第5話 ≪対ドラゴン連合同盟≫(1)
リュスターナに連れられてしばらく歩いた後、到着したのはごついお城だった。
「ここが私たち≪対ドラゴン連合同盟≫が拠点にしているお城になります。対ドラゴンの前線基地であり、絶対防衛ラインの最大の要でもあります」
城壁の上を見上げてみると、弓を持った人や槍を持った兵士が大勢見張りをしている。
リュスターナの言うとおりで、王宮とかの華美なお城と違っていかにも前線基地って感じだ。
一言で言うと質実剛健。
「おおー!! なんかすごいな! 防御の要って感じがする!」
西洋の城を生で見るのが初めての俺はかなり興奮していた。
そう遠くない未来にフルダイブでRPGゲームができるようになったら、きっとこんな興奮でいっぱいなんだろうな。
「ふふ、そう言っていただけると嬉しいです。それでは中に入りましょうか。もうすぐ戦略会議が始まりますので、そこで勇者様を皆に紹介しますね」
リュスターナに手を引かれながら城の中を進んだ俺は、会議室へと案内された。
部屋の中には長テーブルがあって、そこに椅子が並べられており、10人ほどの人がいる。
全員身分の高そうな人たちだ。
「おお、あなたが勇者殿か!! よくぞ参られた!」
その中から一人の男がすっくと立ち上がった。
白髪交じりのおじさんだ。
いかにも偉い人ですってオーラを漂わせているけど、不思議と嫌な感じではなかった。
人々を導く清く正しい指導者って言えばいいのかな。
異世界転移前に俺が勤めていたクソみたいな会社の「労働は社会への恩返し」「働ける喜び」が口癖で、サービス残業を強要してきたクソ社長とはえらい違いだ。
しかもそのクソ社長ときたらそういうことを言っている癖に、自分は経費や接待費を使って高級外車を乗り回して、ゴルフにサーフィンに合コンにキャバクラと遊びまくっていたのだ。
「初めまして。ええっと……」
「おお、これは失礼した。ワシはこの城の司令官を務めるメンデルと申す者。ささっ、勇者殿。どうぞこちらにおかけ下さい」
「メンデル司令官ですね。俺の名前は――」
俺は座る前に自己紹介をしようとしたんだけど、
「おお、自己紹介など不要であるぞ。既にリュスターナから連絡は受けておるからの」
「え、連絡? リュスターナが?」
「街を襲うドラゴンをパンチ一発で消滅させた勇者リョーマ=オクムラ殿であろう? ぜひとも我々≪対ドラゴン連合同盟≫に力を貸していただきたい」
会ったことのない俺の名前やら何やらが既に知られていることを、俺は当然疑問に感じる。
「ごめん、リュスターナはずっと俺と一緒にいたよな? いつ俺のことを連絡したんだ? そんなタイミングあったけか?」
不思議に思って出会ってからの記憶を何度掘り返してみても、間違いなくリュスターナは俺とずっと一緒にいた。
誰かに何かを
どういうことだ?
「最初は普通に紹介しようと思っていたんですけど、こっちの方が話が早いと思って≪念話≫というスキルを使って勇者様のことを伝えておいたんです」
「ネンワ……? チワワの友達か……?」
「わかりやすく言うとテレパシーのことですね。≪念話≫スキルを持っている者同士なら、遠隔でも会話ができるんですよ」
「へぇ、そんな便利なものがあるんだな」
さすが異世界だと俺はおおいに納得する。
さっきリュスターナは光の盾――≪プロテクション≫って言ってたっけ――を張っていたし、魔法とかスキルがあるファンタジー系の異世界なんだな。
そうだ、もしかして俺も《念話》を使えないかな?
せっかくだし試してみるか。
リュスターナ、リュスターナ!
俺の声が聞こえるか?
聞こえたら右手を上げてみてくれ!
俺は心の中で強く念じた。
さあ、どうなる!?(ワクワク!)
…………
……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます