秀でるもの

バブみ道日丿宮組

お題:運命の決別 制限時間:15分

秀でるもの

「これで最後だから」

 実験器具を外したその後で拘束した男に告げる。

 口は布で縛ってるし、目はタオルで塞いでる。もちろん両手足は縛られてる。許されてるのは鼻からの呼吸。あるとして、排便を垂れ流すことだろうか。

「あなたはラインを超えることができた。超えるということはつまり、人とは違った存在になったといえる。それはいけないことだ」

 世界に混沌を与えるのは、人間の進化だ。第六感であったり、超能力であったり、普通の人が使えないものが進化に値する。

 今回、殺風景な部屋の中でうずくまる男は、心を読む能力を持ってた。

 だから、私が声をかけるまでもなく、何をされるか理解してる。

「能力はいつ発動されるのか、また強化されるのか。いろいろな方法を試してきた。あなたは何も変わらなかった。心を読むというだけで、心の改変を行ったりする特殊なものは見に付かなかった」

 ファイルに収められたレポートを読む。レポートを読むのは何回もあった。初段階、確認、パターン1、パターン5など様々なデータをとったと。

 今回のレポートには成長の見込みなしと書かれてる。そして不良品とも強調してあった。

「あなたはデータ局より廃棄されることになります。無事外に出ることもできません。新しい世代のための精子を出し続ける肉体となります。相手がいることもあるし、精子だけを回収されることもあります」

 もぞもぞと男が動いた。

 何かを言いたいらしいが、会話は許可されてない。

 こちらに心を読む能力があれば、テレパシーのような形で会話ができるかもしれないが、私は一般研究者。そんなことができるわけじゃない。

「今度あなたに会うときは、実験ポッドか、繁殖場になるでしょう。お疲れさまでした」

 そういい、彼の目を覆ったタオルをとり、その顔をみる。

 よく見た顔だった。

 高校生の同級生。よくいじめてきた相手。悪口を言われた(心)という名目で何度もいじめを受けた。

 このとき、どうするのかはもう決めてた。

 なにせ就職できたところは、研究所。サンプルを回収するのは当然だった。

 何ヶ月もまたずに、同級生は確保された。

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