いしてアルバイトの許可をもらおうとした際に、宙兵隊内部の秘密裏の調査をする手伝いをさせられた件を知っていますので、あたしのその手伝いが具体的に何かわかってて売女呼ばわりしております。

つまり、アレーゼさんとあたしは現状では仲が激悪。この辺も覚えておいてください。

(私が問い詰めたいのはお前でなくクレーゼだ。いくら金衣銀衣の力があるとは申せ、マリアリーゼの年齢を考えろ!クレーゼ貴様、私とマリアリーゼに聖院宮の経営を押し付けて遊び歩くにも程があろう!)

(アレーゼお姉様。わたくしでなくてはこちらとの外交は出来ぬと了承済みの話では? それに、わたくしの身も行きずっぱりには出来ぬとお姉様も承知でございません事?)

(ならば私のこれを外してくれ…いや、マリアは外しましょうかとは言ってくれてはいるんだがな)あたしの頭に、憤懣やる方ない顔で黒い首輪をカチャカチャいじる銀髪のキツ顔映像が送られてきました。アングルからするにマリアの視点ですね。

(そのお話も、マリアリーゼの金衣式の後でと申し上げておりましょうに…まぁ、マリアが外さない時点でわたくしの顔を立ててくれているとは存じますが)

(…ああ…正直マリアには世話になっている。まこと、婿殿はまだしもお前と売女の掛け合わせとは思えぬ聡明さよ。あれの代の暁には聖院宮の統治は更に盤石たろう。このアレーゼ、マリアならば銀衣として仕える価値もあろうと言うものよ)えっへんとばかりにドヤ顔すんなよ、おばはん。

(…そのマリアが時々、姉様に金衣を使わせているのは存じておりましてよ…マリアリーゼの訓練を兼ねているとはオリューレには伝えておりますが、ほどほどにお願い致しますわよ?)


え。


(…ちょ、ちょちょちょ…クレーゼさん?まさか…あんた、アレーゼさんに金衣の力使わせてんの?)金の位とか金の痴女姿の意味はあたしにも分かるだけにちょっと待て聞いてません何ですかそれと乱入しておきます。

(義姉様、正直あたくしも使わせたくはございませんが、金衣でないと行使出来ない技もございまして…特に…その…精気に絡みます事は…義姉様とてお分かり頂けますでしょ?)

(待てクレーゼ、私もあれが嫌だからお前に戻れと言いたいのだ!私はお前ほど好色ではない!許されるならそこな売女に金衣を授けてでも代わりを願いたいくらいなのだぞ!)

(あの…アレーゼさん…あたしも正直、別に複数の男と聖院本宮下院部分でやってるような事まではしてへんねんけど…それにお勤め言うたかて、あんたやクレーゼさんが普通に男を相手したらさ、向こうが骨どころか灰も残りませんやん。正直、昔のあたしみたいにも直接ち◯ち◯触って日に何本も抜いてから言うてくださいよ)

(姉様。義姉様も…仲のよろしい事はうるわしく思いますのよ?)

で、クレーゼさん、手に金色の棒みたいなモノを持ちました。

その瞬間、それまで怒り心頭なアレーゼさん、顔を引き攣らせて沈黙なさいます。

(何でしたら姉様とは、今ここで本日の聖儀をわたくしが執り行のうてよろしう御座いましてよ)

(ぬぬぬ…いや、聖儀は後でマリアに頼む!お前がわざわざ施さずとも良い!)

で、アレーゼさんが哀れなまでに豹変して狼狽しているのには訳があるんですよ。

ぶっちゃけ言いますと、この人たちの特殊能力を使うための燃料、普通の人間の生体エネルギーとされる類のものでして、普通の人間にはその存在や流れは知覚できませんけど、この人たちは精気と言う名称で呼んでいまして、流れ具合や量を目視したり管理できるそうです。

そしてこれはクレーゼさんやアレーゼさん他、聖院宮に勤める女官種の方全ての体温や特殊超能力の力の源に関わる話なのです。


ですが、これをいわゆるフェミニストに話すと…絶対に発狂されますね。

そして年端ゆかない筈のマリアリーゼも「知識としては知っている」事でもあるのですよ。


そして聖院が向こうの世界の諸帝諸王諸侯に対して大きな顔が出来る理由でもあるのですけどね…。


まず、聖院世界の地球でも、皇帝や王や貴族領主の類に該当する支配者階級がいてます。

いてますけど、やはり人の身では地震台風大雪大雨山火事親父山の神といった天変地異に簡単に抗えるもんじゃありません。

これは向こうも同じです。


ですが、亀の甲羅をあぶって神託を得ようとしたり、死にたてほやほやの心臓を捧げたり、何千人も人柱を埋めたり、はたまた水銀中毒者を出しまくってでも巨大な仏像を作るとかですね、はたまた首都を移転するとか元号を変えるとか政権交代を騒ぐとか、あるいは琵琶湖のほとりで変な宗教を立ち上げなくてもですね、向こうでは天災をある程度なんとか出来ているのです。

(巨大な仏像については巨大仏像型最終決戦兵器にしてますわよ、八百比丘尼国…ただ、あまり使い勝手はよろしくないって言っておきます方がよろしいかと)

(はいはいはいはい。比丘尼国については今話すとややこしいから忘れてもらお)


で、天災人災を何とかしているの、誰ですかと言いますと。


むろん、言うまでもありません。

女官種の力で自然災害を予知したり対策しているそうです。

極端な話、この聖院島が連邦世界の地球にあったらボルネオ島です。古代から付近の活火山の大爆発に幾度もさらされるわ地震由来の津波が何度も来るわ、とどめに台風とかもたまにじゃなくてやってきます。

そんな島の自然災害、ろくに起きてないそうですよ、聖院島の場合は。


ですが、台風いっこでさえ核爆弾何発ものエネルギーを貯めているくらいです。

そして地球そのものが溜め込んだ力を吐き出す大地震や津波や大噴火を抑えるとか、はたまた大気で燃え尽きない大きさの隕石を砕き吹き飛ばすの、連邦世界でも大変です。特に隕石とか妖星の類は思わず南極に熱核ロケット群を建設して地球側で避けたくなると思います。ある程度の大きさなら、オラトリオシステムっていう電子ビームを発射するマイクロ波送電装置をウェポンモードにしたら、何とかできるんですけどね。またはアウズフムラ級航宙戦闘母艦を改装したトール型ってのが一隻だけありまして、これの対消滅重粒子砲を使っても何とかなります。


ですが、聖院世界にはそんなもん、ありません。

そこで聖院宮では「なんかあった時に金衣女官や銀衣武官が中心に使える力の源を、普段からしっかり貯めておきましょう」という研究を進めた結果ですね。エネルギー源というかパワーソースに選ばれたのがとんでもないブツでして。

そう、聖院の女官の力の恩恵に預かりたくば、税金とか上納金とか貢品も有難いけれど、なるべく頻繁に男を寄越せという話になったそうなんですよ。

つまり、聖院宮は滝の中にあるから巨瀑宮という別名がある他にもう一つ別な通称をささやかれているのをわたくしも知っていまして。

あそこの下の方の階で何をやってんのか知ったあたしは「何この巫女さんばかりの飛◯新地!」と思わず言いましたよ、ええ。…そう、国家安康五穀豊穣を願うならば、聖院宮まで女を買春しに来いというのが、向こうの地球のジャスティスだそうです。

とは申せ、世界各地の支配者に定期的に来いとばかりも言えないので、まずは何代目かの金衣の際に、聖院の分院を要所要所に作って参拝を容易にしていこうと。

更に聖院の加護を強く得たい場合は自領に聖院分院を建立する事で「うちからはこれだけ精力を提供しましたので何とぞ何とぞ」と平伏すれば便宜を図るもやぶさかにあらずというクレーゼさん談話です。


ちなみにここで言う精力とか精気というのは、人間が子孫製造行為の際、特に強く放出される生体エネルギーを指すモノだそうです。そして精気を吸い上げるのは魂を吸い取るような行為を指すそうですよ。決して物理的に精子を吸い取り、ペットボトルかなにかの容器に冷凍貯留保管とかしている訳じゃないから誤解のないようにお願いします。

更に、気持ちいい時の精気、それも男性由来のものが一番高品質だそうです。

そしてそれ、女同士とか男同士の百合や腐敗の際に出るものも間接的には「ドレイン」という遠隔吸引技能で吸い取れるそうです。あたしもクレーゼさん相手に経験させられましたし、後々にお話しますけど、アレーゼさんとも経験が。げほげほ。


そして体温の話を思い出して頂きたいのです。

向こうの地球の大多数の人類の皆様、男性と言わず女性と言わず、あたしたち連邦世界の地球人と全く同じで普通の体温なんです。

そうです。男と女がすることを普通に出来るのは下位の女官に限られていまして、少しでも上位の女官と致そうとするとですね、女官がOKでも男が文字通り大やけどするんです。

じゃ、下位女官が吸い上げた精力エネルギーはどうやって上の方に持って行くか。

その作業、まさにさっきクレーゼさんが見せびらかして脅していたホーリーな張型を使うわけでして、これを媒介にして少しずつ上の女官にバトンリレーというかザー◯ンリレーというか、とにかく精気を上貢していくそうで。

で、アレーゼさんが時折、装身具や鎧に留まらず生毛脇毛から上下の毛に至るまでですね、普段の銀色でなく金色に変わっているのはあたしも幾度となく見ております。

長時間金衣だと体毛は自然と減って行きますし、アレーゼさんなら銀衣なんだから脇毛とか普通はなくなるくらい体温高いはずなんですけど、とにかく体毛が金色になっている時はクレーゼさんのお仕事を代わりにこなすために、能力リミッターを解除してもらっている姿だそうです。

そして…クレーゼさんのお仕事を代行するという事はですね、例えエロいことが嫌いだろうが地位に応じたノブレスオブリージュな行為作業として、上級女官から「精気を吸い取る」ことをせにゃならん訳でして。

ちなみにマリアはどうしているかというと、実はマリア固有の能力として「非接触充電技の効率がものすごく高い」というアレーゼさんやクレーゼさんの診断が出ております。

なんでもマリアの能力だと、過去の金衣女聖ですらなかなか出来なかった事を割と簡単にやりかねないので、普段から白金衣級の能力が使える期待のルーキーとして、齢5歳にして女官の皆様の間では「女聖の中の女聖」との評価も高いようです。

あ、白金衣というのは常任職じゃないそうです。

例えば…モンゴルってお国、あるでしょ。ほら、最近は日本の珍しい走り方する族の民族衣装が流行してるあそこ。

聖院世界だと蒙古の怪人が率いる鬼汗国きらーかーんこくというのがモンゴルに該当するそうですが、そんなんが大軍率いて攻めて来た助けてという話があった場合だけ、金衣からさらにアップグレードされる臨時階級だそうですよ。

ですから聖院の一千年の歴史の中で、常に白金衣が在任したことはないそうです。そしてかなりの危機的状況にならないと白金衣になれないと説明しとけと…はいはい。


ま、そんなマリアです。

だから、何も猥褻行為をしなくとも普段からクレーゼさんなりアレーゼさんなり上級女官の皆様からですね、間接的に吸い取ろうと思えば簡単に吸えるらしいのですよ。

ですが、やはり女官の能力管理のためにも本来の手段で段階を経て吸い取り吸い上げるのは大事だという事で、マリアへの精気の供給ごはんたべさせることはクレーゼさんとアレーゼさんの役目となっているそうです。


そして、上級女官の技として張り型を使うだけでなく「擬似的に生やす」事が出来ましてね。

まぁ本当にご立派な珍珍が生えてくる訳ではなくてですね、それっぽい形のぶんぶん唸る光の剣みたいなものが出来るだけなんですけどね。

ちなみに生えたものがどんな感じかというと、生やす側がある程度自由に寸法や形を変えられるのですわだからお義姉様とばかりに突っ込む方も突っ込まれる方もあたしに強要すんの、なるべくやめて欲しいんですがクレーゼさん。

ま、クレーゼさんのお誘いを断れない理由もありましてね。あたしの不妊治療だの、ある事で生死の境を彷徨った治療の過程であたくしの生身部分、あっちの地球の上級の女官種に近い細胞になってしまったらしいのですわ。

そして上級女官以上になると寿命が50歳代になるらしくて、こちら側の平均年齢からするとかなり早死にになるのは困るという事でして。

うん、老化防止と延命の為にさんぴ、いやげほごほ、クリス共々クレーゼさんの延命治療に名を借りた夜伽を時々受ける必要が出来ちゃった訳でして。


とにかく話が進まんのも困るので娘の要望を聞いてみまひょ。

(マリアちゃんマリアちゃん。まず、何で学校の類に行きたいのか教えてみ)

(はい。あたくしは生まれた時から周りに同年齢の子供がいない状態で育ちました故に、子供同士の交流の経験が希薄でございます。仮にも人として、子供とはいかなるものかを知らずに、即位するのも如何なものかと)

(にゃるほど)

(わたくし自身は、確かにクリス父様並びにジーナ母様とクレーゼ母様から引き継いだ記憶や知識がございますので、学舎で学ぶ事につきましては必要なしと判断なされるやも知れません。しかしながら世の中を知らぬ事や、近しい年代の者と触れ合う事を知らぬのは、わたくしの今後を鑑みますと不安を覚えます)

(女官の人らの子供さん達ではあかんの?)

(お義姉様…よろしいですか?)

(売女、確かにお前の言う通りなんだよ。我らとて子を残すのは女官の義務ではあるし、実際に女官の子を学ばせる場もある。だが…マリアリーゼの懸念を考えて欲しい。そしてこの子の今の時点での口調だな)

(だから売女ゆーな。で、女官のお子さんやと、仮に本人らが対等に普通に接しようとしても、マリアを主人扱いするように親が動くからあかんとかいう話になんねんやろ。どないですか)

(さすがお義姉様と言いたいところですが…。マリアや、ジーナお義姉様に自らの願いをお話しなさい)

(はい、クレーゼ母様。…そうですね、ジーナ母様は言葉を覚え文字を読み書き出来たお年を覚えておいででしょうか)

(それは即答できる。日本やったら幼稚園を出た時点で話し言葉を使えるし、小学校を卒業したらある程度の読み書きは可能。NBやイギリスもだいたい同じやね)

(金衣と銀衣女官は確実に母から記憶や知識を伝承されます。ジーナ母様も、わたくしが生まれてすぐに心話で意思疎通が出来たのを覚えておいででしょう。かかる生まれのわたくしでは、女官の子らと共に学び遊びをしても、わたくしが飛び抜けてしまうのです…)

(…あーあーあーわかった!マリアがレベル高すぎて浮くんや!)確かにマリアなら浮く。向こうの一般的な平民や貴族王侯の子供はもとより、女官のみなさんの子供たちでもマリア相手では勉強もスポーツも喧嘩も勝てる訳がないわなぁ。

(ですがジーナ母様や父様のお国ではどうでしょう。如何にわたくしが先祖から伝わる知識を持っていましたとしても、異なる進化を遂げたそちらであれば、わたくしには未知の世。何となれば、そちらのお子様方と机を並べる事もできようかと)


むむむ。

確かにマリアの言い分は一理あるでしょう。検討に値するとも思います。

むしろ、娘が5歳ですでにそこまで見通して提案出来る事に誇りすら覚えられる話です。

(如何ですかお義姉様。失礼ながらお心を窺わせて頂きましたが、もはや問題はわたくしやマリアがそちらの衣類…せーらーふくとかぶれざーとからんどせるというのですか、それを持ったり身にまとえぬ事くらいではないかと)

(クレーゼさんは着なくていいです。あ、アレーゼさんに着せてみよか)うん、ババア無理すんなの絵図を狙っています。

(ししし失礼な!お義姉様、わたくしもおんなきょうしとかせいふくのかいしゃいんとかきゃくしつじょうむいんとか着てみたいのですわよ!何とかしてわたくしが着ても燃え出さない服は作れないのですか!わたくしが着て大丈夫なら、それはマリアが着て行ける服を作って頂けるも同じですわ!何なら服代にそちらの世界の建築作業の1件や2件お手伝い致しますわよ!)

…クレーゼさん。あんたの欲望だだ漏れやで。

確かにクレーゼさんが手伝えば日本円にして数百億や下手したら兆円単位、NBポンド換算でも同じくらいの金が浮く仕事が1日で終わりかねませんけど。

(いや、あんたが猥褻な格好したいのはともかくやね、とりあえず、二つの方向から話を進めたいと思うわけよ)

(ほほう)あたしの周囲に3人がずずいっとにじり寄る気配。

…まさか…アレーゼさんまで服や下着作って欲しいんですかっ。

(まずは耐熱素材がないか、または開発可能か。これが一点目な。で、あたしとしては、今から言う話を推したいわけよ)

(クレーゼさんも知る昭和天皇陛下という方が崩御された時に、あちこちの国からご葬儀に使者が来ました。その時にやね、ここの周りの南洋王国やったっけ?この辺の人が来てるような民族衣装を着た南の国の偉い人が立ってるのにやね、冬の寒い日に加えて雨まで降って来たわけよ。で、その国のえらい人は差し出された防寒服を断ってね。これが我が国の正装である。我が国は単に貴国と縁が深いだけではない、我が国の文化を結果的に守って下さったに等しい皇帝の葬儀に我が国の正装で参じるのが最高の礼と信じるとか、聞いた人が片端から感動するような事を言わはった訳ですわ)

(正に王侯かくあるべし、どこかの帝やどこぞの王に聞かせてやりたい話であるな)

(で、あたくし思う訳ですよ。確かにあたしらの方の地球は裸を隠す文化の国が圧倒的やけど、いまだにあんたらに近い姿で暮らしてる文化様式の人らもいます。加えて、あんたら趣味や好みで裸になってる訳やないんやろ? のっぴきならん事情でそういう格好せなあかん訳やんか。アマゾンの人らは必要に応じて普通に服着てるけど、あんたら着たくても着られへんやん。しかも文化文明的に未開の蛮族とか首狩り族とか首置いてけ族の真逆の知的文明圏の方々やで。これは外交発展のためにもやね、そちらの道理を理解してもろてやね、マリアの今の姿を受け入れてくれる学校を探すべきやないかと思うたワケですわ)

(確かにお義姉様のおっしゃる通りですわね)

(やろ?とりあえずマリアのお願いが叶うかどうかは別にして、この件は色々と問題提起出来ると思います。なもんでクレーゼさん。娘にサボってないとこ見せるためにも服の開発についてはクリスに相談の上で折衝よろしく!)

(おおおお待ち下さいませお義姉様、なんでわたくしが!)

(女聖院宮側の外交要望です!それにクレーゼさん、こういう話は駐日英国領事とNB名誉領事を介した方が動き早いで?)

(クレーゼ母様、ジーナ母様には学校とやらを探して頂く方がよろしいかと存じます。母様方、わがままを申して恐縮千万ではございますがよろしくお願いいたします)

(マリアちゃん、あたしも言うた通り、思うところ色々あるから頑張ってみるわ。ただし、みんながやれる事をやってもあかん場合があるからな。その時は別の方法を考えてみよ!)

(かしこまりました。ではアレーゼ義姉様、そろそろ…)

(いや、マリアよ、話を聞くだにクレーゼも売女も大変な件に挑むようであるし…よ、私もその方で力を貸せぬ事はないものかとだな…)

(申し訳ございませんがお義姉様。今日で3日目となります。苦手な事なのは承知しておりますが、オリューレだけでなくメルトリューレ…あのメル子からすらも嘆願が来ております。これ以上待たせますと、あたくしが義姉様を拘束いたしまして褥所しとねどころに)

(まままま待てわかった赴く!赴くから!)

(あたくしの身も技も未熟でまこと申し訳ございません。あたくしが代わりを務められればと、いつもいつも悲しく思いながら義姉様を縛り上げるのは辛さの極みでございます。ですが、女官達の為にも義姉様の身が是非に必よ)

(あ、ああ承知しておる!おるから!無理やり着替えさせないでくれ頼む!ぎゃあああああああ!)

で、聖院の一番上の階の女聖居室でナニが起きてナニがナニされてるかものすごく想像つくのですが、いくらアレーゼさん相手でも可哀想なのです。泣き叫んで赦しを乞う姿を中継してもらうのはやめておきます。

…ただ、これまでの話をお聞きの皆様。

アレーゼさんとあたしの仲が悪い理由、しかるべきことが少し前に起きました。

で、アレーゼさんの首に罪環という輪っかが装着されていますが、これを嵌められるだけのことがあったと今は思っておいてください。

そして、その場にいたらアレーゼさんのどこかの毛を適当に抜いてですね、「んふふ〜、今日は4人じゃな〜」とか、どこぞの獄長のごとくアレーゼさんのお相手の人数を決める極刑宣告をしている気もするのですが。


とりあえず。

期限は約3ヶ月。眼下の領事館公邸園内の桜が咲くまで…つまり、新学期前までに、我が国の義務教育課程に娘を滑り込ませなくてはなりません。


はぁ…うまいこといくのでしょうか。


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アレーゼ「この頃の私は色々大変だったなぁ」

クレーゼ「そーなんですわよー? お姉様が一番やさぐれておられた時期でしたからねぇ」

ジーナ「っちゅう訳でちょっと1話の内容、手が入りました」

マリア「今から思うと最初の頃はあたしも口調、かしこまりまくってたわよねぇ」

アレーゼ「ただ、この後に話が進むにつれてマリアの口調は変わって行く。これは金衣または銀衣の正常な成長だから心配は不要だ」

クレーゼ「わたくしやお姉様も大体こんなもんでしたわね」

ジーナ「という訳で、2話目以降もぼちぼち手を入れて行くそうでして。第60部分くらいの読みやすさ…と言えるかどうかわからんけど、その辺りと文体統一して行くようです」

マリア「あとですねぇ、実はこのシリーズ、R18版があるんですよ…痴女皇国っていうのが出てきましたけど、これは分岐ルートみたいなものです」

全員「では、とりあえず一連の話にお付き合いくださいませ…」

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