第16話 サバイバル試験③

「ふふふっ、すごーく強い警備になったね。ログハウスも出来たし、そろそろポメちゃんとバトちゃんを呼びに行こうかな。豚ちゃん達はこのログハウスの警備をお願い。ボクはポメちゃんとバトちゃんを呼んでくるね!」


 そう言うとオークキング達は武器で音を鳴らす。


「ブヒッ、ブヒッ(お任せ下さい!)」

「フゴッ、フゴッ(必ずや護って見せます!)」


「そう。それじゃあ、お願いね!」


 オークキングとなった豚ちゃん達の姿に安心したボクは、二匹の下に急行する。


「う~ん。バトちゃんとポメちゃんはどこかなぁ~?」


 亜空間から『探知』の呪符を付し、周囲を見渡すとバトちゃんとポメちゃんの反応を察知する。


「うん? バトちゃんとポメちゃんなにやってんだろ?」


『身体強化』そして『浮遊』の呪符で現場に急行すると、罠に引っかかり泡を噴いたバトちゃんとポメちゃんの姿があった。


「バトちゃん、ポメちゃん! 大丈夫っ!?」


 急いで罠を解くと『解毒』の呪符をバトちゃんとポメちゃんに付していく。


「ブルッ、ブルッ……(し、死ぬかと思った)」

「キャン、キャン……(ま、まさか罠が張ってあるとは……)」


 どうやら、誰かが仕掛けた粗末な罠に引っ掛かり毒を盛られたようだ。『解毒』の呪符が効いて本当によかった。


 それにしても、まさか、バトちゃんとポメちゃんをターゲットにした罠があるだなんて……。

 バトちゃんとポメちゃんは食べ物に弱い。

 それが床に落ちた物であったとしても、三秒ルールで口に運ぶほど食いしん坊さんだ。


「バトちゃんとポメちゃん。ログハウスを建てたんだ。一緒に帰ろう?」


 野宿は嫌だよねと、そう問いかけると、バトちゃんとポメちゃんは顔を見合わせた。


「ブルッ、ブルッ!(俺の寝床はちゃんとあるんだろうな!)」

「キャン、キャン!(まさか外で寝かせるなんてことしないよね?)」

「うん。もちろんだよ!」


 バトちゃんと、ポメちゃんが何を言っているかわからないけど、帰る家ができて嬉しそうだ。

 ログハウスに戻ると、オークキングとなった見張り達が敬礼してきた。


「ブヒッ、ブヒブヒッ!(ご苦労様です!)」

「うん。ご苦労様! 夜の見張りは任せたよ。侵入者は皆の好きにしていいからねー♪ でもそれが人間だった場合、殺しちゃ駄目だからね? ログハウスを襲おうとしていたら、適当に捕えて転がしておいて」

「ブヒッ、ブヒブヒッ!(わかりました! 他のオークキング達にも伝えておきます!)」

「うん。よろしくね!」


 見張りのオークキングを見たバトちゃんとポメちゃんがブルブル、キャンキャンと吠える。


「ブルッ、ブルッ!(オークキングだ! オークキングがいる!!)」

「キャン、キャン!(ヤバいよ! ヤバいよ!)」

「うんうん。頼もしいよねー。それじゃあ、ログハウスの中に入ろうか!」


 ブルブル、キャンキャン吠えるバトちゃんとポメちゃんに『縮小』の呪符を貼り付けると、オークキングが護衛するログハウスの中に入っていく。


 ログハウスの中は快適な温度に保たれていた。

 それもこれも呪動冷暖房システムがあればこその所業だ。


 オークキングが作ってくれたバトちゃんとポメちゃん用の寝床に亜空間から取り出した布団を敷くと、二匹が寄ってくる。


「ふふふっ、ここがバトちゃんとポメちゃんの寝床だからね」


 バトちゃんとポメちゃんは寝床に寝転ぶと、クルクル回り始めた。

 仕草がとても可愛い。気にいってくれて本当に良かった。


「今日はもう遅いし、そろそろ寝ようか」


 今の時間は体感時間で午後八時。

 良い子はもう寝る時間である。


 念の為、バトちゃんとポメちゃんの寝床近くにフードボウルを四つ置き、夜食代わりのクッキーと蒸留水を注いでいく。


 そして、『鬼火ランタン』の出力を控えめに抑えると、寝床ではしゃぎ回るバトちゃんとポメちゃんを後目に睡眠を摂ることにした。


 ◇◆◇


 リーメイが眠りに就いている頃、試験官を請け負ったDランク冒険者であるマクスウェルとローレンスは、冷や汗を流しながらログハウスを見つめていた。


『おいおいおいおいっ!? ありゃあ、どういうことだよっ!』

『ああ、まったくだ。こいつはやべぇ……。なんだって、オークキングがあんなにも……。そもそも、オークキングなんてこのダンジョンには存在しない筈だろっ!?』


 そう。このダンジョンは冒険者ギルドが管理するダンジョン。

 ダンジョン内のモンスター討伐は一週間に一度のペースで行われており、上位個体は軒並み討伐済。


 危険度Aのオークキングが五体もいる筈がない。


『すぐに冒険者ギルドに報告を!』

『い、いや、駄目だっ……。このダンジョンの扉は外から閉じられている。二日後の午前八時まで報告することはできない』

『だ、だがっ!』

『とりあえず、この場から離れよう。こんな状況で寝こみの襲撃なんてできる訳がない……』


 正直、ジェニファーの仇より自分の命の方が大切だ。


『そ、そうだな……。そうしよう』


 そう小声で呟くと、背後からガサリと音がする。

 何かに肩を叩かれ横を振り向くと、そこには屈強な体躯のオークキングがいた。

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