三、四、五

「気がついたのね」

 目が覚めると、瞼を赤く腫らした博士が僕を覗き込んでいた。

「びっくりした。突然倒れたのよ。あなた」

「夢を見ました」

「素晴らしいわ。どんな夢だった?」

「僕によく似た子がそばにいて、僕に云いました。『お前は三人目だろう? 僕は四人目だよ』と」

 すると博士は微笑んだ。

「違う。あなたは四人目よ。三人目は造っている途中で壊れたの」

 四人目。僕は三人目ですら無かったのか。とすれば、頬を涙で濡らして僕に掴みかかってきた「彼」は、自分を四人目だと思っているけれども、実際は五人目だという訳だ。遠くで鳴り響いているサイレンの音が、やけに煩い。

「なぜ、僕を造ったんです?」

 五人目の手が触れた、右の肩が熱い。

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