友情結婚の婚活やってみた。

神原依麻

結婚って必要ですか?

「え、まだなの、やばくない?」

 とマウンティングを取られたり、

「私が紹介してあげる!」

 と謎のお節介を焼かれたり。


 親や職場やWeb広告まで私を追いかけてきて、なんとかこっちの世界に引きずり込もうとしてくる。ええ、もうホラー映画です。しかしなぜか世の中全体で市民権を得ている。


 そう、『結婚』ってやつです。


 ◇ ◇ ◇


 かくゆう私も小学生くらいまでは『いつか自分も結婚する』と思っていました。


 しかし、だんだん『いや、結婚必要ないわ』という風に気持ちが変わり始め、マンション購入用貯金を始めたのは大学生の時でした。


 その頃は、『きっと自分は一生一人で生きていくのだろう』という漠然とした思いがあったのです。




 しかし、無事大学を卒業し、社会に出てみると、旗色が変わりました。


 また一人、また一人と友人が結婚していく。それ自体はとても喜ばしいことではありましたが、それは気軽に遊びに行ける友人ではなくなることを意味していました。


 だんだんと一人遊びのプロになりつつはありましたが、一方で、誰にも文句を言われずに連れまわせる相手が一人居てもいいなという風に思い始めました。


 さらに、親の圧力。特に私の母親は『結婚して子供を産んで初めて人間』というのを本気で信じているような人ですから、結婚していない私には人権なんて与えらえていないわけです。


 こいつを黙らせるために偽装結婚するもまたやむなし、と思わせていただけるほどには精神攻撃を浴びせていただきました。


 あとは、周囲の目です。マウンティングを取ってくる人や謎のお節介人間がどこにでも一定数存在していました。別に無視をすればいいことではあるのですが、それは確かに小さなストレスやモヤモヤではありました。




 そんなこんながあり、しかしそれでもなお結婚にたいしては後ろ向きでしたが、あるきっかけで本気で婚活をするようになります。身に覚えがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。


 そう、占いです。


 実は当時、仕事はとても順調でやりがいもあったのですが、自分のスキルに限界を感じ始めていて、職種自体を変えるべきなのではないかと悩んでいました。


 また、マンションもローンのことを考えるとそろそろ本気で考えたほうが良いかもしれない、とか、とにかく色々と自分のその後の人生について思い悩んでいました。


 そんな時に、政治家や社長なんかを顧客に抱えている占い師というのをたまたま紹介されたのです。


 実際に会ってみると、本当に的確にいろいろなことを言い当てられる。


 今考えると、当時は心も弱っていましたから、訳知り顔でこうしたらいい、ああしたらいい、と言ってくれる人はとても頼りになるし信じたかったのかもしれません。


 そして言われたのが、『あなたは結婚しなくても大丈夫な人だけど、間違いなく後悔するからできるならしときなさい』という言葉。


 今でもその言葉自体は本当に的を得ていたと思いますが、その一言で、私は婚活を始めることにしました。




 占い師の助言に従い、私は一人暮らしをはじめ、転職をし、婚活をしました。


 一人暮らしも転職も自分にとってはとてもいい選択だったと思います。


 しかし、婚活は本当にうまくいかなかった。そして、婚活に若干行き詰まりを覚えていた頃に、また転機が訪れます。人事異動です。

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