街の心臓から送り出される血潮―少年と少女と彼女と彼
小田舵木
まえがき
今、この文章を書いている私は、ある少年と少女、そして亡くなったはずの幼馴染が関係したちょっと不思議な体験を経た後の私だ。
その体験は一体何だったのか?と問われると、少し困る。
なんといっても少し不思議な体験だから。
主観的にはそれが現実だと感じれても、客観的には夢としか言いようのないような体験。
さて。
Q.何故、私がある少年と少女に起こった不思議体験をすんなり信じれたのか?
A.私も不思議体験の真っただ中にあるヘンテコな存在だったから。
私の不思議体験をざっくり言い表すと、「
私の体験談のウェイトは「タイムループ」の方にある。「予見」の方は何というか、生まれつき他人より勘がいい、程度のもので―まあ、幼馴染の死を克明に「予見」し過ぎたせいで私は少なからず傷ついたけど―済んでいたが、「タイムループ」の方はそうはいかなかったから。
前提として、ループしていた。
が、
しかも、そのループの
私はしばらく、その決まりきった運命を
だが、それを
私たちは、ちょっとしたきっかけで知り合い、仲良くなった。
私と仲を深めた彼は「タイムループ」を解決しようとした。しかし、それは達成される見込みのない無益な試みになった。当然だ。
ここで本稿のヒロインというべき、
彼女は伊織君の幼馴染だ。彼と彼女は中学生時代のある事件のせいで
私は伊織君を巻き込んでしまった事に責任を感じていた。
なんでかって?彼が私に関わる事で、死ぬ運命にあったからだ。
和香ちゃんにも、私がかつて味わった絶望―自身の半身というべきパートナーと死別する―を
でも、どうしようもなかった。私は元来、無神論のようなものを信じる口だ。超常的な何かに祈る事は少ない。ただまあ。私のせいで
ここで、この少し不思議な話は大きく変化することになった。私はその現象を奇跡だ、と当初は思ったが、ある夢のようなもので、それを
現在、
平穏な日々を我が古書店「雀久堂」(私たちは便宜的にジャンクどうと呼ぶ、正式名称はこの店をひらいたお爺ちゃんが知っているはずなんだけど―亡くなってしまっている)で過ごしている。
そして、わが主人公とヒロインの伊織君と和香ちゃんのカップルは、現在、古都K市の大学に通う学生だ。このカップルは一連の奇妙な体験を経て、より強く結びついた。そして現在の私の
私たちは「
さてさて。
今からあなたにひも解くのは、私たちが語り合った思い出話と、ちょっとした妄想を混ぜこみ、こね合わせて作った「おはなし」だ。
信じてはもらえないだろう。私としては
それは―ただ、私たちの「過去―現実―」として、かつて、あった。事実かどうかは別にして。
では、作者のうるさい言い訳は抜きにして、「おはなし」を始めよう。「おはなし」のタイトルは―
「街の心臓から送り出される血潮―少年と少女と彼女と彼」
という。最後まで付き合って下さったら、私は大変うれしく思う。そして、この「おはなし」から何かをつかみとって下さる方がいるなら、それに代わる喜びはないと思う。
「雀久堂」店主、もとい「おはなし」の語り手、
2021年8月9日 「雀久堂」店内カウンターテーブルより。
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