第6話 襲撃
まだまだ残暑が続く厳しい日差しが照りつける中、
額から流れ落ちる汗が目に染みる。
時折頬を撫でるそよ風、けたたましい蝉の声が途切れる瞬間・・・。
そんなささやかな変化でも、集中力に影響が出る。
天登はかれこれ2時間ほど、こうしていた。
(俺にはどんな感情変化が心気のきっかけになるのか。怒りは、どうやら今の俺の心の持ちようでは、心気の引き金にはなっていないようだ)
(もしかして、俺には素質がないのか……)
不安がもたげる。
心気を操って初めて破邪士と言える。
破邪士になれないと、母さんを目覚めさせる方法を探すことはできない。
(こんなところでつまづいているわけにはいかないのに……!)
焦りと悔しさが、余計に心を乱す。
(そもそも、母さんを目覚めさせたいのは、母さんと、あかりとの、あのいつもの日常を取り戻したいからだ)
(貧しいながらも、平和で喜びに満ちていた生活……。大切な家族だ。あの日々を……)
「あぁ、幸せだったなあ……」
思わず独り言がこぼれ落ちた。
その時、
「あぁ、こういうことか、心気って……」
心に気が充たされる。
充実、満足、あるいは、怒気。
そうして気を炎のように大きくした時、心気は発現する。
俺の場合は、そのきっかけは、幸福感なんだ。
「幸福感を現実にする。それには、一つ一つの目標を成し遂げていくことだ。その最初の目標が、心気で岩を攻撃すること」
すると心気は光球と化して、ソフトボール大ぐらいの大きさになった。
本堂にいた
(おやおや、まだ2時間かそこらよ。とんだ坊やを拾っちゃったよ……)
「はっ!」
光球は一直線に30m先にある岩に向かって飛んでいき、大きな音を上げて激突し、無数の破片を撒き散らした。
やがて砂埃が消えて岩の様子をみると、表面が30センチ四方の大きさでえぐれている。
相当な破壊力だ。
「お見事お見事!」
手を叩きながら本堂から境内に降りた
「由緒正しい庭石を、見事に抉ってくれちゃったねえ」
「え、ダメだったんですか?!」
「ウソウソ(本当は今夜中に違う的を用意しようとおもってたんだけど、まさかもうできちゃうとは……。神主に怒られちゃうなぁ)」
しっかり心気の芯が岩に食い込み、その回転が周りを削り取った跡がある。
「かなりの殺傷力ね。これは5
「え、
「妖魔の血の濃度が50%ってことよ。60%は6血、80%は8血」
「え、50%って、相当強いんじゃ……」
「そうだねぇ、並の破邪士じゃしんどいけど、君なら行ける気が……」
その時、
同時に
「上よ!」
本堂の屋根の上に人がいる。
逆光で影しか見えない。
「いた!人がいる!もしかして妖魔?!」
「へっへっへっ、レッスン中に邪魔するぜ
そこには、長い銀髪で半分顔を隠した妖魔がいた。肌は青みがかり、切長の目と長い舌が目立つ。細身の長身をレザースーツで包み、
「
「なんでてめぇがここにいるんだぁぁ!!」
「へっへっへっ決まってんじゃねぇか、お前に会いに来たんだよ。でもレッスン1の最中だったんだなあ、じゃあそのヒヨコ生徒さんも、一緒に殺してやるから、あの世でレッスン2やればあああ??」
言い終わるや否や、
そして
「ぎゃっきゃっきゃっ、ほれーーー!」
それを
続いて
激しい金属音とともに、
力で押し合いながら、2人が睨み合う。
「なかなか機敏じゃねぇか。ビンビンくらぁぁ
「黙れ!」
「うふぉっ!」
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