第2話S級魔獣

 ソフィアの別荘は人里離れたところにあり自然に満ち溢れていた。着くと三人はリビングに座り、フェルリックはお菓子や飲み物の用意を始めた。


「さっそく本題なんだけど、国王は今国王の弟に狙われているの……いつ襲撃にあうか……」


「信じたい。だからそのための証拠はあるか?」


「ない。何もない。でもあなたを探していた理由なの。報酬もちゃんとあげる。だから信じてほしい」


「わかった。信じる。お金はいらない。でももしウソだった場合覚悟しとけよ」


 少しではあるがソフィアは恐怖を感じていたが妙な安心感がを抱いていた。


「大丈夫!」


 沈黙が訪れた。それを打ち消すようにアルフレッドは飲み物とお菓子を机に置いた。


「そうだ。近くにキノコを栽培しているから一緒に取りに行きましょ」


「いいけど、どこにあるの?」


「歩いて五分くらいのところにあるわよ」


「よし、じゃあ今から行こう」


「ちなみにアルフレッドの作る料理はめちゃくちゃおいしいからね」


「ソフィアって結構自分でやるんだね」


 ミーラは笑みを浮かべながら口にした。


「自分でやりたいからね」


 三人は席を立ちアルフレッドに挨拶をして別荘を出た。


 目的地に着きキノコの収穫をしていたところ、そこには絶対いるはずのないS級クラスの魔獣カリュバンがいた。しかし三人は気づかずに手分けして収穫していた。


「がさっ」という音にシオンは反応した。それはソフィアかミーラのどちらかの足音だと思っていた。しかしシオンが振り向いたとき現実を目の当たりにする。


(なにぃぃぃぃぃぃ!?!?!??!なんでここにS級魔獣のカリュバンがいるんだよ。こんなの迷宮階層でしか見ないぞ普通。そもそもみんなは無事なのか)


 シオンは二人を急いで探した。なるべく音を立てずに。するとミーラを見つけた。だが雰囲気や表情が違うことにシオンは気づいた。


「ミーラ」


 小声で呼び掛けても返事はない。それもそうだミーラは一人でS級魔獣を目の当たりにしているのだから。彼女はシオンと違ってそこまで強くはない攻撃よりサポート面に特化している。そんな彼女がこの一面に一人で遭遇してしまったら放心状態になるのは当たり前だ。


 シオンは大きな声で「ミーラ」と呼んだ。それでミーラは我に返った。だがそのせいでカリュバンに気づかれてしまった。ゆっくりゆっくりと近づいてくるカリュバン。


「ごめん。もう大丈夫」


 その表情にはどこか安心できない部分をシオンは感じていた。


「それならいい。あいつの弱点火と頭が弱点って覚えているだろ。あとは頼んだ」


「えええええええ?私一人で相手するの?」


 ミーラは非常に困惑していた。


「俺はソフィアを探してくる」


「わかった」


 シオンが一歩踏み出したと同時にミーラも一歩踏み出し、カリュバンに走って立ち向かった。


「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 剣を錬成しそれに魔力を纏おうとしたらカリュバンが突進してきた。ミーラは吹き飛び気に激突した。


(私一人で戦わなきゃ。シオンにまた助けられるなんて……頼るなんてできない)


 ミーラは剣を力強く握ると立ち上がった。ミーラの目は闘志に燃えていた。自分の足と剣にすべての魔力を纏った。すると一瞬にしてカリュバンの頭を潰していた。今まで一度もミーラが感じたことのない速さを体験していた。それにミーラ自身も驚いていた。だが魔力の使い過ぎで地面に倒れ、意識を失った。カリュバンの頭が少しずつではあるが再生されていることも知らずに。






「ソフィア!ソフィア!」


 ミーラと別れてソフィアがいそうな所まで走り、大声を出した。しかし返事はない。 森を抜けたところにシオンはソフィアが倒れ血を流している姿を目にした。それがシーアの最後のようにシオンには見え、怒りに満ち溢れた。魔力全開でカリュバンと対峙した。だがシオンが攻撃しても治癒されていることに気づく。


(カリュバンに自己治癒能力はないぞ。まさかこれを送ったやつがどこかに)


 そんなことを考え辺りを見回しているとカリュバンから突進されると三回転ほどしながら遠くに吹き飛ばされた。


(なんだよこの化け物強すぎるだろ。仕方ねぇちょっと本気を出すか)


 シオンは剣を空中に何本も錬成し、それをそのままカリュバンに突き刺し爆発させた。カリュバンは見る影もなく粉々になった。急いでソフィアのもとへと駆け寄ると、回復魔法を使い治療するとソフィアは目を覚ました。


「魔獣は?」


 か細い声でソフィアはシオンに聞いた。


「倒したよ。ミーラのことも心配だ。立てるか?」


 シオンはそういってソフィアの体を起こし、ミーラがいるだろう所へとソフィアを支えながら歩いて向かった。するとミーラのもとにすでに長い白髪で背が高くハットをかぶり、サングラスをかけている男がミーラを抱えていた。そしてその男に二人は嫌なオーラを感じ直観的にこの男は敵だと判断した。


「ミーラ!ミーラ!」


「声をかけても返事はないよ」


 長身の男が口を開いた。


「この少女はいただいていく。じゃあ」


 瞬間シオンは自分の足では間に合わないと判断し、咄嗟に銃を錬成してすぐに撃ったが相手は一瞬にしてその場から消えた。


「ミーラァァァァァ」


 シオンの声は次第には儚く空へと消えていく。シオンの涙があふれ次第に大粒の涙へと変わっていき、自責の念に駆られていた。その姿を見たソフィアは静かに傍に寄り抱き寄せた。


 二人はまだ知らない、本当の地獄はこれからだということを。二人はまだ知らない、悲劇がすぐそこにあるということを。

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