第13話 嫉妬




「ゆかりさん、聞きにくい話なんですけど、あの男の人とはお知り合いなんですか?」

「ああ、あいつ?伸吾。前の彼氏。」

「あー、あのケーキのプレートに書いてあった」

「ハハハ、そうそう」


コンビニから家までの道でゆかりさんに、伸吾という名の男との関係を聞く。


「なんかね、あいつからフってきたのに連絡してくるのよ」

「えー。」

「友達としてまた飲みにいってもいいよとか、何様って感じで」

「あー。」

「それでさ、なんか無視しちゃって。」

「そしたらあんなことになったと。」



「そう。まあ今日は翔太がいたからなんとかなったけど、今日じゃなかったら危なかったかも。」

「怖いですね。」

「なんか付き合ってる時からそういうとこあったんだよね。」

「そういうとこ?」

「私を自分の思い通りにさせようとしてくる感じ。」

「え、どういうことですか?」



「毎日すごい量のメッセージが来たり、他の友達付き合いとかも制限してきて。それでこっちが何か注意したら無視。」

「うわー。」

「いや、なんかそれも愛ゆえなのかな、とか思ってた私もおかしかったんだけど」

「でも好きだったならしょうがないですよね」

「まあね。」


ゆかりさんの元彼がそんな男だったということに、なんだかモヤモヤとした気持ちになる。


「レストランでさー、注文したのじゃないものが来た時とかさー、もうすごいクレームいうのよアイツ。」

「それでね、遊園地いった時もひどいんだよ。」

「他にもなんか私の仕事の事とかも色々言ってきてさー。」


もういい、聞きたくない。


それでもこの人は、そいつのために交際1年ケーキまで用意して、別れたら酔い潰れるまでやけ酒するくらい好きだったことも知っているから。



「でさー、ってあれ?翔太どうした?」

「・・・いや、なんか結局ゆかりさんはそういう男の方が好きなのかな、とか思って。ごめんなさい急に黙っちゃって。」

「いや、今はもう何も思わないよ。夢から覚めたって感じ。」

「そうですか。」

「アイツとも、最初は彼氏が欲しいからってくらいの感じで付き合っただけなのに、別れたら年齢的に次が難しいぞとか考えてたら、いつの間にか好きって思い込もうとしちゃってたんだと思う。」

「そういうものなんですね。」


「・・・え?もしかして、嫉妬してくれてるの?」

「はい。多分。恥ずかしながら。」

「フフッ。なんか嬉しいかも。」

「え?」

「なんでもない。」



「でもね、こうやって前に進めたのは、あの日君が私を見つけてくれたからだよ。」


不思議だ。ゆかりさんの言葉一つで、僕の心が急激に晴れ渡っていく。


ふと空を見ると、雨は上がっていた。

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