ブラック社畜の俺、部屋で深夜アニメを見ていたら駄女神に説明もなしにドラゴンの跋扈する異世界に強制転移される。でも今は≪盾の聖女≫と共に元気に最強勇者やってます!
第33話 大魔竜ドラグバーンの娘ミストルティア
第33話 大魔竜ドラグバーンの娘ミストルティア
俺とリュスターナがお城の正門に駆けつけると、
「ふんふーん♪ ふんふふーん♪」
そこには槍を持った兵士に幾重にも囲まれていながら、全然気にする風でもなくお気楽に鼻歌を歌っている少女がいた。
なんだ?
年は13,4歳くらいか?
日本で言うなら中学生くらいの少女だった。
髪はうっすらとピンクがかった茶髪。
まだ身体は発達しきっていないものの、出るところは出始めており、将来美少女になることが約束されているであろう顔立ちの整った女の子だ。
黒のプリーツタイプのミニスカートに、白いブラウスを着ている。
どこぞのいいところのお嬢さまだろうか?
でもなんで兵士に囲まれて槍を向けられているんだ?
別件で何か揉め事でもあったのかな?
まぁ今はいいや。
「それで話にあった、俺に勝負を挑んできたドラゴンってのはどこにいるんだろう? 姿が見当たらないけど」
俺は謎の少女のことは一旦置いておいて、隣にいるリュスターナに問いかけた。
「ええっと、なにがどうなっているんでしょうか?」
しかしリュスターナも状況を飲み込めないようだった。
俺とリュスターナはキョロキョロと見渡してみたものの、それらしい姿はどこにも見当たらない。
今まで20メートル以上の巨大なドラゴンとばかりと戦ってきたけど、もしかして今回は小型のドラゴンなのかな?
娘って言ってたもんな。
今まで戦ったドラゴンと比べて小さい可能性はおおいにある。
でも本当にどこにいるんだろうな?
影も形も見当たらないんだが。
俺とリュスターナがどうにも困惑していると、
「ヤッホー! やっと来てくれたね勇者のおにーさん! もういつまで待たせるのかって思ってたんだからねっ! じゃあそういうことだから早速ボクと殺し合おっ♪ ずっと待ってたからもう待ちきれないんだもんっ♪」
兵士に囲まれている女の子が突然、キャピキャピした声で俺に向かって話しかけてきたのだ。
「勇者のおにーさん……って俺のこと?」
「そうそう♪」
俺が自分の顔を指差すと、少女はうんうんと首を縦に振る。
「意味が分からん。何がどうなってんだ? っていうかこの子はどこの誰なんだ?」
「私にもさっぱりです」
俺とリュスターナが顔を見あわせていると、
「その女の子が大魔竜ドラグバーンの娘ミストルティアさ」
謎の少女を取り囲んだ兵士たちの間から軍師メイリンが現れた。
「は……?」
しかしその言葉の内容に俺はさらに首をかしげてしまう。
「あーうん。信じがたいかもしれないが事実なんだな、これが」
俺の反応見て、メイリンが苦笑する。
「いやだってどう見たって普通の人間の女の子なんだけど?」
しかも「ボクっ娘」と来た。
ボクっ娘って、昔は結構流行ってたのに最近はめっきり少なくなったよな。
うぐぅ。
「アタシも初めて知ったんだがね。≪人化変身≫といって、最高位のドラゴンは人の姿に変化することができるのだそうだ」
「つまりこの子はドラゴンだけど、今は人間の姿に変身しているってこと?」
「そういうことだね。相変わらず理解が早くて助かるよ」
「そういうことって言われてもなぁ……」
俺は謎の少女に視線を向けた。
「んー? なにー?」
「えっと、君はドラゴンなのかい?」
「そだよー。あ、信じられない? じゃあこれで分かってくれるかな?」
その言葉が発せられた瞬間だった。
少女から暴力的なオーラが猛然とあふれ出てきたのは――!
「く――っ! こいつ――っ!!」
余りの強大な波動に、俺は横にいたリュスターナを反射的にかばいつつ聖剣≪クラウソラス≫を抜いて戦闘態勢を取った!
「ふふっ、分かってくれたみたいだね、勇者のおにーさん♪」
「ああ、分かったよ。間違いない、お前はドラゴンだ――!」
それもこの圧倒的なまでのプレッシャーだ。
こいつはただのドラゴンじゃない。
最上位の中の最上位、ガチで超ヤバいドラゴンだぞ――!
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