涙雨の空

秘密咲 

第1話 五月雨模様


誰もが一度は青春時代に淡い心を抱くものです。それは、淡い恋心、あるいは、儚い夢心、はたまた、拙い出来心。恋愛、進学、友人関係。その一つ一つが大切な思い出になる事は間違いありません。私は私の人生が「どうか幸せなものでありますように」そう願うだけです。


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ぴぴぴ、ぴぴぴ、ぴぴぴ。スマホのアラームが鳴る。カーテン越しに鬱陶しいほどの朝日がさしてくる。気持ちがのらない朝は誰もが辛いであろう。まだ寝ていたいと言う脳を叩き起こし、なんとか右腕でアラームを止める。体を起こし時刻を確認した。朝6時。他の学生はまだ寝ている時間かもしれないが私は学校が遠いので早めに起きないといけない。顔を洗い、母が作り置きしておいた朝食を冷蔵庫から出す。母は会社のお偉いさんらしく、毎日早起きして何処かへ行ってしまう。仕事についてはあまり話してくれない。父はというと仕事で単身赴任している。物心がついたときには父母共に忙しく、あまり思い出になる事がなかった。朝食を食べ終わり、食器を洗い片付け終わったら、身支度をして学校へ向かう。

「いってきます。」

誰もいない無駄に広い家に向けて、私は言った。学校へは自転車で30分程で着く。途中辛い坂道が数本あるが、体力づくりだと思って登る。学校は嫌いではない。友達はいるし、話していて楽しい。教師はゴミで嫌いな奴もいるが、まあ目を瞑るとしよう。学校へは一番に着く。学校に着いて初めにやる事は今日の授業の確認だ。歴史系の授業や、古典がある日はちょっぴり重い気持ちになる。今日はどちらも無い。友達が来るまでは適当に過ごす。スマホをいじったり、小テストの勉強したり、睡眠を取ったり、日によってやる事は違う。友達が来るのは大体30分後。友達が来てからは他愛も無い雑談をする。そんな事をしていると、あっという間に登校時間の八時半となる。先について朝のショートホームルームを終わらせたら、一時間目の準備だ。一時間目は数学。できるが、好きな教科ではない。先生が黒板に書いた事を淡々と繰り返すだけ。これは社会に出て何になるのかと考えたことは、はかりきれないほどある。一時間目の授業が終わると十分の休み時間だ。次の時間の準備をして、友達と喋る。それの繰り返し。昼休みは友達と昼食をとる。学食に行き、お気に入りのラーメンを注文。学食ってなんであんなに安いのか、頼もしすぎる。学生の味方である。

午後の授業は特別辛い。勝手に落ちる瞼をなんとかこじ開けながら授業をうける。自分でノートに書いた字が読めないなんて事はざらである。死ぬ気で受けた午後の授業が終われば、気分は良い。早々に友達に別れを告げて足早に家に帰る。家に帰ってやることもないが、学校よりかは家の方が落ち着く。朝に通った道と全く同じところを帰る。この辺りはめぼしいものが何も無いため、気になる店などもない。家に着き、庭に自転車を止める。

「ただいま」

誰もいない無駄に広い家に声を放つ。当然、返事はない。何故こんな事をしているのか、わたしにも分からない。家に帰ってまずは手洗いうがいをする。世界ではウイルスが流行っていてとても大変らしい。病気は怖い。さまざまな事が出来なくなる。制服を脱ぎ、部屋着に着替えたら少しだけゆっくりとする。今日の出来事を振り返る。特に変な事はなかった。いつも通りの日常だ。夕方の五時を回った頃、夕食づくりに取り掛かる。今日は鍋の予定だ。鍋はすぐできるし、美味い。これほど画期的な料理はない。三十分程でつくり終え、風呂掃除をする。ささっと風呂を洗い、沸かし、入る。お風呂はとても気持ちがいい。体が温まる感じは日々の疲れが癒えるような気がする。お風呂から上がって、髪を乾かしたら、先程の鍋を温める。ぐつぐつと音が聞こえてきたら蓋を開けてお皿によそう。ふーふーと息をかけ、舌を火傷しないように気をつける。ゆっくりと鍋を楽しみ、残りを冷蔵庫に入れる。母が帰ってきたら食べてくれるだろうから。皿を片付けたら自分の時間だ。最近ハマっているゲームをする。ネットでできた友達と楽しく会話をしながらするゲームは素晴らしい。時刻は十一時をまわり、ネッ友におやすみと言った後、電気を消して布団に入る。そこで今日も同じ考え事をする。

(今日もわからなかった。もう時間がないはず。早くしないと。)


そう、これは私と私をめぐる、私の人生を一冊の本にしていく物語。これはその1ページのお話である。

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涙雨の空 秘密咲  @Kabikira

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