第18話 カフェでランチ
とりあえず昼食を取ろうと、ゆかりさんと僕はカフェに入った。
休日の昼下がりらしく、店内は家族連れやカップルも多い。
「そういえば、こうやって外で一緒にご飯食べるの初めてですね。」
タイミングが合った時は301号室で一緒にご飯を食べたこともあるが、こうしてお店に二人で来るのは初めてだった。
「確かに。なんか変な感じだね」
少しだけ照れてしまうのを誤魔化しながら会話をする。
「何にするか決めた?」
「うーん。サンドイッチとコーヒーですかね。」
「えー、なんか少なくない?私はカルボナーラかなー」
「大丈夫です。もしかしたらデザートも頼むかもですけど」
「いいね、じゃあ一緒にパフェとか頼んじゃう?」
緊張しているのか、正直そこまでお腹は空いていない。でも、ゆかりさんの目の輝きには勝てない。
「パフェ好きなんですか?」
「いや、なんかテンション上がるじゃん?」
「なんか急に子供みたいですね。でも少しわかります。」
「いちごパフェでいい?」
「いいですね。」
注文を済ませ、料理が来るのを待つ間に、明日のことを考える。
「そういえば、あれから伸吾さんから何か連絡とかありましたか?」
「いや、無いよ。流石にもう諦めかけてるのかもね。」
「そうだったらいいですね。」
「あいつもひょっとしたらもう新しい彼女とかいるかもだし。」
「だったらストーカーまがいのことなんかしてこないでしょうよ。」
「まあ、別にどうでもいいけどね、明日きっちり別れられれば。」
「そうですね」
せっかく二人で初めてのランチをしているのに、話題がゆかりさんの元カレというのは少しモヤモヤする。
でも、ゆかりさんの中に、伸吾さんへの未練も興味もないことがわかって、少しホッとする。
この複雑な感情の理由は、今は考えないでおいたほうが良さそうだ。
そうしているうちに料理が来た。
「普通に美味しいですね」
「そうだね。こっちもいい感じ。」
「ゆかりさんってパスタ好きだったんですか。」
「まあ結構好きかもね。時々レトルトのやつも食べるし」
「じゃあ今度僕も作ってみましょうか」
「いいの?食べてみたい!」
「お店みたいにおいしくできるかはわかんないですけどね。」
「でも食べてみたいな。翔太くんの作る料理ならなんでも」
いつもそうだ。
ゆかりさんは急にそんなことを言うからずるい。
僕が欲しい言葉も居場所も全部さらっとくれて。ときめかない方が無理がある。
「じゃあ、楽しみにしておいてください。」
それだけ言って、食べかけのサンドイッチに手を伸ばした。
しばらく他愛もない話をしながら食事を終えたところに、頼んでおいた食後のパフェが来た。いちごとクリームの山の頂上には、なぜかハート型のクッキーがあしらわれていた。
「こちら、カップル仕様にさせていただきました。ごゆっくりどうぞ」
店員さんのご厚意だったので、いや違うんですとも言えなかった。
「・・・カップルだって。」
「まあ、そう見えるんですかね?」
「そしたら明日も大丈夫かな」
「そうですね!十分に自然な彼氏感が出ていたということで!」
二人して照れ隠しに謎の言い訳をしてから、普通より3割増で甘いパフェを食べ始める。
しばらくして、ゆかりさんがハートのクッキーを手で割って僕に差し出す。
「はい。せっかくだから半分あげる。」
「いただきます」
僕がスプーンを置こうとしている間に、クッキーが口に入っていた。
「・・・美味しいです。」
少し大胆なことをして、直後に僕以上に照れるゆかりさんはいつも可愛い。
あの時食べたハートの片割れよりも、こっちの方が美味しい気がした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます