第1話
「さて、どうしようかね?」
先ほどは取り乱してしまったが、大分落ち着いた。
とりあえず、 辺りを把握するために2~3キロほど歩いて山に登り始めた。そこで分かったことがある。
「この木の実変な形してんな~」
そう、明らかに地球のものとは違う木の実や動植物が存在しているのだ。
植物だと、色が半分で分かれている木の実や、動いているキノコ、根っこを動かして歩いている木などがいて、動物では、羽が生えているリスや鹿、ツノが生えている馬などがいた。
そのまましばらく歩いていると近くに川が流れていた。
一旦、ここまでで分かった情報を整理するのと休憩するために近くにあった大きな岩に腰を下ろした。
「この世界にはあっちの世界にはでは見馴れないものばっかりで歩いてて飽きないな。」
と 、そんな事を考えていると__
「ぐぅぅぅ」
不意にお腹の音がなった。
「そういえば、放課後遊んでて解散間際に飛ばされたから夕飯まだ食ってねぇや。何かここら辺に食べられるものあるかな?」
幸い休んでいるとこは川の近くで、川魚と思われるものは見つけられた。
「生で魚を食うのはちょっと…」
食えるかも分からない魚を食うのはリスクが高すぎる。
「これを食うのは最終手段だな。ちょっと他に食えそうな物がないか探してくるか~」
と言って瑛斗は歩き始めた。
ーーーーーーーーーーーー
「よし、こんなもんか。」
しばらく歩き回って食べれそうなものをとりあえず片っ端から全部持ってきた。
ここら辺には、見た目は松茸で色は白いキノコと半分で綺麗に色が分かれている小さいリンゴみたいなものが沢山生えていた。
「リンゴみたいなやつは食べれそうだな。見た目はちょっとアレだけど。このキノコも大丈夫そうだな。さっきツノ付きウサギが食べてたし。ただ問題は…」
そう言って向けた視線の先には、デカイ鶏みたいな動物が置いてあった。大きさはゴールデンレトリバーくらいで、くちばしが枝切りバサミの刃ぐらいある。
そして目を引くのは足と尾?の様なところだった。足には馬やヤギ特有のひづめみたいなものがあった。そして、尾の様なものは蛇だった。もう一度言おう。蛇だった。訳が分からないので考えるのを止めた。
「さっき歩いていたら10メートルくらい先で木にぶつかって倒れて動かなくなったんだよな~。これ食えるのかね?」
もしこいつが食べられるのであれば、当分食料には困らなくなる。
「とりあえず血抜き?をやらないといけないんだっけ。」
そういって近くにあった石を拾って他の石に叩きつけて、割れた破片を拾いナイフ代わりにする。
こういった知識は昔、サバイバルに憧れていた時に自分のお小遣いを使って本を買って読んだり、You○ubeで動画を調べてよく見ていた。
「懐かしいな~。あのときは結局やるの面倒くさくなって止めたんだよな~。」
そんな事を呟きながら、この鶏モドキの下処理を続ける。川の水である程度血や汚れを落とし、切り分けていく。その後に拾ってきた枝や枯れ葉で火をおこして、採ってきた食材を調理し始めた。
「肉とキノコを焼いてる間にさっきの木の実食べてみるか。」
置いてある木の実を手に取って鼻に近づける。木の実からは変な匂いなどはしない。むしろ、果物特有の仄かに甘い匂いがする。
「割ってみるか~…って うおっ‼」
木の実を割ろうとして、指を入れた瞬間_
ブワッッ
と甘い匂いが一気に解き放たれた。
お腹が空いていたからか我慢できず、かぶりつこうとした。
それと同時で…
ガサガサッ
と、川を挟んだ向こうから何かが茂みの中で"何か"が動いた。
「な、何だ⁉」
思わず持っていた木の実を投げ捨てて、鶏モドキの解体に使った石のナイフを手に構え、警戒する。自分の中で緊張が走った。
しかし、しばらく経ってもその"何か"が出てくることはなかった。
なので、その隙に少し離れたところにある大きな木の影に隠れた。もし"何か"が危険な動物で自分の身に危害が加えられる可能性があるのであれば、少しでも逃げられるチャンスを作るためだ。
木の影に隠れてすぐに、茂みからヌッとその"何か"が出てきた。
「っ⁉なんッだよアレ⁉」
茂みから出てきた動物を見て驚愕のあまり呼吸を忘れ、一筋の汗が流れてきた。
体長8メートルはあろう巨体。どこか神秘的なものを感じさせる真っ白な体毛に所々こびりついている血液。目が合っただけで相手を竦み上がらせそうな鋭い水色の目。自分の腕より5倍くらい太い頑丈そうな足。
そう。なんと、茂みからは狼が出てきたのだ。
しかしよく見ると、足を怪我しているように見えた。何かと戦った後なんだろうか。
その狼は何かを探しているかの様に俺がさっきいた場所に近づいていき、まだ焼いていなかった鶏モドキの肉をくわえて茂みの中に消えていった。
「…ぷはッ‼何だアレ⁉死ぬかと思った!」
いなくなったのを確認して、木の影から出た。
「あんなのと目が合った時には人生の終わりを覚悟しそうだな。」
そんな事を呟きながらさっきの木の実を食べる。
すると、何かが口から入ってきた感覚があった。
思わず口から木の実を離す。
「何だ今の?」
そして木の実を飲み込んだ瞬間、体の中で入ってきた何かが広がったのを感じた。
「これってもしかして魔力ってやつ?そういえば、なんか最近読んだラノベにこういうシーンあったな。まあいいや、早く食べちまおう。」
そう言って食事を再開した。
ーーーーーーーーーーーーーーー
「さて、ご飯も食べたことだしそろそろ動くか。」
ずっと同じ場所にいるのも危ない気がするので、そろそろ移動しておきたい。
「さっきの狼も気になるんだよな~。ちょっと見に行ってみるか。どうしても気になるんだよな~」
危険って事は分かってる。だが、どこからともなく溢れてくる好奇心には勝てなかった。
「えーっと。確か狼が向かっていったのはこの辺りだっけ?」
狼が出てきた茂みを掻き分けて進んでいくと、ちょっとした崖に空いていた洞穴の前でさっきの鶏モドキの骨らしきものが落ちていた。
それを見て、もう近くにいるかもしれないと思うと緊張してきた。
「もう少し近づいて中を覗いてみるか。」
洞穴に近づいて中をちょっとだけ覗いて見ると、
人が中で倒れていた。
「大丈夫か!?」
そう言って近づこうとしたその刹那_
「何者だ‼」
急に倒れていた人が起き上がり、こっちの手を掴み、押し倒してきた。
「しつこいな人間。いい加減殺すぞ…ってえ?」
その人はこっちを見て目を見開いていた。
「痛てて…何だ急に…って女の子?」
掴んできた人はよく見たら女の子だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます