ブラック社畜の俺、部屋で深夜アニメを見ていたら駄女神に説明もなしにドラゴンの跋扈する異世界に強制転移される。でも今は≪盾の聖女≫と共に元気に最強勇者やってます!
第50話 父と娘。大魔竜ドラグバーンとミストルティア。
第50話 父と娘。大魔竜ドラグバーンとミストルティア。
ドラゴンが悠々と羽ばたける巨大な洞窟を、ミストルティアが進んでゆく。
「このまま最奥まで行くとパパの――大魔竜ドラグバーンのねぐらだよ」
「まさか留守ってことはないよな?」
「もう気配をバチバチに感じてるから大丈夫。でも同じように勇者の気配も気取られていると思う」
「だろうな」
そしてついに俺たちは洞窟の奥で、諸悪の根源たる大魔竜ドラグバーンと相対した。
そこにいたのはギガントドラゴンよりもさらに大きい35メートルクラスの巨大なドラゴン。
しかも身体全体がマッシブというかゴツイ。
真紅の瞳と漆黒の鱗はミストルティアとうり二つだった。
『我が娘よ、今日は何の用があって来たのだ? なにやらおかしな気配も一緒のようだが』
「用件は1つ。パパを倒しに来たの」
『たわけが。普段は全く顔を見せずに遊び歩いているくせに、急に会い来たかと思えば何をふざけたことを言っている」
「だって別に普段はパパに用事なんてないしー」
うわお。
さすがミストルティア。
世のお父さんが聞いたら死にたくなるような暴言を、平然と言い放ちやがったぞ。
『まったく、そうでなくとも今は人間どもが反転攻勢を仕掛けてきて忙しいというのに。くだらんことを言ってないで、お前も戻ってきたのなら四天王の一人として人間どもを追い払ってこい』
「だからぁ! ボクは人間の味方をするって言ってるの! だからパパを倒すの!」
『なん……、だと……?』
その言葉を聞いた途端に、大魔竜ドラグバーンから不穏な気配が漂い始めた。
俺はその凶悪な気配からリュスターナを守るように、少しだけ前に出る。
「ボクはパパを倒す――ううん、大魔竜ドラグバーンを倒すの。そして昔みたいにドラゴンと人間が共存する世界を取り戻すんだ。だから死んでもらっていい?」
『世迷言もいい加減にしろっ! なにが「ドラゴンと人間が共存する世界」だ! それは最強種たる我らドラゴンが、
見た目が凶悪なレッドアイズ・ブラックドラゴンってのもあって、大魔竜ドラグバーンが声を荒げるとものすごい迫力だな。
「別に人間とか、勇者以外は弱っちぃんだし無視してたらいいじゃんか? ボクたちは強いんだから、イチイチ気にかける必要とかないでしょ?」
『その勇者が問題なのだ! 最強種たる我らを脅かすことができる唯一無二の存在! そんな存在を認めるわけにはいかぬ! ……ん? 待て我が娘よ、その背中から漂ってくるイヤな気配はなんだ? まさかそこにいるのは勇者か!?』
「そだよー。パパを倒すために連れてきたの」
『我が娘よ……! まさか勇者をこのドラゴンズ・ハイランドに招き入れたのか……!!』
「うん。おにーさん、とりあえず自己紹介してくれる?」
「俺が勇者リョーマ=オクムラだ。隣の女の子は≪盾の聖女≫リュスターナ。悪いがお前を倒してこの戦争を終わらせてもらうぞ」
話を振られたので俺は名乗りを上げた。
同時に聖剣≪クラウソラス≫を鞘から抜くと、ミストルティアの背中から飛び降りてその横で並ぶように空中浮遊を開始する。
『その鋭い聖なる波動……! その剣、聖剣≪クラウソラス≫か!』
「そうだ。勇者の力を1000倍、いや10000倍にする勇者専用の武器さ。さて大魔竜ドラグバーン、この戦争にケリを付けさせてもらうぜ」
俺は啖呵を切ると、聖剣≪クラウソラス≫の切っ先を大魔竜ドラグバーンの顔に向けて突き付けた。
『やれやれ。まったく我が娘には本当に困ったものだな……だがこれはこれでありやもしれん。わざわざ勇者を探しに行って殺す手間が省けたというもの』
「さすがドラゴンの王。本拠地に攻め込まれたっていうのに自信満々だな」
『よくよく考えれば返り討ちにすればいいだけだからな。いいだろう勇者、ここであったが百年目。この場で始末してくれるわ』
「やるか?」
『まあ待て、洞窟の中というのは決戦の場にしては少々味気ない。それにこの巨山はドラゴンの霊峰だが、我らがここで戦えば破壊されるのは必死。ドラゴンの王として霊峰を破壊するのは心苦しい。ここは外に出て戦おうではないか?』
「そういうことなら異論はない」
俺たちは洞窟から外に出ると再び向き合った。
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