第23話 流れ着いたワンコ

《西暦2061年6月3日・タクトの森》


リコ

「ホントに……」


リコ

「ホントのホントに大丈夫なんですね?」


牛丼

「だーいじょうぶだよ、スライムくんだっているし。」


スライムくん

「ボクに任せて!!」


牛丼

「だからリコは、今日の準備しといて!」


リコ

「そこまで……言うなら。」


牛丼

「じゃあ、行ってくるわ!!」


 牛丼はそう言うと、スライムくんを連れて森の中へと進んだ。


 目的は、ただ1つ。


 以前見つけた、洞窟を探索することだ。


 そこの洞窟を探索することで、もしかすると新たな発見があるかもしれない。


 珍しい鉱石の可能性もある。


牛丼

「さぁ! 気合い入れていくぞ!!」


スライムくん

「おー!!」


 と、言ったはいいものの。


 そこの洞窟にあったのは、普通のものばかり。


 鉄鉱石や石炭など。


牛丼

「新しい発見はなし、と。」


 一応、1番奥までやって来たが、特に発見はなかった。


スライムくん

「ねぇ、牛丼! こんなの見つけたよ!!」


 すると、スライムくんが1枚の紙を牛丼に見せた。


 そこには、


 『…………計…』


 と、書かれていた。


 紙はもうボロボロで、何と書いてあったのかを読み解くことは不可能となっている。


牛丼

「ただのゴミだね。」


スライムくん

「うん。」


牛丼

「帰るか。」


スライムくん

「そうだね。」


 収穫なしの状態で牛丼たちは帰還することとなった。


 帰り際、牛丼はもう一度洞窟の最深部を見た。


牛丼

(……。)


牛丼

(まぁ、いっか。)


 牛丼たちは、他の仲間たちが待っている場所へと帰った。




――――――――――




 その日の夜。


 牛丼たちは、広場でパーティーを開いていた。


 テドンやカツ丼、イフリートなどの歓迎会だ。


牛丼

「これ、この飯! めっちゃ美味いな。誰が作ったんだ?」


タツヤ

「それ、俺が作ったんすよ。力作っす。」


牛丼

「マジかよ、お前やるな!」


牛丼

「料理の道でも食っていけるレベルだぞ。」


タツヤ

「そんな褒めたって何も出ませんよ?」


牛丼

「ハハハハ。」


タツヤ

「それよりも牛丼、1ついいですか?」


牛丼

「なんだ?」


タツヤ

「そろそろ、鍛治職人を探しませんか?」


牛丼

「なんで、」


タツヤ

「それは、俺が新しい槍を欲しいからに決まってるでしょ。」


牛丼

「あのなぁ、探すのなんて大変なんだぞ。」


牛丼

「それにうちは、給料なんて払えないから、それでも良い人探さないといけないし。」


タツヤ

「しゃーない、諦めますかー。」


 その場は、かなり盛り上がっていた。


 そして、しばらくの時間が経過し、皆がほどほどに落ち着いてきた頃。


 牛丼のすぐ横に1匹の犬がトボトボと歩いてきた。


牛丼

「おー? どうしたワンコちゃん。」


リコ

「お腹でも空いたんでしょうかね?」


牛丼

「やだよ、俺の飯は誰にも渡さないよ!」


 その時だった。


―― パタンッ


 その犬が突然、倒れたのだった。


牛丼

「お、おい! ワンコ!? ワンコぉぉ!?」




――――――――――




《西暦2061年6月4日・タクトの森》


カツ丼

「あ! 牛丼おはよう!」


牛丼

「おはよぉ、」


カツ丼

「昨日の犬、目が覚めたらしいですよ。」


牛丼

「マジで? じゃあ、行ってくるわ。」


 昨日のワンコは、牛丼の家で寝かせた。


 その為、牛丼は広場で1晩を過ごしていた。


牛丼

(なんか腰痛い。)


 そう思いながら、自分の家の扉を開いた。


牛丼

「大丈夫かー? ワンコー。」


 そして、昨日寝かせた自分のベッドを見た牛丼は、その光景に驚いた。


 そして、


牛丼

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 突然、叫んだ。


 すると、


???

「キャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」


 悲鳴も聞こえた。


 そこへ駆けつけたのはリコだった。


リコ

「どうしたんですか? ぎゅーどんさん!?」


牛丼

「り、リコ。後はお前に頼めるか?」


リコ

「それは、どういう事ですか?」


牛丼

「あれ、見てくれ。」


 リコは、牛丼が指さす先を見た。


 そこには、裸の女の子が牛丼のベッドの上で寝ていた。




――――――――――





 取り合えず、リコの服を着させたのでもう大丈夫なはずだ。


牛丼

「お前、人になれるんだな。」


???

「元々は犬なんだけどよ、普段は人の姿で生きてんだ。」


牛丼

「へー、そんでお前の名前は?」


コン

「アタイの名前は、コンっていうんだぜ。」


牛丼

「コンか……、良い名前だな。知らんけど。」


牛丼

「そんで、なんでこんな所に?」


コン

「……、それは言えない。」


コン

「お前を巻き込む訳には……いかないから。」


牛丼

「そっか、まぁ回復するまでここに居るといいさ。」


コン

「ありがとな。」


 その時だった。


 牛丼の家の扉を誰かが勢いよく開けた。


タツヤ

「大変だ牛丼!!」


牛丼

「どうした?」


タツヤ

「武装したタクト王国騎士団が、ここに向かって来てる!!」


牛丼

「……は?」


コン

「!?」

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