王族達

第31話 王宮への招待

「国王陛下って?そんな簡単に会えるものなの」

「平民なら無理だな。まぁ、お貴族様でも難しいんだが」

「じゃあ、なんで?」


 ギルマス・スレインさんが語る理由は3つ。


 1つ。アイラが国の豊穣をもたらす『聖獣使い』だと認識されている事。

 2つ。庶子とは言え、私が国王派の顔役とも言えるサイモン公爵家の娘だという事。

 3つ。私の5歳という年齢が、陛下の嫡男であるロラン王子の6歳と適齢である事。


 …3つ目の理由。

 私のスローライフを完全にぶっ壊すよね?

「家名捨てたのに」

「そういう訳にいかなくなったって事だ」


 母はメイドなんだよ?

 でも父ニコライ=サイモン公爵が1度は実子と認め養育しているのは貴族は元より王宮も知っているから。


 改めて、ギルドカードを見てみる。


 名前:アイラ=サイモン

 年齢:5

 ランク:C

 才能スキル:聖獣使い


 隠蔽が無くなってる。

「クローズド」

 うん、変わらない。何てこった。

 神様も、私の事、隠す必要無しって判断したんだ。


「お父様は何て思ってるんだろ」

「まぁ、王家の意向には逆らわんだろ。流石に」


 国王派の重鎮であるお父様ニコライが、国王の命に叛くなんて事になれば、話が拗れてとんでもない状況になるらしい。

 いや、話は分かるよ。

 見た目は兎も角、中身は大人、短大生なんだから。スレインさんの話は幼女に呑み込みやすくしてくれていて。気持ちはわかるけどね。


 どっちにしろ、これでお兄様ポールの望んだ私の家名復帰は成立した訳だ。

 私が公爵令嬢じゃないと、そもそも王家の招聘も成り立たないし。


「一応、嬢ちゃんが納得してくれての話にはなってるんだが」


 つまり『聖獣使い』たる私の機嫌を損ねるのは避けたいって事だ。


「身も蓋も無いが正解だな」

「でも、行かないとお父様は勿論、此処の伯爵様にもご迷惑だよね」

「そりゃ、まぁ、そうなんだが」


 はなっから選択肢は無い。

 招聘に応じる。この一択のみ。


「いつでも応じます。伯爵様にも王宮へも、そうお伝え下さい」

「いいのか?」

「まだ駄々をこねる時じゃ無いですよね?」


 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆


「ほう。其方の娘御は招聘に応じたか」

「御意」


 王宮への報告。

 シャトナー伯はニコライに筋を通してくれた。此方から王宮へ、アイラの動向を報告する様連絡をいれてくれおった。


「1度は捨てた身故、其方ニコライを恨むやもしれぬ。そう言うておったようだが」

「有り難い事に私はまだ、あの娘の父でいられる様です」


 シャトナー伯からの知らせでは、アイラは儂と伯の立場を気にしておる様だとの事。

 王宮からの招聘。

 『聖獣使い』としての実力は色々聞き及んでおる。その気になれば儂や王家の干渉等蹴散らす事も可能であろう。


「事を荒立てる事は好まぬようだな。ならばこそ我等もあの娘の意、尊重せねば」

「痛み入ります、陛下」

「さて。何処迄呑んでくれるかのぅ」


 此方の意はアイラに伝えてある。


 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆


『儂の意、当家、全て考慮する必要能わず。王家も同様』


 お父様からの伝言。

 謝罪と、今更儂を父と思う事等無用の意が記されていて。


 ピィー『潔いじゃない』

 クヮアー『それに謝罪が先にある』

 ガォオオーン『それな』


「家名戻ってるんだよ。それに」


 サイモン公爵家から来ているのはお父様ニコライの手紙だけじゃない。お兄様ポールお姉様リディア、そしてお継母様フェリア


 お兄様達はこのヒガンザタンサラス迄会いに来られたから、今回の招聘をある意味喜んでる。


 そしてお継母様おかあさま

 メイドの子である私にすら淑女教育は勿論、慈愛の籠った養育をなさってくれた。何度、優しい子守唄で寝かしつけられた事か。

 そう。乳母だけでなく、自身で抱き上げてくれて。あの慈愛の微笑みは忘れる事等出来ない。


 元のアイラの記憶。

 捨てられて死んだアイラ=サイモンは、それでも家族への恨み言を何一つ残していない。その身を転生体とした私に、楽しい家庭の記憶しか引き継がなかったの。


 そのアイラの心を受け継いだからこそ、私は家名を名乗らなかったのだから。


「でも、今なら堂々と言える訳だ。私はアイラ=サイモンだって」

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