第17話 絶縁と依存
数日後。
がらんとしたアパートで、ミチエは横になり、ぼんやりスマホの画面をながめていた。
ミチエはスマホでSNSを見ていた。SNSには、芸能人やアイドル、他にもたくさんの美女の写真があふれかえっていた。
このくらいの顔じゃないと、人間になれないんだ。まだまだ自分じゃ
ブーっと、スマホにラインの
『あんた親に黙って
『親からもらった体をなんだと思ってるの?』
ミチエは画面にポチポチと文字をうち、返信した。
『私はこんなブス
『私が顔のことを相談してもまともに相手してくれたことなんてなかったくせに』
『こんなときだけ親ぶるな』
母親のラインをブロックした。
しばらくするとスマホに親の携帯の番号から電話が来たが、ミチエはその番号を着信拒否にした。
ブーっと、今度はカンナからラインが来た。
『ミチエちゃん元気?あの日からミチエちゃんが大学に来ないから心配だよ。
ミチエは
『引き立て役がいなくて困ってるの?』
『そんな風に思ったことなんてないよ』
『私と仲良くしてたのは私がブスだから引き立て役にしたいだけだったんでしょ』
『違うよ。ブスとか何とか関係ないよ。ミチエちゃんは大事な友達だから』
『嘘つき。美人だからブスの私を見下してたんでしょ。自分と比較させてブスは差別されろざまあって思ってたんでしょ』
『ねえ。私のこと美人美人って言うのも差別じゃないかな』
『何言ってるの?ブスをバカにしたいの?もう連絡しないで。もう友達じゃないから』
ミチエはカンナのラインをブロックした。
じわじわ、じわじわ、涙があふれた。ミチエは大泣きした。
「ごめんなさい。ごめんなさい。私がブスだから。ブスだから心がせまくなったの。ごめんなさい」
ミチエはいつまでも泣きじゃくった。
鼻にはいつもの
マスクと
「あごと
「あ、はい。よろしくお願いします」
アパートの
「う。おえ、おえ。う、うう、痛い。痛い。おえ」
パソコンの画面の片側にミチエが
画面のもう片側に、ぱっと中年の男の顔が映った。
「あ、どうもー。ミチエです」
『どうもー。若いね。学生?』
「あ、元学生です。最近大学やめたんで」
『そうなんだ。こんな美人さんが相手でよかったよ』
美人?私が?きっとお
「お上手ですね」
『へへ。じゃあパンツ脱いで』
「あ、はい」
この仕事は嫌いじゃない。自分が人から求められているのがわかって、うれしいから。
「鼻はきれいに高くなりましたよ。
「ありがとうございました」
パソコンの画面に、ミチエと男が映っていた。
『キミやせすぎじゃない?写真と全然違うじゃん』
「いや、太ってますよ」
『ふーん。まあいいや。お
「あ、はい」
「エラを切ったあとに、鼻のシリコンをこのあたりにいれて、
「あの、
「もう取れる
「まだあるじゃないですか。取ってください」
「ええ?」
パソコンの画面の片側にぱっと男が映り、
『うわ、化け物』
と、ぱっと画面が切れた。
画面片側に映ったミチエが取り残されていた。
ミチエは画面に映った自分の顔を、左右に動かしたり、近づけたり離したりして、じっくり観察した。
「何だろう。やっぱり口がでてるからかな」
レントゲン写真はミチエの横顔のもので、特に歯の部分が拡大されていた。
「本当にいいんですか?
「大丈夫です。
ミチエは
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