第68話 踏んだり蹴ったりのピーチ①
「ふん。パンピーナの店主めっ! ざまぁみろっ!」
私の名前はピーチ。ピーチ・ザンロック。
アクバ帝国の高名な占術士、ニセーメイ様お抱えの商人である。
私はこの町に魔力に代わる我が国発祥の動力、電力で動かす事のできる機械と電力を作り出す呪力発電機を普及するためにやってきた。
まあ、他にも色々と目的や特命を受けているが、一番の目的はこれだ。
元々、アクバ帝国外の国々では、今もモンスターの心臓部から取れる魔石を動力とした魔道具というものが普及しているが、魔石に込められた魔力はモンスターの持っている生命力によってバラつきがある。
そのため、安定的な魔力の供給ができず、魔石によっては魔道具を動かすほどの魔力が得られない事もしばしば……。
そんな中、登場したのがニセーメイ様が開発した呪力発電機だ。
この呪力発電機は魔石に込められた魔力を電力に変えることのできる装置。
魔力が切れる度に動かなくなる魔道具と違い、魔石からより効率的に魔力を電力に変えることのできる呪力発電機があれば、魔石を使って魔道具を動かすよりも効率的に魔道具や機械を動かすことができる。
まあ、多少、壊れやすくメンテナンスが必要である点や、呪力発電と謳っているものの動力に呪力ではなく魔石を使っている点に目を瞑れば、動力源として非常に素晴らしいものだ。
なにより、魔石を交換するだけで高額なメンテナンス料を取ることができるのが素晴らしい。流石はニセーメイ様、商人に優しい設計だ。
ニセーメイ様によると、本来であれば、この呪力発電機の動力部分には、呪力もしくは荒魂という霊的な何かを封じることで半永久的にメンテナンス不要で、電力を供給することができるらしい。
しかし、それでは商売にならないだろうと、呪力の代わりに魔石を動力部分に仕込んで頂いた。
電化製品の普及にはかなりの時間を要したものの、電気で動かすことのできる電気冷蔵庫や全自動洗濯機・乾燥機やオーブン等、通常の魔道具では再現する事が難しい製品の数々をこの町の領主に献上し、徐々に、呪力発電機と電化製品の認知度を高め、呪力発電機のメンテナンス費用で恒久的に儲けるため、電化製品を通常よりお買い求め易い金額で販売し、これからだという所でケチが付いた。
なんと、町中の人がメンテナンス費用が高いと騒ぎ出したのだ。
メンテナンス費用なんて高くて当然だと叫びたい衝動に襲われた。
なんの為に、比較的安価で電化製品を売り捌いたと思っているのだ。
電化製品の便利さを周知した上で、町で使っている魔道具すべてを電化製品に交換し、その電化製品を動かすための動力である呪力発電機なくして暮らしができなくなるようにするためである。
そのために何度もこの町に電化製品を運び込み、この町の持つ魔道具を下取り、割引した電化製品を売り捌くことで、電力無くして生活できなくしてやったのだ。
それだけの苦労をしたのだからメンテナンス費用が高くなるのは当たり前じゃないかっ!
この町に住んでいる奴も住んでいる奴だ。
メンテナンス費用も三ヶ月に一回、金貨五十枚を取るだけ。
お得だろうがっ! お前等、今まで魔石で魔道具を動かし、非効率に電化製品まがいの物で生活していたんだぞ?
毎日毎日、使い捨ての上、当たり外れのある魔石で魔道具を動かし火を付けたり、洗濯したり、氷を作りだして室で食料を保存していたんだっ!?
生活が便利になったんだから別にいいだろっ!
それなのにっ……それだけの苦労をかけ、町を呪力発電機の発電無くして生活できなくしてやったというのに……なんだ、あのクソガキはっ!?
ニセーメイ様の作成した小型呪力発電機をパチ物扱いした上、この町の領主を懐柔し、町の真ん中に呪力発電所を作りやがったっ!
呪力発電所は、我が国発祥の無限の電力を安価に生み出し続ける動力源。
それをいとも容易く作り上げたのだっ!?
何だあの子供はっ!
呪力発電所の建設なんてニセーメイ様を以ってしても容易にはできないぞ。
それほどのものを、たった数時間で作り上げた。
それだけではない。
送電線まで……この町すべての住む場所に地下から送電線を設置しやがった。
これではもう、この町で小型呪力発電機を売ることはできない。
メンテナンス費用で大儲けしようとしていたのに台無しだ。
すべて台無しだっ!!
こうなった以上、一度、この町を離れ、ニセーメイ様に判断を仰がねばならない。
あの子供がどこで呪力発電所建設の知識を得たかは知らないが、我が国の技術が流出してしまっている。
――と言うより、何なんだ。あの子供はぁぁぁぁ!
普通、あんなことできないだろっ!
できないだろっ!!
人間業じゃないよっ!
どうやったら呪力発電所建設なんて大規模工事を一人でこなす事ができるんだっ!
できる訳ないだろっ!
くそっ!
最近付いていない。
ドイチェスピッツの子供を(無料で)引き取ったと思ったら、馬車を壊され、この国に拠点を持つ傘下の奴隷商人が捕えられてしまった上、取引名簿まで失ってしまった。
今の私にできることといえば、精々、嫌がらせ位のものだ。
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2022年9月9日PM15時の更新となります。
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