いきなり異世界に転生したけど、魔法は使えないので地道にやろうと思います。

怠惰勢

プロローグ


ーーーーー何か変なところに来た。


何を言ってるのかって?俺にも分からない。


目の前には見渡す限りの平原が広がっており、少し離れたところに見たことないくらい大きい山がいくつも連なってた。


どういうことだ? 本当に分からなくなってきた。


何でここにいるんだ? どうやって来たっけ?


混乱しすぎて思考がぐちゃぐちゃになっている。

一回整理しようと思って頭のなかを落ち着かせることにした。


「えーっと、確か朝起きて学校に行って、少なくない友人達と授業を受けて、放課後に公園に遊びに行こうって話になって、それからーーー」


そこまで考えて、一つ思い浮かんだ。


「そう言えば、公園で遊んでいた時に大柄の男が道脇で子供の手を引っ張って車にのせてたから、それを助けようとして掴み合いになって、車道に飛び出てーーー」


そうだ!視界の向こう側から大きなトラックが来て、


「で、気づいたらここにいたのか。」


…………なるほど!分からん!

やっぱり頭が動いてない気がする。何がどうなってんだ?最後に確か大きいトラックが向かって来てるのが見えて、


_ってちょっと待て。


もしかしてーーーーー


「俺、死んだ?」


あー、はいはい。俺死んだのね。なるほどなるほど。


………え?


「えぇぇぇーーーーーーー‼‼‼‼」


いきなりなに⁉ 俺死んだの⁉ 嘘だろ⁉


お、お、落ち着け。だ、大丈夫だ。一旦冷静になろう。

試しに腕をつねってみる。うん、ちゃんと痛いわ。


「ってことはここ死後の世界なのか?」


えぇ……俺が思ってた死後の世界ってもっと何も無いところか、お花畑みたいなところを想像してたわ。ハッハッハ


…うん。情報量が多過ぎてテンションがおかしくなってきたわ。


と、そんなことを考えていると


「グォォォァァァアアア!!!」


「な、何だ⁉」


突然、上から何か大きい動物が吠えているような声が聞こえた。ただ、ライオンとかの比じゃないくらいの大きさで。


そして、とてつもなくでかい陰が俺の上を飛んでいった。


上を見ると…


「ど、ドラゴン⁉」


鋭い目。鋭利な刃物のような爪。凪ぐだけで木々を倒せそうな太い尾。そして、何でも噛み千切れそうな強靭な顎に、大きな口の僅かな隙間から見える鋭い牙。架空の世界から飛び出してきたような風貌からは全ての生物を震え上がらせるような威厳を感じられる。

そんな生物が上空を飛んでいった。


そんな生物を初めて見て、若干の感動を覚えた。


だって仕方ないじゃん。男の子なんだもん。ドラゴンと言えば男子が一回は憧れを抱いたことのある生物だろう。俺もその一人だ。


と、興奮の余韻に浸っていると


目の前にあった茂みから普通より少し大きめのウサギが出てきた、それもツノ付きの。


あっちの世界ではツノが生えているウサギなんて見たことがない。それこそ趣味で読んでいたファンタジー系のラノベ以外で。


ここまで来て、一つの可能性を思い付いた。


「ここ、もしかして異世界ってやつ?」


いや、有り得ないことだと思っている。だけど、目の前で起こっていることは全てあっちの世界では有り得ないことだ。信じる以外の道はないだろう。


地球という惑星に生まれて16年。どうやら異世界に来たらしい。

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