第15話
二、清姫
昨日、日が高いうちから降り出した夕立は長く続き、五月の川開きから毎夜打ち上げられていた花火は取り止めとなった。尺玉がしけるんじゃあしょうがねえと町人たちは泣く泣くだったらしいが、志乃としてはよしよしだった。
雨も上がってさっぱりとした七月の朝、志乃は
このところの土手散歩で鍛錬がお留守になっていたせいだわ。川に浸した
「此度の芝居の相方になるお坊さまがね」と燕弥は紅を塗り直しながら、夕餉を運んでいる志乃に言って聞かせる。
「俺の家で夜通し
飯も食わずにいそいそと
土手散歩を切り上げて、軒下の陰を
板間の上に
と、女はくるりと体を回し、志乃に顔表を見せつけた。
美しい女だった。姿勢を正すと上背があるから
「あんた、あたしの
投げつけられた言葉をほどくまでに少々時間がかかった。はっとして志乃は慌てて首を横に振る。
「そ、そんなわけがございません!」
なにせ不義密通は大罪だ。
志乃は声を荒らげるが、目の前の女のその黒々とした目は
「手!」
「え」
「手を出しなさいって言ってるの! 今、隠そうとしたの見えたんだから。ここに広げなさい」
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