第41話 ゆかりと初恋



—ゆかりside—



同窓会から逃げ出した私と香奈は、香奈おすすめのバーで飲み直していた。


同窓会では話す気にもなれなかった私の恋愛事情だが、香奈になら全部相談してもいいかと思えたので、翔太くんとの微妙な関係性を洗いざらい話している。


もちろん私も翔太くんのことは好きだけど、世間体とか、翔太くんの将来とかも考えると、私は翔太くんの告白を受けられない。

そんな私の弱音を聞いた香奈はこう言った。


「ゆかりってずっとそう。最初は無鉄砲なくせに、大事な時に臆病だよね。」


ぐうの音も出なかった。


「で?ゆかりは翔太くんとどうなりたいの?」


「いや、どうと言われても、私と翔太くんじゃ立場的にあれというか、世間体とかもあるし。まあ多分あの時の翔太くんの告白も気の迷いというかなんというか」


そこまで言うと、不意に香奈の顔が近づいた。

言い訳ばかり並べる私の唇が、温かい感触で塞がれた。



「じゃあこれも、気の迷い?」



何が起きているのか分からなかった。



「私、ずっとゆかりのこと好きだったんだ。だからあの街で会えた時、奇跡みたいに思った。」


え??


「わかってるよ。ゆかりにとって私はただの友達だってこと。報われない恋も、世の中の風当たりが強い恋も、世の中にはたくさんあるんだよ。それでも、」



「私は、ゆかりと、一度でいいからキスしたかった。」

「ゆかりは、翔太くんと、どうしたいの?」


「気の迷いなんかで告白しないよ。壁の高い関係であればこそ。」


香奈の真剣な眼差しに、私は言葉を探しながら応える。


「ありがとう。さっき香奈が言ってたとおり、私の気持ちは変わらないと思う。香奈は私のいい友達。だから、それはこれからもずっと変わらないってことも、分かっておいて。」


「ずるいよ。そんなこと言うなんて」

「ずるいかな。」

「でも、いいんじゃない。ずるく生きて。幸せを掴むならそうじゃなきゃ。」

「ありがとう。元気出たわ。」

「言えてよかった。なんかスッキリしたわ。」


私は、香奈からぶつけられた大きな想いに、向き合えたことに安堵した。




「ちなみになんだけど、翔太くんって五十嵐翔太?」

「そうだけど、なんで知ってるの?」

「いや、ってか覚えてないの?10年前の」

「覚えてるけど、たまたま同姓同名とかの可能性って」

「そんなわけないでしょ。年齢もピッタリだし。」

「そうだけどさ、流石にね」



それは、喉の小骨のように心に引っかかり続けていた、私の淡い初恋だった。

どこか儚げで、私が目を離したら消えてしまいそうだった彼私は


「私10年前、ゆかりのこと好きだって翔太くんから相談されたんだ。あと、翔太くんがゆかりと同じ大学に今年入ったって、翔太くんの同級生の真紀ちゃんから聞いたけど。」



私は、翔太くんからも、とても大きな想いをぶつけられていたのだと悟った。


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