個人授業

「そっと掴むの。強くしても、弱くしてもいけない」

 青白い炎を僕の手に移して、ガーベラは僕の目を見て笑った。

「……あぁ、上手ね」

 アルトの深い声が耳を揺らすのがくすぐったい。僕の手の中で熱を持たない冷たい炎が踊っている。ピシ、ピシ。比重の軽い金属同士を打ち合わせるような音が鳴る。

 薄紫の瞳が僕を見ている。ぼうっとしながら炎を掌の上で転がす。

「ピューロ、気を逸らしちゃだめよ」

 ガーベラが忠告する。だけど彼女の息が僕の横っ面にかかる……。

「僕、あなたの――」

「えっ?」

「あなたの授業がいつも、楽しみです。とても」

 嘘じゃなかった。真っ白な髪を揺らしながらガーベラは笑い、少ししてから静かに云った。


「有り難う」

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