第30話 我が道を行けた…と思った
「神童の秘境」だって。
それもあり、またヒガンザタンサラスの豊作が続いているのもあって、私が此処に居る事は王国中に知れ渡ってるとか。
「コッチは助かるんだけどなぁ。お前さん、ホントに良かったのか?」
「えー?」
ギルドの一室。
私の相手?をしてくれてるのはギルドマスター・スレインさんと人気受付嬢のレーナさん。
「私に出て行って欲しい?うん、まぁ、トラブル持って来る厄介者って自覚はあるけど」
「ギルマス?」
「おーい、その歳でスレてくれるなよ」
困り顔のスレインさんと、ケラケラ笑う私とレーナさん。
今、私にはキィちゃんの幻惑魔法がかかってる。髪や瞳の色は勿論、顔付きだって変わってる。歳や背格好も変えて欲しかったけど、そうなると幻惑魔法じゃなくて変身魔法の領分らしい。
なんか、色々面倒くさい事になるんだとか。
キィちゃんが言うから、そうなんだろ。
まぁ、4聖神獣のかける魔法だから、ただの幻惑とは一味違う。私を知る者、私が打ち解けている者には効かない様になってるとか。
だからギルドマスター・スレインさんやレーナさん、門番のオジサンに肉屋のオバチャン、屋台のオジサン。あれ?割と多いわ?
どっちにしろ、私に悪意を持つ者には隠蔽に近い幻惑となるみたいで。
で、スレインさんが聞いてきたのは、私がこのヒガンザタンサラスから動かない事への本音。スチュワート辺境伯は親戚筋だし、そこへの移動は
せっかく馴染みの店とか出来たから。
つまりは、ただのものグサなんだよね。
引っ越しって、何かと面倒じゃん。
まぁ、辺境伯領の土地が痩せているのは水の手不足も関係していて。だからキィちゃんがちょい住み難い場所でもある理由で。
また
皆は「何処でも一緒。気にする事ないよー!」って言ってくれたけど、わざわざ難儀なトコへ引っ越す必要ないよね。
「処で、何の用?」
「あ、聞きたい事があったんだ。その、ダッカード侯爵領の事なんだが…、何した?」
「何も?あ、そう言えば、何か、お館のお庭がグチャグチャになったって?」
「そこに『穀倉地帯が、こうならなきゃいいね』等書かれた手紙が有ったって聞くが?」
「そうなんだぁー」
「……………」
私も悩んだんだよ。その、仕返し…、って言うか、警告って言うか。
侯爵領の小麦畑は、ギリ領内を賄える程度の収穫らしい。この辺りはコロの見立て。大地の聖獣は、大地から得る収穫物を大凡把握出来る。だから1回の不作で、領がどれ程困窮するか割り出せる訳で。
実際にやったら、私は民を不幸たらしめる魔王みたいになる。出来る訳無い。でも、自慢の庭園をメチャクチャにされた侯爵は、これが穀倉地帯だとしたらと、それ位の想像は出来たみたいで。
それに、コッチが求めたのは「手を引く」事。謝罪や賠償を求めてないし。
と、言う訳で、最近は実に静かな日々を過ごしていたんだけど。
「それと、もう一つ。実はな。お前さんを王宮に招待したいって来てるんだよ」
「はい?」
「国王陛下が会いたがっておられるんだよ」
…スローライフへの道のりは、マジ遠いわ。
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