第19話 サバイバル試験⑥(ゴブリン強化回)

 ゴブリンキングに進化した元ゴブリン達は歓声を上げる。


「ゴ、ゴブッ(こ、これは……)」

「ゴ、ゴブゴブッ(ち、力が……。力が漲ってくる……)」


「わあー、凄く凛々しくなったねっ! うんうん。これなら安心してみんなを守ることができるね。それじゃあ、キングちゃん達はそこら辺の木を切り倒し集落の復興といこうか!」


「「ゴブッ!(おー!)」」

「ゴブゴブッ!(ありがとうございます。マスター!)」


 ボクの言葉を聞き、ゴブリンキング達が亜空間から取り出した斧を片手に集落の復興に手を付け始めた。


「うんうん。いい感じだね。それじゃあ、次、いってみよー! 次は♡印の君達だね♪」


 キングゴブリンに進化したゴブリン達と同じく♡印を付けたゴブリン二十体に『身体強化』。そして『進化』の呪符を貼り付ける。

 すると、ゴブリン達の身体がベキボキと音を立てて変貌し、ゴブリナ(♀)に性転進化を遂げた。

 性転進化を遂げたゴブリナを見て、ゴブリン達が歓声を上げる。


「「ゴブッ!(おおー!!)」」

「ゴブゴブッ!(凄いです。マスター!)」


「うんうん。このゴブリン達には素質があると思ったんだよね♪ これでもう人間の雌を攫わなくても良くなったよ!」


 心なしか性転進化を遂げたゴブリナも嬉しそうだ。

 両手を頬にあて顔を赤らめ女の子座りしている。


「リナちゃん達には、家事をお願いしようかな♪ 松明を燃やして光源を作ってくれると嬉しいかも♪」


 今はボクが鬼火を浮かべ光源を作り出している。

 集落を建て直すにあたり、これだけの光源じゃ心許ないからね。


「うんうん。それじゃあ、最後に○印の君達だね♪」


 既に進化したゴブリン達と同じく○印を付けたゴブリン三十体に『身体強化』。そして『進化』の呪符を貼り付ける。

 すると、ゴブリン達の身体がベキボキと音を立てて変貌し、ホブゴブリン(♂)に進化を遂げた。

 ホブゴブリンに進化した元ゴブリン達は更なる歓声を上げる。


「「ゴ、ゴブッ(す、凄い……)」」

「ゴ、ゴブゴブッ(今ならなんでもできそうだ……)」


「うんうん。やっぱり、力仕事といえば君達だよね。さあ、ホブちゃん! 君達の仕事はこの辺りの警備とキングちゃん達のお手伝いだよ♪ 早速、集落を建て直そう!」


 そう言うと、ゴブリン達が歓声を上げる。


「「ゴブッ! ゴブッ! ゴブッ! ゴブッ!!」」


「うんうん♪ さて、諸君。よーく聞いてね! 君達はとっても強くなった。でも、残念ながら強いことが常に最良とは限らない。ボクはね。君達に強さの中にも優しさを持つそんなゴブリンになってもらいたいんだ」


 そう言うと、ゴブリン達が更なる歓声を上げる。


「「ゴブッ! ゴブッ! ゴブッ!! ゴブッ!!!」」

「「ゴブッ! ゴブッ! ゴブッ!! ゴブッ!!!」」


「うんうん♪ それじゃあ、みんな。ボクはもうログハウスに戻るから集落の建て直し頑張ってっ! それじゃあ、またね!」


「「ゴブッ! ゴブッ! ゴブッ!! ゴブッ!!!」」


 相変わらず、なにを言っているのか一切わからなかったけど、みんな嬉しそうな表情を浮かべている。

 笑顔を浮かべゴブリン達に手を振り返すと、ボクはログハウスに戻ることにした。


「さて、ポメちゃんは大丈夫だったかな?」


 ポメちゃんが付けた橇の後を追いログハウスに戻ると、女の子は床の上でスヤスヤと寝転んでいた。

 ちなみにバトちゃんとポメちゃんはベッドの上だ。


「仕方がないなぁ……」


 亜空間から布団を取り出すと、女の子を転がし、マットの上に乗せる。

 そして、布団を被せると、ビッグサイズになったポメちゃんに『縮小』の呪符を貼りボクもソファで休むことにした。


「ふわぁ……」


 今の時間は体感時間で午後十時。子供はとっくにおねむの時間だ。

 ボクは身体を『浄化』し、蒸留水を一杯飲むと亜空間から取り出したパジャマに着替え、カウチソファに身体を預けてシーツを被る。

 そして、鬼火ランタンを消すと、バトちゃんとポメちゃんにお休みの言葉を投げ掛ける。


「お休み。バトちゃん、ポメちゃん。知らない子……。また明日ね」


 そう呟くと、ボクは目を瞑り夢の世界へと旅立った。


「ブルッ、ブルッ!(朝だぞ。起きろっ!)」

「キャン、キャン!(朝だよ。起きて―!)」


「う、うーん……」


 朝目覚めると、バトちゃんとポメちゃんが朝食を求め鳴いていた。


「うーん。あと五分……」


「ブルッ、ブルッ!(そんなこと言って、絶対起きないだろ!)」

「キャン、キャン!(そうだよー。起きて―!)」


 バトちゃんとポメちゃんが朝からうるさい。

 まったく、昨日は誰のせいで寝るのが遅くなったと思っているんだ。


 仕方なくソファから起き上がると、床で寝ていた女の子と目が合う。


「……えっと、良く寝れた?」

「――っ。きゃぁぁぁぁ!!」


 そう笑顔で尋ねると、女の子は絶叫を上げた。

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