第4話 罠

コレル

「さ、て、と。」


 何かがおかしい。


 コレルはそう考えていた。


コレル

「なーんか、身体が重たいな。」


――キンッッッ!!


コレル

「たかがゴブリンが、強敵に見えてしまう。」


――キーンッ! キィィンッッッ! スッ!!)


コレル

「くっ!!」


――キィッン!


リコ

「嘘……、真之勇者でも苦戦するような相手なの……。」


セイヤ

「いや、そんなはずない。」


セイヤ

「だって、ビッグゴブリンといっても、ゴブリンが大きくなったようもの。」


セイヤ

「そんな相手に真之勇者が苦戦するなんて。そんなはず、ない。」


リコ

「じゃあ、なんで?」


――キィィン!!


コレル

「まず!?」


 コレルの攻撃。


 それはゴブリンを確かに捉えているが、その全てがゴブリンは効くことはなかった。


コレル

「全て、跳ね返される。【カウンター】といった所か!?」


 その瞬間、ゴブリンの拳がコレルを襲った。


コレル

「くっそ!!」


コレル

「仕方ねぇ、あれ使うしかねぇか!!」


コレル

「本当は、こんな雑魚相手に使いたくはねぇんだけどな。」


コレル

「【ボルケイノ】第肆奥義【乱れ打ち】!!」


 目にも止まらぬ早さの剣が、ゴブリンを攻撃した。


コレル

「ふぅ、なんとか、勝てたか。」


コレル

「はァ、はァ、はァ、あァッ!!」


コレル

(やっぱり、やっぱり奥義を使うと身体が動かなくなる。)


コレル

(はァ、はァ、奥義だけじゃない。スキルも……【ボルケイノ】を使うのも、もう辛いかもな。)


コレル

「はァ、はァ、使い時は考えないと。」


 コレルはリコとセイヤの方を向いた。


コレル

「なんとか倒せたな。お前らは安心して、出口の方に吹っ飛ばされていった仲間を助けに行きな。」


リコ・セイヤ

「はい!」


――ドスンッ


 コレルは、その場に座り込んだ。


コレル

「はァ、はァ、やべーな。死にそ。」


 コレルがそう呟いた時。


 洞窟の入口の方から笑い声が聞こえた。


 不気味な笑い声が。


???

「ククククククククククク、」


???

「ククククククククゥフハハハハハハハハハハハハハハハ!!」


コレル

「誰だ?」


???

「今なら、あなたを倒すことも差ほど難しくないダネ!」


コレル

「生きてたのか、ラドリー。」


ラドリー

「ハァイ、嬉しいことにもう一度あなたに会うことが出来たダネ。」


 コレルは立ち上がった。


 そして、すぐさまラドリーへと斬りかかった。


コレル

(俺に残された時間は少ない。それでも、やるしかない!!)


――キンッ! ドンッ! ガンッ!


 コレルの剣、そしてラドリーの放つ闇の力が腕のように伸び襲ってくる物。


 その2つがぶつかる音が洞窟内へと響き渡っている。


――キンッ! カンッ! キンッ!!


コレル

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! 【ボルケイノ】!!」


――キュイィィンッ!! キィンッッッ!


 そして、コレルの放った【ボルケイノ】は、ついにラドリーの隙を作った。


コレル

(今だ!!)


コレル

「【ボルケイノ】第肆奥義【乱れ打ち】!!」


 だが。


 ラドリーも寸前のところで、闇の力を発動させる。


 それも1本や2本だけでなく、無数の闇の力の腕を。


 コレルの【乱れ打ち】は、その無数の腕を斬り落としていく。


 そして、ラドリーのすぐ目の前へと来ていた。


コレル

(【ボルケイノ】には全部で4つの奥義がある。だが、俺はその奥義の4つ目しか知らなかった。)


コレル

(でも、第参奥義は突き技という事は、知っている。)


コレル

(なら、出来る!!)


コレル

(悩んでる暇なんてない! 今、ここで!)


コレル

(やるしかないんだ!!)


コレル

「【ボルケイノ】第参奥義!!」


 コレルがそう叫んだの当時に、コレルの剣はラドリーの胸の部分を貫いた。


 奥義というには、不完全なものだったが、結果的にラドリーを倒すことに成功した。


 ……ように見えた。


コレル

「ッ!?」


 確かに、コレルの剣はラドリーを貫いている。


 だが、コレル背後からも1本の剣が貫いていた。


 コレルの身体を。


コレル

「まだ、動けたのかよ。ビッグゴブリン……。」


 そう、ビッグゴブリンがコレルを貫いたのだった。


 遠のいていく意識。


 コレルは自分の最期を感じた。


コレル

(俺は、死ぬのか。)


コレル

(呆気ねぇよな。このまま死ぬなんて。)


 そして、遂にコレルの視界が黒く染っていく。


コレル

(もう、瞼もあかねぇや。)


 その時だった。


 コレルは見えなくなる目の前の景色の中に、とある1人の男の姿を見た。


コレル

「ぎゅう……どん。」


牛丼

「し、師匠!!」


コレル

「お前は、強くなれる……。俺は、信じるぜ。」


牛丼

「そんな……師匠。」


コレル

「あとは……まかせ……た。」

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