同人イベントに行きたすぎて託児所を作りました

四辻さつき

第1話 推しがくれた居場所!

「つっ…………疲れたッ…………!!」

 2015年、秋。

 私は、子育てに心底限界を感じていた。

 

 夫の仕事で、新しい土地に引っ越したばかり。実家も友達も遠い上、息子はイヤイヤ期絶頂の2歳。しかも第2子妊娠で、つわり全開。夫は仕事が忙しく、家に帰ってこれない日も多い。


 せめて近くにママ友がいたらな……と思うものの、キラキラしてる(気がする)ママさん達の輪に、なかなか入っていけなかった。

 小学生の頃から、漫画やゲームなどの趣味から友達を作っているタイプだったので、「ご近所」「ママ」という接点カードだけで新しい友達を作るのは、めちゃくちゃハードルが高かったのだ。


 子育てして家事もやって、ものすごく頑張っているのに、何というか――「生きている」という感じがしない。もちろん子どもは可愛いかったけど、そのときはストレスの方が圧倒的に上回っていた。


 そんなときだった。

「ああ、今日も何もいいことがなかったなぁ……」なんて虚しい気持ちになりながら、なんとなくつけた深夜のテレビで。


 私は、推しジャンルに出会った。


 ――一瞬で沼に落ちた。

 ふと気がついたら、見逃していた放映をコンプし、ピクシブで二次作品を漁りまくり、ツイ垢を開設し、さらに自分で二次創作を書いて、初めてピクシブに小説を投稿していた。(この間約1ヶ月)


 アニメの放映を見れば、日々の子育てストレスが一気に吹き飛んだ。二次創作を見たり書いたりするたびに、自分の瘴気が目に見えて浄化されていった。おそらく、はたから見ても笑顔が増えていたんじゃないかと思う。


 ツイッターで交流する相手も、どんどん増えていった。

 ご近所でもママ同士でもなく、ただ推しが同じ相手と、子育てとかとは全然関係ないおしゃべりをすることが、死ぬほど楽しかった。


 ここでは、ママじゃなくてもいい。「私」が好きなことをしゃべったり、「私」が好きな作品を書いていい。


 「私、生きてる!!」って感じがした。

 推しが居場所を作ってくれたのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る