第34話 サバイバル試験終了①
「えっ? またしても人形?」
最凶の荒魂、アラミーちゃんと同じく人形に形態変化したクッコロちゃん。
横には首輪を嵌めたオーク人形が横たわっている。
『う、うーん。私は……』
『フッ、フゴッ』
「えっと、クッコロちゃん……だよね? 大丈夫?」
可愛らしいデフォルメ人形に形態変化したクッコロちゃんは目を見開くと、ボクに視線を向け、起き上がる。
『私はラティファ・クッコローゼ。生前、数多くのオークをぶち殺し、最後はオークにクッコロされ非業の最期を遂げた元王女よ。よろしく』
クッコロちゃんの本名は、ラティファ・クッコローゼというらしい。
すごいな。生前、数多くの豚ちゃん達をぶち殺し、最後はクッコロして非業の最期を遂げた元王女様なのか……。
元王女様のデフォルメ人形は、なぜかSM嬢の様な姿をしており、右手に鞭を、左手でオークの首に着いた首輪の綱を引いている。
クッコロちゃんは、おもむろに右手の鞭を振り上げると同じく、デフォルメされた小さなオークロードの尻をぶっ叩いた。
『ブ、ブヒィッ!(あ、ありがとうございます!)』
『あなた、ご主人様にちゃんと自己紹介しなさいよ』
『ブ、ブヒッ(は、はい。ご主人様。私はオークロード。生前、数多くの人間を襲い、最後は女王様に討たれた卑しい卑しいただの豚です)』
クッコロちゃんに鞭で尻をぶっ叩かれたオークロードのデフォルメ人形は顔を紅潮させ、息を荒くしてブヒブヒ言っている。
「い、いや、別にボク、君達のご主人様じゃないし……」
流石は禁忌的荒魂。和魂になってなお、その魂の方向性に変化はないらしい。
その存在自体が異質……そこに存在するだけでカクヨム規約違反で一発BANになってもおかしくない存在だ。
宙をなぞり亜空間から『呪縛』の呪符を取り出すと、ボクはクッコロちゃん人形に貼り付け問答無用に身体の自由を奪う。
そして、ダンジョンコアを使い、クッコロちゃん達を洞窟の隅に閉じ込め、六芒星を描くと周囲に『封印』の呪符を貼り付けた。
『ち、ちょっと、ご主人様っ!? ご主人様ぁ!?』
『ブ、ブヒッ!(い、一体なにをするのですか、ご主人様っ!)』
突然の凶行に慌てる二人。
二人共?元気そうでなによりだ。
折角、荒魂から和魂になったんだ。
今度は悠久の時を経て、その性癖を元に戻して欲しい。
ボクには、まだ早すぎる……。
クッコロちゃん達の悪しき声が外に漏れないよう、ダンジョンコアの力を使って念入りに防音処理を施したボクは、呪符の力により失神している冒険者さん達とゴブリンキング、そしてオークロードに視線を向けため息を吐いた。
◇◆◇
「ゴブゴブ!(それでは、私達はこれで!)」
「うん。それじゃあねー。みんな、達者に暮らすんだよー!」
なんでゴブリンキングとゴブリナがあの洞窟にいたのかはわからない。
ただ冒険者さん達やオークロードが目覚めた時、ゴブリンキング達がいたらなんだか大変なことになりそうだ。
そう察したボクは、まず初めにゴブリンキングとゴブリナを起こし、いの一番に洞窟内から退場してもらうことにした。
「さてと……次はどうしようかな……」
失神し、横たわるオークロード達と冒険者さん達を見て考える。
冒険者さん達は、ボク等のことを助けにきたと言っていた。
と、いうことは、もしかしたらサバイバル試験中、不測の事態が起こったのかもしれない。そして、ボクはその不測の事態にものすごく心当たりがある。
「……念の為、冒険者さん達の記憶を覗いておこうかな?」
丁度、失神して横たわっているし、そのことを咎める者は誰もいない。
ボクは亜空間から『読心』の呪符を取り出すと、冒険者さん達の頭に貼り付け、一人一人の記憶を覗いていく。
「な、なるほど……」
どうやら冒険者さん達は、ダンジョン内に通常では現れないモンスターが出現したことで急遽サバイバル試験を中止し、Aランク冒険者三人とギルドマスターによる救出作戦を実行に移したらしい。
その際、Dランク冒険者のマクスウェルさんとローレンスさんにより、ボクがオークロードを従えていることを事前に伝えられている。
ダンジョン内に起こった変化がボクのせいとまでは考えていないみたいだけど、不審には思っているようだ。
こうなったら仕方がない……。
ボクはダンジョンコアにゆっくり視線を向け、それを手に取る。
ダンジョンが変わってしまったのは、おそらく、クッコロちゃんの仕業だろう。
しかし、いま、それを咎めても仕方がない。
既に進化してしまったモンスターを退化させることはできなくても、ダンジョン内のフィールドを元に戻すことはできる。
ついでに、ダンジョン内で救出を待っている見習い冒険者達も助けておこう。
このダンジョンの元管理者であるギルドマスターの思考を読み取り、ギルドマスターの頭の中にある元のダンジョンへと、ダンジョン内の構造を構築していく。
途中、見つけた見習い冒険者達全員とついでにポメちゃん達をダンジョンの外に放り出し、息を吐いた。
「これでよし……」
後は冒険者さん達の記憶を消すだけだ。
荒魂であるクッコロちゃんの存在とか正直、説明が難しい。
それだったら、最初からそんなものは『存在しなかった』ことにした方がいい。
「「ううっ……!?」」
新たに取り出した『記憶改竄』の呪符の力で冒険者さん達の持つ都合の悪い記憶を消し去ったボクは、冒険者さん達より先にオークロードを起こし、洞窟内からの退出を促した。
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