第10話 オーバーカウンター

――キーン!!

――キーン!!

――ドカーン!!


 現れたのは、大量の蜘蛛型のモンスター。


 村の周辺にいた野生のモンスターを一気に襲わせているようだった。


タツヤ

「よし! このくらいの雑魚たちは、俺とセイヤでなんとかするぜ!!」


セイヤ

「牛丼さんたちは、今のうちにラドリーを探してください!」


牛丼

「任せたぞ!!」


牛丼

「そんじゃあ、リコ。頼めるか?」


リコ

「お任せくださーい!!」


リコ

「【移動速度上昇】!」


――キュイーン!


牛丼

「よし、行くぞ、スライムくん!!」


スライムくん

「うん!!」


 牛丼たちは、森の中へと駆け出した。


 数十分後、牛丼たちを襲っていた蜘蛛型のモンスターの群れも全て撃破された。


 だが、ラドリーは見つからなかった。


牛丼

「くそ! 親玉はいなかったのかよ!」


セイヤ

「1度、態勢を整えましょう。」


牛丼

「おう、そうだな。」


 その時だった。


 牛丼の目に、何かが写った。


 直後、黒い腕のようなモノがいきなり現れた。


 その黒い腕は、剣を握っており、その剣がリコへと振り下ろされていった。


リコ

「う、そ……。」


 気づいた時には、遅かった。


 避けることも、受け止めることも何も出来ない。


 そう思った。


 だが、


――キーーンッ!!


 牛丼の剣が、受け止めていた。


牛丼

(もう、誰も失いたくねぇ。)


牛丼

(だから、失わないために戦うって決めたんだ。)


牛丼

「やらせるかよぉぉぉぉぉぉ!!」


 すると、その腕の持ち主の姿が、徐々に見えだした。


牛丼

「【透明魔法】を誰かに使ってもらってたな、ラドリー!!」


 直後、ラドリーはその場から逃げ出した。


 たった、1歩踏み込んだだけで、目の前から姿を消してしまった。


牛丼

「逃がすかよ!!」


 牛丼もその後を追った。


牛丼

「はァ、はァ、はァ、」


 しばらく走ると、ラドリーの後ろ姿が見えた。


牛丼

「見えた!」


 だが、その時だった。


 赤い火の玉が牛丼を襲っているのに気がついた。


牛丼

「や、やばい!!」


 それも1つではない。


 無数の火の玉だ。


牛丼

(こんな数、避けれねぇ!!)


牛丼

(でも、こんな数まともに喰らったら死んじまう!!)


牛丼

(どうしたら、いいんだ……。)


 その時、牛丼は思い出す。


 師匠を殺したビッグゴブリンが使っていた技を。


 あの時、牛丼の攻撃は跳ね返された。


 つまり、あの時と同じように、攻撃を跳ね返せれば、喰らわずにすむ!


牛丼

「見よう見まねになっちまうけど、やれることをやってやる!」


――キュイーン!


 牛丼を襲う火の玉に、魔力を注ぎ込んだ剣をぶつける。


 すると、その火の玉が全て、剣の中へと吸収された。


 刹那、剣から襲ってきた火の玉以上の大きさの火の玉が放たれた。


――ドカァァァンッ!!


 この時、牛丼はただの【カウンター】を超えた【オーバーカウンター】を会得したのだ。


牛丼

(このまま、押し進めて行く!!)


 またしても、火の玉が襲いかかるが、牛丼はそれらの火の玉を【オーバーカウンター】で簡単に処理していく。


 そして、気がつけば、ラドリーのすぐ背後まで、牛丼は近づいていた。


―― キュイィィン!


 魔力を込めた剣は、白い輝きを放つ。


 そして、その剣は今まさにラドリーの首を斬り落とすために、振るわれる。


―― スッッ!!

―― キィィンッッ!!


 だが。


 金属と金属がぶつかる音が鳴り響いた。


 牛丼の持つ剣と、ラドリーが持つ剣がぶつかったのだ。


―― スッッ!

―― シュンッ!

――ドンッ!!

――カンッ!!


 そして、牛丼とラドリーの激しい戦闘が始まる。


牛丼

「ぬぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


 次の瞬間。


――ドゴンッ!!


 ラドリーの手から何かが放たれた。


牛丼

(火の玉……?)


 しかし、火の玉は牛丼の横を通り過ぎて行った。


牛丼

(外した……?)


 丁度、その時だった。


スライム

「牛丼! 大丈夫ー?」


牛丼

「ッ!?」


牛丼

「来ちゃダメだ! スライムくん!!」


牛丼

(この火の玉は、最初から俺を狙っていた訳じゃなかった。)


牛丼

(後ろから追いかけて来ていたスライムくんを狙っていたのか!!)


 牛丼は、火の玉を追いかける。


 つまり、ラドリーに背を向けたのだ。


 ラドリーはその隙を逃さなかった。


―― ザクッッ!!


牛丼

「ッ!?」


 牛丼の額から、冷たい妙な汗が吹き出した。


牛丼

(背中を……、斬られたッ!)


 しかし、ここで立ち止まっている時間はない。


 こうしている間にも、火の玉はスライムくんを襲う。


牛丼

「スライムくん!!」


スライムくん

「スゥーッ、【水鉄砲】!!」


 スライムくんがそう言った時だった。


 スライムくんの小さな身体の目の前に存在していた水蒸気が、1つの水の塊になった。


 直後、その塊が火の玉へ向けて勢いよく放たれた。


―― ドンッ!


牛丼

「大丈夫か、スライムくん!」


スライムくん

「ボクは大丈夫! それよりも牛丼は?」


牛丼

「俺なら平気だ。」


 牛丼は改めてラドリーの方を向いた。


 ラドリーは、一切の表情を変えることなく、不気味な笑顔をこちらへと向けている。


 まるで、人形のようだ。


牛丼

「よっしゃ、そんじゃスライムくん。」


スライムくん

「なに?」


牛丼

「後方からの援護は任せたで!!」


牛丼

「2人で敵討ちかたきうちといこうじゃないか!!」

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