ブラック社畜の俺、部屋で深夜アニメを見ていたら駄女神に説明もなしにドラゴンの跋扈する異世界に強制転移される。でも今は≪盾の聖女≫と共に元気に最強勇者やってます!
第34話「ボクはそんなのまったく興味ないもん♪」
第34話「ボクはそんなのまったく興味ないもん♪」
「あっ、それが聖剣≪クラウソラス≫だね。ボク知ってるよ、それを持った勇者はとんでもない力を発揮するんでしょ?」
ミストルティアはとびっきりの笑顔で語りかけてくるが、その間にも暴力的な気配はどんどんと色濃くなっていく。
いや、違うな。
暴力的というか純粋な戦意か、これは?
今まで戦ったドラゴンと違ってなぜか嫌な悪意を感じない。
そういう感覚もあって、俺は試しに提案してみた。
「ミストルティアだったか? 俺と戦いたいってのは分かった。嫌だって言っても聞かないだろうし受けて立とう」
「ほんと!? やったぁ!」
「だけど場所を変えないか? ここから少し行ったところにだだっ広い平原があるんだ。そこならお互い自由気ままに全力で戦えるだろ?」
このクラスのヤバい強敵と戦ったら周囲への被害は計り知れない。
城の防御の要でもある正門付近で戦うなんてのは論外だ。
できれば戦わないで済むのが一番なんだが、ミストルティアの猛烈な戦意を見る限り戦いはもう避けられそうにない。
だったらせめて場所を移して周囲への被害を抑えるのが、俺にできる最善策だ。
「いいよー♪」
やはりミストルティアは俺の提案にあっさりと同意してくれた。
「えらく物分かりがいいんだな?」
「だって人間はお友達を大事にする種族なんでしょ? だからおにーさんは人が周りにいっぱいいるこの場所じゃ、全力で戦えないってことだよね?」
「ああ、その通りだ」
「だったら場所の移動はマストだよね♪ だってボクが戦いたいのは全力の勇者なんだもん。周囲に気を使って手を抜かれたってぜんぜん楽しくないしー」
「楽しむために俺と戦うのか?」
「もちろんそうだよ? 他に何かある?」
「四天王の一人として、勇者である俺を倒しに来たんじゃないのか?」
「ボクはそんなのまったく興味ないもん♪ へなちょこ種族の人間との戦争とか、パパがなんでそんなメンドクサイことをするのかなって、むしろ不思議でしょうがないよ」
「まったく興味ないってお前……」
お前は大魔竜ドラグバーンの娘なんだろ?
今のセリフを親が聞いたら泣くぞ?
「だって人間って基本弱っちいでしょ? よわよわな人間なんて今までみたいに放っておけばいいのに」
「でも俺には興味があるんだよな?」
異世界から来たとはいえ一応俺も人間だ。
「そうだよー♪ ボクが興味あるのはただ強い相手と戦うことだけ。勇者のおにーさんみたいな最強の相手とね♪」
どうも嘘は言ってないみたいだな。
ミストルティアの言動はまるで純粋無垢な子供のようだ。
きっと俺という新しいオモチャと遊びたくてしょうがないんだ。
「なんとなくお前のことが理解できた気がする」
「そう?」
ミストルティアはいわゆるバトルマニア――戦闘狂なのだ。
ドラゴンの勝利のために勇者を倒す――なんていう気持ちは全くなくて、ただただ自分が戦いたいから俺と戦う。
強い相手との戦いが好きで好きでたまらない。
とてもシンプルな戦う動機だった。
そして大魔竜ドラグバーンが現れるまで、ドラゴンたちは自由気ままで群れず、他者の指示を受けずに孤高に生きる種族だったと聞いている。
そう考えれば大魔竜ドラグバーンの指示で人類を攻めている他のドラゴンたちと違って、親の言うことすら聞かずに自由に振る舞うミストルティアは、ある意味もっともドラゴンらしい性格なのかもしれないな。
ま、その辺の掘り下げた分析は、頭のいいメイリンや察しのいいリュスターナに任せるとして。
「じゃあ場所を移すぞ。ついてこい」
俺は空に飛び上がると、だだっ広い平原の真ん中を目指して飛びはじめた。
「すごーい! 空を飛ぶ人間ってボク初めて見た! さすが勇者だね! これは楽しくなりそうっ♪」
ミストルティアも楽しそうに飛び上がると、人の姿のまま空を飛んでついてくる。
傍から見たら人間が2人飛んでいる状態なので、眼下ではいったい何ごとかと大騒ぎになっていた。
しばらく飛んでから、俺たちは広々とした平原の中央あたりに着陸した。
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