第9話 あの子は神か、魔か?

 登録完了。

 アイラは、これで晴れて冒険者!


 ギルドカードを作って貰いました。


 カードは、神の御技とも言える魔導具で作る。

 どう見てもプラチナ製に見えるカード。

 そして、とある水晶に血を1滴垂らすと、水晶が輝いて、まるで熱転写の様にカードに色んな情報が転記される。神の御技だから正確且つ偽造不可能。表示に嘘偽り無し。


 つまり、秘密丸わかり…


 名前: アイラ

 年齢: 5

 ランク: G

 才能スキル: 〇〇使〇


 じゃ無かった。これはコロ達じゃなくて神様だよね。


「え?才能スキルが、文字化けしてる?」

「そうか。何か珍しいものなんだ。だから判定晶石に反応しなかったんだね」


 ピンときた。

 ギルドマスター、スレインさんは私の実情を把握してる。


 文字化けなんておかしい、とは思うだろう。

 でも、ここから判定晶石云々まで考え付くとは思えない。


 だとすると、この役人のオジサンも?


 どうする?アイラ。

 えーい!出たとこ勝負‼︎


 何も触れないとこ見ると、多分ギルマスやオジサンは私の素性、スルーする事にしたんだと思う。とりあえず乗っかる。甘える。


 バレてニッチも察知もいかなくなったらまた、その時に考えよー。


 なので、私はギルドカードを受け取ると、にへら~って笑って終わらそうとして…。

「アイラちゃん。この素材、キレイだから高品質物として上乗せ、小銀貨2枚で引き取るから」


 カナとキィちゃんの作業に感謝。

 多分、相場の何倍もの引取価格になってる。


 銀貨を受け取ると、

「まだ、何かお話?」

「うーん。いや、いいよ。でも、アイラちゃん。街に住む事、考えていて欲しいんだ」


 ギルマス・スレインさんが言いにくそうに問い掛けてくる。


 何故だろ?あの沼地に住むの、マズいのかな?


 首を傾げつつ、私はギルドを出た。

 そのまま市場に行き、食料を適当に買い込む。


「あ、その、アイラちゃん。その、オジサンは怒ったんじゃなくて…」

 街の入り口にて、門番さんが申し訳なさそうに言ってくる。私は被りを振ると、

「お仕事、ご苦労様です」

 笑顔で労い、街を出た。


 ある程度街から離れた所でコロを呼ぶ。


 ガォオオーン『お待たせ~!アイラ、帰ろ』


 コロの背に乗る。何か見えない力に包まれて私は守られる。


 ビュン!


 コロの疾走はバイクなんて目じゃ無い!

 爽快感を感じつつ、私達は沼地へと帰った。


 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★


「あれだ。あの時の狼だ」


 街から離れる事、数分。

 子供の足だ。撒かれる事も離される事も無いとは思っていたが。

 門番の目が届かなくなった丘の葛折。

 あの子は、大きな狼を呼び出した。


「成る程。フォルトさんが見たのはあれですか。〇〇使〇…。魔物…という事なのか?そんな才能スキルが存在するのか?」

「わからん。だが、あの子の才能スキルは常識には無いもののようですね。それに、私はあれ以外にも大きな亀を見ている」

「ギルドでは肩に紅い小鳥がいたらしい。あれ等が全て魔物だというのなら、一体何体の魔物を使役しているのか?あんな小さな子が…。あの子は神か、魔…ではないだろうが」

「言動から見るに魔は無さそうですね、ギルドマスター。どちらにしても様子見しかないのですが」


 確かに。

 アイラちゃんの表情、言動。

 長年、色んな冒険者を見ているスレインとしても、あの子は魔の者にはとても思えない。とは言え、


「おそらく、魔物と暮しているから街に住めないのだと思う」


 その事を知られたら街はパニックになる。


 倒すか、喰われるか。

 本来、魔物と人は相容れない存在なのだが。


 アイラちゃん。

 君を保護すると決めた事は間違いではない筈だ。

 

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