第7話 俗世の洗礼
さらに進むと、家々の囲いはなくなり、小さな家が大きな道の両側に密集するようになった。この頃には日も高く昇り、気が付けば道は人々でごった返していた。大声で客を呼びながら桶に入った魚を売り歩く商人、うまそうな匂いを漂わせる屋台、これでもかというほどの荷を積んだ人力車、もうもうと立ち上がる土煙…。生まれて初めてこんなにも多くの人を見た澄史は何だか頭が朦朧としてきた。
「っと!若いの、気をつけな!」
澄史の馬の速度が一瞬落ちたせいでぶつかりそうになった男が、追い越しざまに澄史に叫んだ。
「す、すみません…。」
そうは言っても、どう進めというのだ。見渡す限り人、人、人で、どう進んでも誰かにぶつかってしまいそうだ。
人々の衣装の彩りも、澄史をくらくらとさせる。見渡す限り全員が違う着物をまとっているというのは、
(どうなってるんだ…)
澄史は、この人混みが
一瞬目を閉じる。頭ががんがんと痛み、吐き気がしてくる。何でもいいから、とにかくここから出たい。出たい、出たい、出たい…。
突然、澄史は目の前が蠟燭を吹き消したように真っ暗になるのを感じ、そのまま深い深い闇へと真っ逆さまに落ちていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます