第2話 ある公爵令嬢の婚姻・その二


「姉上、連戦連勝だよねぇ」

 キンッ

「ダニエル様より、強いかもしれませんよ」

 カンッ

「ははっ、僕もそう思うよ。姉上に勝てる気がしないもの」

「だからって、脇が甘すぎです」

 パーン

 模擬戦用の剣が弾かれて、大きく宙を舞って落ちた。

「レオンも強いよねぇ。第一騎士団からも誘われているんでしょう?」

 剣を拾いながら、ダニエル様が汗を拭う。

「お嬢様が無事結婚して、ダニエル様が領地経営をしっかり学ばれるまで、待って下さるそうですよ」

「父上みたいな口調になってるよ、レオン」

 ぷくっと頬を膨らませるから、ますます幼く見える。

「それはいけませんね」

 久しぶりにダニエル様から、剣の稽古をせがまれて嬉しかった。とても体を動かしたかったんだと、剣を振るううちにだんだん感じてきて、危うく加減を忘れるところだった。

 お嬢様の暴挙に旦那様は、見合い(決闘)相手の選択だけして「少し好きにさせておこうか、でも、レオンがしっかり立ち会ってね」と言ったきり、ほとんど王宮で過ごしている。「王宮に専用の仮眠室が与えられるほど、今は忙しいのよ」と、娘の見合い(決闘)を面白そうに見学に来ていた奥様がおっしゃっていたが。

「レオン、考え事?」

「いえ、失礼しました。続けますか?」

「これから、ニルリナ嬢が来るから終わり~」

 ダニエル様は婚約者ニルリナ嬢を、わかり易く気に入っている。

「そうでしたね」

「レオンはあいさつに来ないでね。レオン相手に嫉妬したくないからさっ」

 十五歳になったばかりの口から、嫉妬なんて言葉が出てくるようになるなんて。

 胸がちょっと熱くなった。


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