金欠
今日は休日。
最近は人に振り回されてばかりなため、気分転換に一人で出かけることにした。
一応露那との約束もあるから露那に「外を散歩してくる」というメールは送ったが、特に返信がなかったため俺は一人自由の身というわけだ。
これで後から露那が何か言ってきたとしても「返信が無かったから…」と言い逃れることができるはずだ。
「つまり俺は今本当に自由だ…」
どうするか…優那ちゃんの配信アーカイブを見るだけで終わらせても良いがそれだといつもと変わらない。
やはり何かいつもと違うことを…
「そうだ」
そう言えば優那ちゃんにスーパーチャットをするためにコンビニに行こうとしとしていたことをすっかりと忘れていた。
俺は試しに自分の財布を覗き見てみる。
そこには三千円と小銭が入っていた。
「…ん〜」
スーパーチャットをするだけなら三千円もあれば十分だが、それにお金を割いてしまうといざ飲み物が欲しいときに自販機で買えなかったり、読みたい本があったとしてもそれを買えなくなってしまう。
詰まるところ…
「金欠だ」
どうにかしてお金を稼ぐ方法をそろそろ探さないとな…試しに誰か身近な人に聞いてみることとしよう。
俺はとりあえず俺の身近で唯一ちゃんと普通の女子高生な秋の瀬にメールを送ってみる。
秋の瀬は友達が多そうだからもしかすると友達と出かけていてこのメールには気づかないかもしれないが、きっと夜ぐらいには返信してくれるだろう。
そう思っていたが、意外と早く既読が付き、すぐに返信してくれた。
『え、お金?何か特別な事情が無いならやっぱりバイトじゃない?』
「やっぱりか…」
高校生が一番手っ取り早く稼げる方法と言われたらおそらくほとんどの人がバイトと答えるのでは無いだろうか。
俺はここで少し疑問に思ったことを聞いてみることにした。
『秋の瀬は何かバイトをしてるのか?』
『うん』
してるのか…まぁそうか。
人間関係が多ければ多いほど出かけたりとかでお金は必要になってくるだろうし、それも必然なのかもしれない。
…ん?今の今までお金が無くても働こうとなんてしなかった俺は…?
『お洋服屋さんで働いてるよ』
俺が下らないことを考えている間に秋の瀬がどんなところで働いているかまで教えてくれた。
…洋服店、確かにイメージ的にはぴったりだ。
「え…!?」
その文章の次に秋の瀬から送られてきたのは、おしゃれな装飾の建物で笑顔の秋の瀬がジーンズの短パンとワッフル生地の白い長袖を着ている格好の写真だった。
…刺激が強い。
『こんな感じのお店』
「こんな感じのって…ほとんど秋の瀬が主体、ん?」
良く見てみると写真の上の方にそのお店の名前が書いてある。
…どう考えてもおまけだろこれは!
…これは究極の問題だ。
ここで秋の瀬に「おしゃれな建物で働いてるんだな〜」と送るかこの写真に写っている秋の瀬について話すか…
あくまでもどんなお店かって論点で話してるのに写真に写ってる秋の瀬に触れるのは不審か…?
でもここで逆に何も言わないのはそれはそれで酷い気がする。
迷いに迷った結果、俺は両方実行することにした。
『おしゃれなお店で働いてるんだな、この写真に写ってる秋の瀬にぴったりだ』
これぞきっと模範解答だな。
そう思い秋の瀬からの返信を待つが…
「あれ…?」
もう三分ほど経っているが返信が無い。
既読はしっかりとついているはずなのに…
…もしかして気持ち悪いと思われて既読無視されてるのか!?
だとしたら選択を誤ったってことなのか…?
そう不安に思っていると、秋の瀬からメッセージが返ってきた。
『そうだね!結構オシャレかも!そうかな…?』
という普通なメールが送られてきた。
…特に不審がったりはしてないのか?
『あぁ、ぴったりだ』
不審がっていないならと俺は本心を送り、そしてまた数分間を空けてから返信が返ってきた。
『ありがと…!』
…うん、おそらくは何も間違えたことはしていないはずだ。
本題に戻ろう、どうにかしてお金を稼がないといけない。
やはりバイトをするのが一番手っ取り早いという結論に至ったな。
他に誰か聞けそうな人…姉さん、に聞くのは俺がお金を稼ぎたい理由の一つでもあるから本末転倒な気もするし、露那…にはそう言えば一年前に似たようなことを言ったことがあるが優那ちゃんみたいなことを言っていたし…
「…優那ちゃんみたい?」
…今更ながら割と露那と優那ちゃんって色々と似てるところが多いよな。
最近は恋愛関係の話が増えてきたからかちょっとずつ優那ちゃんの恋愛観も分かってきたけど、結構露那と似ている気がする。
それともそれが普通なのか…?
「今はそんなことを考えてる場合じゃないか…」
他に頼れそうなのは…
「そうだ!一条!」
…にこんな真面目な相談をするのはなぁ。
…俺は今日一日を求人サイトというものを見て過ごすことにした。
働きたいところが見つからなくてもきっとこの経験は将来に生きるだ……
「…あ!」
俺は求人サイトを見ながら思わず声を上げていた。
「この仕事は…」
俺は俺がやってみたいと思える仕事を早くも発見できた…が。
「まだ募集開始はしていないのか…」
でも募集開始が始まったら、いち早く応募してみよう。
俺はこのことを頭の片隅に置き、また画面をスクロールしていった。
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