第17話 サバイバル試験④
「ほへっ?」
「ブルッ、ブルッ?(こんにちは。あんたら、こんな所で何してんの?)」
しかも三体のオークキングが俺達を囲んでいる。
「あ、ががががっ……。はべっ……」
「や、やべぇ……。やべぇなこりゃあ……。笑えねぇ……」
マジで笑えない。どうしたらいいんだこの状況……。
「ブルッ、ブルッ?(こいつ等どうする?)」
「ブルッ、ブルッ(とりあえず、武器を剥ごうぜ)」
「ブルブッ、ブブルッ(そうだな。人間に武器を持たせると危険だし、そうしよう)」
「ブルッ、ブブルッ(折角だから、服も貰っておこう。前に人間から剥ぎ取った服がもうボロボロなんだよね)」
「ブルッ、ブルッ!(そりゃあいい!)」
おいおいおいおい!
なに喋ってんだっ!? このオークキングっ!!?
「お、おい。なんだかヤバくないか……?」
「し、知るかっ……。今は生き残る事だけを考えるんだよ……」
「ブルッ、ブルッ……(それじゃあ、早速……)」
「う、うおぉぉぉぉ! おおっ??」
そう声を上げると共に俺達はオークキングに向かって剣を振り上げる。
「ブルッ、ブルッ……(ほお。中々、良い剣じゃないか……)」
すると、いつの間にか背後にいたオークキングに振り上げた剣を掴まれてしまった。
唖然とした表情を浮かべていると、隣からローレンスの悲鳴が聞こえてくる。
「や、やめろぉ! やめてくれぇぇぇぇ!」
組み伏せられたローレンスにオークキングが覆いかぶさり、武器や防具を剥いでいく。
「ブルッ、ブルッ?(おっ、こいつ結構良い剣持ってるな?)」
「ブルッ、ブルッ(着ている防具や服も中々上質だぞ)」
「な、なんだっ! なんなんだよぉぉぉぉ! ぐむっ!??」
「ブルッ、ブルッ(でもちょっと煩いな。マスターが就寝中だ。静かにして貰おう)」
口に詰め物をされたローレンスがオークキング達に身包みを剥がされていく姿を見てゾッとした気分になる。
「う、うおぉぉぉぉ!」
叫び声を上げ必死の抵抗を見せるも、オークキングに囲まれてはどうすることもできない。パンツ一丁に剥ぎ取られた俺は涙ながらに助けを求め声を上げようとする。
「ぐ、ぐむっ……!!?」
「ブルッ、ブルッ(マスターが就寝中だって言ってるだろ)」
しかし、それさえオークキングに止められてしまった。
ローレンスと同じように口に詰め物をされると、身包みを剥がされその辺に捨て置かれる。
「「!!!???」」
意味がわからず、目を白黒させていると、オークキングが『さっさと、消えろ』と言わんばかりに手を振った。
ローレンスと顔を見合わせ頷くと、俺達は一心不乱に走り出す。
口に入れられた詰め物が原因で思う様に息継ぎできず酸欠になって倒れそうになるも俺達は必死になって森を駆けていく。
「た、助けてっ……!?」
途中、ゴブリンに襲われている冒険者見習いの叫び声を聞いた気がしたが、きっと気のせいだろう。
なにより俺達はパンツ一丁。
Dランク冒険者とはいえ、パンツ一丁では武器を持つゴブリン相手に無傷で勝つのは難しい。俺達は、冒険者見習いの声を幻聴と脳内処理し、森の中を駆け出した。
◇◆◇
「ゲギ、ギャ?(うん? なんだ、今、裸の人間が駆けて行ったような?)」
「ゲギギッ(気のせいだろ? それより、コイツを運ぶぞ。折角の苗床だ)」
森を徘徊していると、一人の人間が樹の上で熟睡していた。
人間がこんな無防備に森の中にいるのは珍しい。
しかも、樹の上で熟睡しているのは人間の雌。苗床にピッタリだ。
三日前、人間によって集落を半壊させられてしまった今、また新しい集落を作るためにはどうしても雌が必要だ。
「た、助けてっ……! 誰か、助けてよっ!」
なにを言っているかまったくわからないが、この雌には我が種族を増やすための苗床になって貰わなければ困る。
ただでさえ、人間により集落を半壊させられたのだ。
しかも、我々、種族の雌を重点的に殺していったため、子を孕ませる苗床が不足している。それに人間と交われば強い子を孕む可能性が非常に高い。
泣き叫ぶ人間の雌の口に、草を丸めた物を詰め口を噤ませると、そのまま集落へと持ち運ぼうとする。
すると、背後にゾッとするような気配を感じた。
「こんにちは、ゴブちゃん……。その子を攫ってどうするの?」
振り向くと、そこには獰猛で強力なモンスター、ドイチェスピッツの子供を連れた年端もいかない子供の姿がそこにあった。
◇◆◇
リーメイが眠って早々、ドイチェスピッツとバトルホースが取っ組み合いの喧嘩を始める。
「ブルッ、ブルッ!(そこは、俺の寝床だ!)」
「キャン、キャン!(いーや、ボクの寝床だね!)」
「ブルッ!!(なんだとっ!)」
「キャン、キャン!(ふざけんなっ!)」
そう鳴き声を上げ、縄張り争いをしていると、幽鬼の様な目をしたご主人様が身体を起こした。
「バトちゃんにポメちゃん。ちょっと煩いかな……」
寝起きのご主人様は機嫌が最悪だ。
虚ろな表情を浮かべ、ボク達に視線を向けてくる。
「キャン、キャン!(ち、違うのー。これも全てこの駄馬がっ!)」
「ブルーッ、ブルーッ……」
しかし、駄馬が寝たふりを極め込んだお蔭で、完全にボクが悪い事になってしまった。
ど、どうにかしなければボクの命が危ない……。
必死に考えた揚句、出した答えが家出だった。
「キャン、キャン!(ご、ご主人様の馬鹿ぁぁぁぁー!)」
一縷の望みをかけログハウスから外に出ると、オークキング達の目がこちらに向く。
やべぇと思いながら森を走り抜けると、ご主人の臭いが段々薄れてきた。
これでもう大丈夫。
そう思うと、段々、野生の本能が身に現れ始めた。
やはり、犬たる者、狩りをしなくちゃねと……。
楽しく森の中を駆けていると、人間を連れたゴブリンの一団が目に付いた。
丁度いい。あれでストレス発散しよう。
人間を連れて集落に向かうゴブリン達を視界に収めたボクは、ゴブリン達に向かって走り出す。
今すぐ、ゴブリン達で爪とぎをしたい。
今すぐ肉を切り裂きたい。
「キャン、キャン!(このボクのストレス発散につきあえ! クソゴブリン!)」
そう威嚇しながらゴブリン達の前に出ようとした瞬間、頭を掴まれた。
「どこに行くの? ポメちゃん?」
ゆっくり振り向くと、そこには笑みを浮かべたご主人の姿があった。
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