インドア陰キャのデート負け

物語中毒者

第1話

「まさか一週間悩んだ末、出た結論がお家デートとはねぇ」

「……陰キャですみません」

 甘かった。彼女になって浮かれていた自分を殴り飛ばしてやりたい。インドアぼっち陰キャにはあの数々のおしゃれデートスポットは敷居が高過ぎた。

「せっかく良のために、おしゃれしてきたのになー」

「うっ」

「ちょっと高い美容院にもいってきたのになー」

「ぐっ」

「服も新しいの買ってきたのになー」

「もう、勘弁してください」

 心が耐えきれなくなった俺は、膝を屈してそのまま土下座を敢行する。

「ふふっ、冗談だよ」

「……(チラッ)」

「まあ、0.5パーセントくらいは」

「割りじゃないんですね」

「なに?」

「いえ、なんでもありません」

 顔を覗き込もうとしてくる咲を、頭を更に下げ床にめり込ませることで回避した。

 後頭部に視線が突き刺さる。

「悪いと思ってる?」

「思ってます」

「ほんとに?」

「心の底から」

 投げかけられる言葉、その全てに謎の重みを感じながら

「じゃあ、私の言う事聞いてくれるよね?」

 咲のその言葉と共に、今日一番の圧力が俺の下げた頭にのしかかる。

 俺に用意された答えなど一つしか存在しなかった。

「……はい」

「うん。じゃあ土下座やめて?」

 恐る恐る顔を上げると、咲がゲーム棚に手を伸ばしていた。

 なにかしたいゲームでもあるのか?いや、けどあそこにあるゲームは全部一緒に遊んだことがあるはず。

 そう考えていると、咲が並んでいるパッケージを順番に押し始めた。

 棚の奥にケースが当たる音と共に、血の気がサアっと引いていくのを感じる。

 しばらくして、咲の手が止まった。

「お、あったあった」

 咲がケースを六個取り出して、奥に潜んだ目当ての物を引っ張り出す。

「じゃあ良、これやろ?」

 彼女の手には「百花寮乱」というタイトルと共に複数の制服姿の女子が描かれたパッケージ、恋愛シュミレーションRPGが握られていた。

「あ、この女の子私に似てるね」

「鬼ですか?」

「それがなにか?」

 デスクの上にあるPCにディスクを入れて起動すると、ファンが音を立てず回転し始めものの数分で立ち上がる。

 寝起きのくせにヌルヌル動くなちょっとはカクつけ!

 そこそこいい値段のする高スペックPC、数年間を共に歩んだ俺の相棒、それにこんなにも殺意が沸くなんて思わなかった。

「やろっか?」

「……はい」

 いや、まだ終わっていない!

 咲が気づいていないうちに‘はじめから′で始められればは

「あ、とりあえずセーブデータからやろう」

 終わった……。

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