第66話 呪力(龍脈)発電所建設②
「リーメイ君。送電線を買ってきたぞ! あとこれは昼食のパンだ。好きな奴を食べてくれっ!」
龍脈を利用した発電機を作り終えしばらくすると、パンの楽園パンピーナの店長であるバンビさんがパンと送電線を馬車に積んでやってきた。
「わーい。パンだっ! ありがとうございます!」
送電線を受け取るよりも先にパンに飛びつくと、ポメちゃん用のお土産のパンを数個亜空間に放り込み、『辛いパン』という見た目や匂いがカレーパンに似たパンを手に取り頬張った。
「うん! 美味しい!」
ネーミングセンスのないパンだけど味は確かだ。
パンピーナには、フランスパンというパンも売っているが、これは今は亡きバンビさんのお父さんであるフランスさんが作り出したパンだからフランスパンと名付けたらしい。
ちなみにこのフランスパンは即席の武器にもなるそうだ。
きっとフランスさんは、パン屋さんであると共に武器職人でもあったのだろう。そうでなくては、パンを武器にするなんて発想出てこない。
「美味しいかい。リーメイ君?」
「はい。パンピーナのパンは最高です!」
特にカレーパンの中に入っているカレーが絶品だ。
個人的に、バンビさんはパン屋さんよりカレー屋さんの方が合っていると思っている。勿論、胸の内に秘めているだけで口に出して言ったりしない。
「そうかそうか!」
パンを称賛するとバンビさんも笑顔を向けてくれる。
「それにしても、凄いな。今日中に発電所ができてしまうんじゃないか?」
「そうですね。後は発電所を守るための建物を建てて、地中に送電線を引けば終了です。建物のを建てるのはゴーレムに任せて、町中に送電線を張り巡らしましょう」
カレーパンを口に放り込むと、ボクは亜空間から呪符を取り出し、バンビさんが買ってきた送電線をゴーレム化させる。
「リ、リーメイ君……これは……?」
蛇のように蠢く送電線を見てバンビさんが驚愕といった表情を浮かべている。
「本当は管路方式で送電線を張り巡らせようと思ったんですけど、それだと結構、大掛かりな工事が必要になってしまいますので、呪符で送電線の強度を上げて直接埋設方式で送電線を張り巡らせようと思います」
送電線は、龍脈の力を注いだミスリルでコーティングしてから張り巡らせるので、強度はばっちりだ。防水加工もされているし、ゴーレム化し、ミスリルコーティングした送電線であれば腐食することもない。
ゴーレム化した送電線君が地中を潜っていくだけなので、特別な工事も不要だ。
「それじゃあ、
そう声をかけると、ゴーレム化した送電線が勢いよく地下に潜り、町全体に張り巡らされていく。
「リ、リーメイ君? こ、これは……」
バンビさん。さっきから、これしか言わなくなってしまった。
壊れたラジオのようだ。
「これはですね。バンビさんに買ってきてもらった送電線をゴーレム化し、ミスリルでコーティングした後、各ご家庭や商会の下に向かわせたんです」
「そ、そうなのか……?」
おかしい。なんだかバンビさんが納得いかなそうな表情を浮かべている。
こんなにわかりやすく説明したというのに何故……。
「まあ簡単に言えば、この町に住む人全員が電力を使うことができるように手配したということです。今日は快晴ですし、(自分で占った所)明日も晴れ予報。後はゴーレムが建物を建てるだけです。このペースなら、あと一時間ほどで電力も使えるようになります」
「おお、流石はリーメイ君だ。電力という新エネルギーを導入して以来、ピーチの奴に多額の修理代を払い続けてきたが、これでようやく……」
「ええっ……?」
今まで修理代を払い続けていたの?
なるほど、道理で……。
「……この町の物価が高いと思ったらそういうことでしたか」
それは気付かなかった。
呪力発電機を購入すれば、基本的に初期費用が係るだけで、それ以外の出費がないはずだが、この町ではメンテナンス料と言う名の出費があった。
なるほど、それは気付かなかった。
ピーチおじさんに集られた費用がそのまま物品の価格に転嫁されていたとは……。
「……でもまあ、これで解決ですね♪ 明日から美味しくて腹持ちのいいパンをボクに提供して下さいっ!」
「あ、ああっ、勿論だともっ! それよりも教えてくれないか? この発電所で作られる電力に一体、幾らの値段を付けるつもりなんだ?」
「えっ?」
ちょっと、言っている意味がわからない。
別に費用を請求するつもりなんてないんだけど……。
だって、この設備は最終的に荒魂を鎮めるための設備になるんだから……。
今は、動力に龍脈を利用しているけど、動力部分に荒魂を封じても同じ様に動いてくれる。つまり、ボクにとっては荒魂を鎮める場所を無料で作ってくれた揚句、その呪力を電力に換え、荒魂を和魂にしてくれる。そんなありがたい施設だと思っているからお金を取る訳にはいかないとすら考えている。
「えっと、別にお金なんていりませんけど……」
そう言うと、そこにいる人全員が唖然とした表情を浮かべた。
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