時計回りの。

@Milky_delusion

Side-A

 暗く重い空気の中に、その扉は在る。

 扉そのものが闇を封じ込めた陰鬱な色をしていて、中にいる今のその人にはうってつけな気がした。

 もしも左目に白を纏った彼が此処にいたのなら、反対側の右の目尻を愉快そうに歪めて笑ってみせるんだろう。そしてきっと私と同じようなことを云う。「中也にはお誂え向きの場所だ」と。


「気をつけろ。言われずとも今の奴の危険性は判っているだろうが」

 落下の重力に身を任せた愚かな彼でも、破壊のみを目的に重力を操るようになった愚かな彼でもない声が、私の脳に届いた。

「時間は?」

「ニ分」

 十分だ。

 寧ろニ分ならば許容されるという事実に不快感さえ抱く。

 言葉を告げる気にもならず視線だけで扉を開けるよう伝えると、目の前の男が爪先を強張らせた。此処にいるのはそれなりの訓練を受けている者たちだろうに、男の爪先だけは本能そのままに逃げ出したい表情を浮かべていた。

 なんて滑稽なのだろう。いっそのこと爪先だけじゃなく全身で泣き喚かせてやろうかなんて面白い案も浮かんだが、どうしたって扉の向こうの彼──中原中也について以上に面白くならないと気付いて途端に興味を捨てた。


 ガシャン、と大袈裟な重低音がして扉が開く。次にジャラ、とポートマフィアの構成員ならば聞き慣れている者も多い金属音。

「鎖を繋がれる側の気分は?」

「・・・・・・最高だ」

「犬の君には相応の姿だ、って太宰さんなら云うんでしょうね」

「太宰? 誰のことだ」

 驚きはなかった。以前にここを訪れた元ポートマフィアの中島敦から様子は聞いていたからだ。それに、太宰治という人間を中原中也がどうしたかったのかなんてことは、私だって知り尽くしている。

「七年だぞ……その日を楽しみにして……」

 ほとんど悪夢に魘される少年のように吐き出された言葉を、私は冷たく遮った。

「太宰さんに拘るならそれはそれで結構。だけどポートマフィアの利益にならないことはすべきじゃないし、それどころか中也が生み出したのは損失。自覚はあると思うけどね」

 急速に殺意の色に染まっていく視線が私に向けられて、一瞬ゾッとする感覚に襲われた。恐怖などではなく、この程度の挑発や嫌味に過剰に反応した中也自身にゾッとしたのだ。

「利益だ損失だ、誰に向かって云ってんだ? 今のポートマフィアの首領は俺だぞ」

「鎖に繋がれた組織の長? そんなのポートマフィアでなくとも御免でしょうに」

 鼻で笑ってやってから、縛り付けられた中也に視線を合わせてしゃがみこむ。

 コンマ数秒と置かずに鎖がガチャガチャと酷く耳障りな音を奏でた。抜け出すことなど不可能、そう理解していながらも私へ攻撃しようとする今の中也は暴力性を持った危険異能者という報告そのままだ。対異能力者用の専門拘束具がなければ、私は今この施設の敷地から吹っ飛ぶどころかヨコハマの地を彼方遠くに見ることになっていただろう。

 そんな実感があるにも関わらず、私は中也を恐いとは思わなかった。それよりも。

「同情するわ」

「あァ?」

「同情するって云ったの」

「それで満足かよ?」

「笑ってやる心算だったんだけど、実際に目の当たりにしたら笑えもしない。あまりに凡庸。こっちが聞きたいくらい。これで満足?」

 互いに口を開かぬまま睨み合う。いや、正確にはそこに悪意はなくて只ひたすらに相手の真意を探ろうとしていただけだ。いや、それすらも違うのかもしれない。知りたかったのは互いに自分自身の真意だったのかもしれない。

「首領」

 呼び掛けて、先ほど暴れたせいで食い込みを深くした鎖の位置を直してやる。

 裂けた服から覗く素肌に、新しく血が滲んでいた。

 拘束されている事実に変わりはないが必要以上に痛みを感じる必要はない、などという自分の甘い思考に呆れてしまう。もしポートマフィアという組織のために従順に動く駒が私なら、眼前に鎮座する首領キングを排することも選択肢だ。味方の駒であろうと敵の駒であろうとまともなルールは無いに等しい、そういう世界なのだから。

 だけど私にはできない。異能が全く使えず、ただ地球に存在する重力に従うだけの今の中也を切り捨てるのは簡単。それでも、できない。

「バイクで疾走しようが、逆さになろうが、どんな激戦の中でも重力は貴方の操る手綱の先に在った。忠実な部下のように。だから手綱が切れてしまってからはこの世界に溶け込んだ。・・・・・・私みたいだと思ったの。幻だったけどね」

 手綱が切れた途端に如何することもできなくなって、そして座り込んでからようやく気付いた。この世には最初から重力が存在しているし、最初から私は如何することもできていなかった。中也が手綱を離したとか、手綱が切れたとか、そんな話ではない。私が勝手に幻を見ていただけだ。

「中也と太宰さんも同じでしょう?」

 返事をしないその人にもう一度呼びかける。

「首領」

 やはり返事はなかったが、視線だけは私に向けられていた。

 首領としての俺を鼻で笑ったくせにそう呼ぶのか、とでも言いたげに。

「・・・・・・先代首領があんなことになって、貴方は暴走した。だけど、そのせいで私たちにも同じ景色を見せていることは判っていますか?」

 中原中也という人間はそれほど愚かではない。判っているいないではなく、正確には目をそらしていると云うべきかもしれない。

 正直なところ、彼が首領になったとて先代ほどポートマフィアに利益をもたらすことはないだろう。それは能力や手腕以前に、目的意識が先代のそれを上回ることは誰であっても不可能だからだ。

 まるで何かに呪われたように仕事をこなして、それでいて時に遠くへ思いを馳せていた先代──太宰さんを思い出す。遠くへ思いを馳せていたなんて少々浪漫のあるそれに聞こえるかもしれないが、彼の場合は違った。別の世界を見て、別の世界で生きて、別の世界を嘆いていた。そう見えた。

 今となっては私の抱いたそんな感覚の正体も謎のままだけれど。

「・・・・・・探偵社を潰す」

 私からの質問などなかったように中也は云った。

 ただ、敦くんから話は聞いていたうえ、私にも恐らくそう云うのだろうと思っていたから驚きはない。

「何故?」

 ひとまずはただ無意味に形だけの返答をしてみる。

「巫山戯てるだろ手前」

 私の心の中を見透かして呆れたように呟く彼は、今日初めて中也らしい顔をしている気がした。

「先代首領が死んだ。その原因の一端を相手にするのに特別に理由が要るのか?」

 なんの含みもなく驚くほど純粋に抗争の前触れを告げる中也にため息が出るが、そろそろ頃合いではあるだろう。

「それより、いい加減ここから出せ」

「・・・・・・人の苦労を一瞬で無駄にするね」

 この空間に溶け消えたため息を追随するように、私は再び深く息を吐きだすしかなかった。うんざりだ。

 数秒と間を置かず、十数人の男が武器を構えて部屋に流れ込んでくる。中也監視のために部屋に設置されている防犯カメラは音だって鮮明に拾う代物。だからこそ私はこれまで直接的にそんな会話はしなかったというのに。これで何もかも水の泡だ。

「ちゃっちゃとやっちまえ。想定内だろ」

「当たり前だけど主戦力はそっちだからね」

「云われずとも借りは返す」

「それは良かった」

 そんな会話に警戒を強めた男たちが武器を構え直す。そのうち一人が私の眉間に銃口を突き付けて云う。

「逃亡幇助の疑いが出た以上、見逃すわけにはいかない」

「私を捕らえようが撃とうが構わないから、一つだけ教えてくれない?」

「なんだ」

「貴方の異能力は何? 危険な異能者を監禁するこの施設の戦闘員なら、それ相応の人員が選抜されているはず。どれだけ魅力的な力があるの?」

「それを聞いてどうする」

「どうもしないけど。興味があるだけ」

 興味があるのは本当だ。ただ、あまりにお決まりの返答がなされたことにはがっかりした。期待をしていたわけではないが、もう少し優秀な返答が寄越されるかと思っていたのだ。どうやら私が想像していたよりずっとお粗末な戦闘員らしい。

「教える必要はない」

「それは残念」

 この男は、もう間もなく自分が死出の旅に赴くことを知らない。

 会話をしている隙に、私はそっと爪先を動かして相手の靴に触れていた。

 扉の前にいた男の爪先が恐れという感情に支配された遊具だったとすれば、私の爪先は今、相手の異能を支配するための道具だ。

 中也が動けないことや私に銃を突き付けている状況を理由に、余裕があるのだろう。事実、今の状況を第三者が見たのなら「武器を手にした精鋭部隊に囲まれる絶体絶命の女が一人」といったところか。笑える。私は最初から暴れるつもりなんてないのに。

「私は、ね──」

 誰にも聞こえぬほどの声で呟く。男の異能が中途半端なものでなくて良かった、そんな感想を抱きながら。

 途端、離れたところにいる男の足元に数字の群が現れた。その数字が男を中心にして集まっていき、消える。

「なんだ!? 俺は何も……」

 紛れもなく、それは私に銃を突きつけたままの男の異能力だ。

 もう一度云うが、暴れるのは私ではない。暴れるとするなら、それは彼等自身の異能力。

「素敵な異能をお持ちのようで」

「相手の異能を操作する能力者か!?」

「残念、その答えじゃ不正解。私の異能は触れた相手の異能情報を得て、自分のものとして使える能力。その間、本来の持ち主は異能を使えなくなる。便利でしょう? もちろん、いろいろと条件や欠点もあるけどね」

「異能奪掠能力か!」

「奪掠じゃなくて借用と云ってくれる? 一時的に貸してもらうだけなんだから」

 私が眉を顰めると同時、数字を与えられた男が他の戦闘員を巻き込みながら真横に吹き飛ぶ。中也の能力のように重力そのものやベクトルを操って打撃を与えることまではできないため、どうやら吹き飛んだ男も巻き込まれた戦闘員たちも大した痛手にはなっていないらしい。

「貴様……!」

 男の指が引き金を引く前に、男の手ごと銃を捻り取る。あり得ない方向に指を曲げられた男は、苦悶の声をあげつつもスペアの銃を取り出そうとした。

 だが遅い。

 私はそれより早く、今度は鎖が絡みついた中也の腕に触れる。中也の重力異能が私に一時譲渡されたことを確認してすぐ、思い切り鎖に回し蹴りをした。一瞬で鎖が粉々になり、破片が戦闘員の男に降り注ぐ。限界を超えるほどの重力が圧し掛かって、原型を留めていられなくなった鎖の破片の雨。しばらくは痛みに苦しむだろう。

 鎖の異能制御があくまで鎖で拘束されている者のみにしか効力を発揮しない、つまり外部からの異能攻撃には無防備なものであることは調査済みだった。この施設を管理する構成員たちの異能にまで影響がないようにといった理由からなんだろうが、こちらとしては好都合。

 そうして中也を、本来中也自身の能力である重力操作によって立ち上がらせてやる。中也に限ってまさかこんな拘束で体が鈍っているなんてことはないだろうが、最大限の私の優しさには感謝してほしい。

「さて。あとはよろしく」

 これまで中也が座っていた椅子に入れ替わりで腰かけて、手をヒラヒラと振って見せる。

 それから奪い取った銃で天井に向けて一発撃った。開戦の狼煙だ。

 物凄い剣幕で睨まれたような気がしたが、気のせいだろう。リスクを背負ってこれほど働いたことを慰労されるならばともかく、睨まれるようなことをした覚えはない。

「座ってる暇なんかねえぞ。それにそう云うなら異能を返せ」

「柔弱な私にしばらく異能を貸してやろうという気遣いはないわけ?」

「本当に柔弱ならそのままくたばれ」

「えらく不機嫌だね」

「当たり前だろうが」

 ふと、中也のご機嫌取りをするならば今のうちに『例のもの』を取り返すことぐらいだろうかと思い至る。せっかく腰掛けた椅子が名残惜しいが仕方ない。

「・・・・・・すべきことを思い出したから先に行くよ」

 軽い調子でそう言いながら、こちらに向かってきていた戦闘員二人を蹴って吹き飛ばし、部屋を出る。重力操作込みのひと蹴りは爽快なほど威力を増していた。

「これまで中也の異能を借りた中で最高記録に飛んだかも」

「気が済んだならそろそろ返せ」

「はいはい」

 中也に異能を返して走り出す。少しだけ振り返ったが、これまでとは全く違う雰囲気の部屋がそこにはあった。今ここを支配しているのは地球の重力ではない。絶対的な能力者であり、ポートマフィアの首領であるその人だ。


「止まれ!」

 案の定、廊下にも相当数の戦闘員がいるが所詮は優等生の正統派部隊。

 最初に私に手を伸ばした戦闘員が『統率』の異能力者──視界に捉えている異能力者たちに同じ動きをさせることのできる能力者だったため、私はその力を借用して目の前の部隊全員の動きを止めた。そして持っている銃をこちらに投げさせ、回れ右で来た道を戻らせる。そして、本来のこの異能の持ち主から構成員証を抜き取りながら云った。

「ごめんなさいね、これが必要だから」

 これさえあれば他の部屋への入室などが可能になる。

 私が仕向けたこととはいえ、ほんの少しだけ哀れには思う。武器を投げ捨てて敵前逃亡したあげく、構成員証を奪われるなど。明日には部隊全員厳罰、最悪処刑かもしれない。

 そんなことを思いながら通路を進んでいったところに目的の部屋はあった。

 先ほど手に入れた構成員証を翳すと簡単に扉が解錠する。中に入ると、探していたそれは入口すぐの簡易机にあって開かれたままの黒のアタッシュケースの中で退屈そうにしていた。

「私みたい」

 手に取って呟く。

 自分と何かを重ねて物事を受け取るのは今日初めてではないから、意外とみんなそんなものなのかもしれない。どんな形であれ誰かに、何かに、寄りかかっていなくては生きていられない。太宰さんはきっと、寄りかかるものを見失ってしまったような気がする。あれほどの超人的な頭脳を持った彼の真意など、やはり私には到底考え及ばないが。

 アタッシュケースごと目的のものを手にして部屋の外に出ると、廊下は不気味なほど静かだった。

 既にこちらの動きは施設管理本部にも伝わっているだろうに、増援の気配すらない。

「ここまではただの準備運動ってわけか」

「準備運動になっただけ良かったんじゃない?」

 不意に天井から声がして、天井に向けて返事をする。何も知らない者が見たなら驚きで卒倒しそうな光景だ。

 そして僅か数分ぶりに見るその人の天地が音もなく本来の形に戻った。当然のように隣に並び立った彼との距離感が懐かしく思えて、妙に感傷的な気分に引っ張られる。

「・・・・・・当たり前だけど全然変わらないね」

「どういう意味だコラ」

「差し入れに牛乳でも持ってくるべきだったかなと思って」

「いい加減にしねえとぶっ飛ばすぞ」

 だが中也にぶっ飛ばされるその前に、私の視界がぐらりと揺れる。

 まずい。もう時間だ。

 なんとか壁に手をついて耐えるが、中也の目は誤魔化せなかった。私を支えるように伸びた腕の優しさとは反対に、責めるような視線が向けられる。

「あの数字の遠隔異能に俺の重力操作、あとは?」

「何の話」

「手前の異能は便利だが万能じゃねえ。他人の異能を自分のものとして使えば当然それなりの負荷がかかる。ただでさえ俺の重力操作に関しては実体──荒覇吐ごと一時的に引き受けることになるってのに、短時間のうちに他の異能を幾つも操ればそりゃそうなる」

 自分でも判りきっていたことだった。こういうところは本当に不便な能力で、中也の荒覇吐だけに関していえば私がまともに操れるようになるまではかなりの時間を要した。通常の異能ならばいざ知らず、中也の異能は特殊なそれだ。今でこそ安定して操れるが、最初の頃はほんの一瞬使うだけで体力を使い果たすか、自分では制御ができなくなり太宰さんに何度も助けてもらった。

「その様子じゃまだ異能を返してねえんだな?」

「さすがに欲張りすぎたかなあ」

一体誰が「危険な異能者を監禁するこの施設の戦闘員なら、それ相応の人員が選抜されているはず」だなんて云ったのだったか。これ幸いと強力な異能ばかりを操って、自分の限界を見誤っては意味がない。

「仕方ない、か。この状況で無力になるのは不本意だけど、これ以上は延滞料金が高くつきそう」

 保有したままだった『統率』の能力を手放す。その瞬間に笑ってしまうほど身体が軽くなって、再びしっかりと自分の足に力を入れた。

「で? 何の異能だったんだよ?」

 私が異能を返すことを躊躇ったことに気付いたのだろう。中也が訊ねる。

「『統率』能力」

 こちらの手中にあった方がずっと有利な異能。その詳しい情報を中也に話せば、合点がいったのか数度頷いた。その表情には幾らか呆れも含まれていたが。

「・・・・・・奪掠の異能、か」

「奪掠じゃなく借用と云って」

 異能特務課などの異能者を秘密裏に管理している組織資料には私の異能は奪掠能力と記してあるらしいのだが、私はその言葉が好きではなかった。明確に如何してと説明しようとすると難しい。ただ、好きではない。

「百歩譲っても、今回奪掠したのはこれだけだから」

 先ほどの部屋からしたアタッシュケースを中也に差し出す。怪訝な顔をしながらもそれを受け取った中也が、中身を見て、それから私を見た。

「すべきこと、ってのはこれか」

「ご不満?」

 その中身を手に取って、本来あるべき場所に戻す。

「・・・・・・なんだよ」

「帽子置き場に帽子がないんじゃ存在意義に関わるでしょう?」

 物騒な言葉が返ってきそうなものなのに、中也は黙ったまま帽子に片手をやって口角を上げた。

 欠落を嘆いて蹲る中也を面白がるのも悪くはないが、私はこちらの方がずっと好きなのだと思う。欠落を笑いながら歩くぐらいの狂気こそが枯淡。

「お礼は?」

「礼? 莫迦だな手前は」

「そりゃどうも」

 大きく一歩を踏み出した中也に続く。

 この先に人の気配を感じたのは私だけではなかったようで、顔を見合わせた。

「私は大して役に立たないと思うので、頼みますよ首領」

「都合よく首領と呼べば許されると思ってんじゃねえぞ。それに本来は手前が首領を守るべき立場だろ」

「本来は、ね。今は適用外では?」

 チッ、と中也の舌打ちが響く。

 此処にいるのは僅か二人のポートマフィア。闇を生きるというそれ以外に、この先のことなんて何も判らない。私はただポートマフィアとしての仕事をするまでだ。


 嘘も真実もないこの世界の何処か中心で、時計が針を進める音が聞こえた気がした。




 <了>


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