第7話 聖剣≪クラウソラス≫
急に勇者の力を使ったせいか、やけに疲れてしまった俺はその日の夜は早めに寝てしまい。
そして翌日の早朝。
「まずは≪試練の洞窟≫で、勇者にしか抜けないと言われる伝説の聖剣≪クラウソラス≫を手に入れましょう」
そう言われた俺は、リュスターナに案内されて聖剣≪クラウソラス≫があるという≪試練の洞窟≫へと向かった。
その道すがら未来の妻でもあるリュスターナと親睦を深めるべくお話をする。
「勇者様は本当に強いんですね。巨大なドラゴンをパンチ一発で跡形もなく消し去るとは思いませんでした」
「まぁ、これでも一応勇者だからな。強くないと勇者は務まらないだろ?」
とかなんとか、勇者がどんなもんかもイマイチわかってなかったりするんだけど、わかってるふりしてイイカッコして言ってみる俺。
……いいだろ別に、これくらい見栄を張っても。
俺だって可愛い女の子の前でイイカッコしたいんだよ。
「すごいです♪」「かっこいいです♪」「素敵です♪ にゃーん♪」ってチヤホヤされたいんだよ。
「ふふっ、確かにそうかもしれませんね。勇者様は人類の希望ですから。私も≪盾の聖女≫として、未来の妻として、精いっぱい勇者様をサポートさせていただきますね♪」
「お、おう……」
リュスターナににっこり笑顔で言われて、俺はドキッとして思わず言葉に詰まってしまう。
話の流れだったとはいえ、こんなSランク美少女が俺の嫁になってくれるんだよな。
前の世界では妄想でしかありえなかったことが現実になったんだ!
よーし俺、ドラゴン退治を頑張っちゃうぞ~~!
そのためにもまずは、勇者専用の装備という聖剣≪クラウソラス≫とやらを手に入れるとするか!
…………
……
「着きました、ここが≪試練の洞窟≫です」
しばらく歩いて到着した場所は、大きな鍾乳石がたくさんある神秘的な洞窟だった。
「この奥に伝説の聖剣≪クラウソラス≫があるのか?」
「はい。勇者にまつわる伝説を書き記した古文書によると、この最奥に≪封印の間≫と呼ばれる広間があって、そこに聖剣≪クラウソラス≫が安置されているそうです。さあ取りに行きましょう!」
「ああ行こうか!」
俺はリュスターナと共に、意気揚々と≪試練の洞窟≫へと踏み込んだ。
中に入ると洞窟の中とは思えないほどに明るい空間が続いている。
壁についているコケが光って明かり代わりになっているようだ。
「古文書にはそれ以上の詳細は書かれていませんでした。この先に何が待っているかわからないので、気を付けて進みましょうね」
「そうだな。慎重に行こう」
俺たちは手を繋いでゆっくりと歩き始めた。
途中何度か≪試練の獣≫と呼ばれる「魔法で作られた疑似生命体」が行く手を阻んだけれど。
俺はその全てをワンパンで消し飛ばし、たいして疲れることもなく≪封印の間≫へとたどり着いた。
≪封印の間≫に通じる巨大な扉を押し開けると、洞窟の中とは思えない体育館何個ぶんだよってくらいに広々とした空間がある。
そしてその中央に台座があって、一本の美しい剣がこれ見よがしに突き刺さっていた。
「あれが聖剣≪クラウソラス≫ですね。あの剣は台座にしっかりと固定されていて、神が施した結界によって、女神に選ばれた勇者にしか抜けないそうです」
女神ってまさかあの駄女神のことか?
いやあの子はただの下っ端で、上には本当の女神がいるんだよな?
それはさておき。
「つまり勇者の俺には抜けるってことだよな。じゃあ早速抜いてみるか」
俺は台座に近づくと聖剣≪クラウソラス≫の柄を掴んだ。
するとなんということだろうか!
まるで聖剣≪クラウソラス≫が自分から俺に抜かれたがっているみたいに、いとも簡単に引き抜くことができたのだ!
「さすが勇者様です! 伝説の聖剣≪クラウソラス≫すら簡単に抜いてしまいましたね!」
リュスターナが両手の平をポンと合わせて、にっこり笑顔で言った。
「なんかここに来るまでも楽勝だったし、サクッと抜けるし。拍子抜けするくらい簡単だったな……と、おっと」
唐突に、俺はわずかにバランスを崩しそうになった。
というのも洞窟が大きく震えたからだ。
なんだ?
地震か?
「え……? まさかそんな……」
見るとなぜかリュスターナが青い顔をしてガタガタと震えていた。
「おいリュスターナ、どうしたんだ?」
ものすごい恐怖を感じているリュスターナと、そんなリュスターナの態度に戸惑う俺。
次の瞬間!
ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッッッッ!!
≪試練の洞窟≫の入口の方からなにかを破壊するような、削るような激しい音が連続して聞こえてきたかと思うと。
バァン!
≪封印の間≫の入り口の扉が吹っ飛んで、そこから1匹のドラゴンが姿を現したのだ――!
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