私の為に泣いて。
神崎 紗奈
*
色んな事が重なって
もうどうでもよくなっちゃって
何となく、「死のう」と思った。
軽いうつ状態が数ヶ月続いていた私。先日病院で、うつ病と診断された。
大好きな彼氏には散々迷惑をかけていたから、きっともう流石にうんざりされてくる頃だろう。いつ別れを切り出されるのかと毎日不安だった。そんな時ちょっとしたことで彼と喧嘩をした。原因は勿論私。彼はこんなにも毎日私を支えてくれているのに、彼のちょっとした一言に私は突っかかって、彼を怒らせてしまった。謝ろうと思って、帰りに会えないかと言ったが、「今日は用事がある」と断られてしまって、私はそれほどまでに彼を怒らせてしまったんだと思った。
その日の帰り道だ。ふと、「死のう」と思ったのは。もうすべてがどうでもよくて。
唯一の支えだった彼にも見捨てられてしまったら、私はもう生きていけない。
だったら、彼に別れを告げられる前に死んでしまおう。そうすればきっと、優しい彼は一生私を忘れられないはずだ。きっと今日の喧嘩が原因だと、私を自殺に追い込んでしまったという罪悪感に、一生苛まれながら生き続ける。きっとほかの女の子と付き合ったとしても、永遠に私を忘れることはできない。ずっと私の顔がチラつきながら過ごすのだ。大好きな彼を一生苦しめることになるけど、それでもいいと思った。そうまでしても、永遠に私を、私だけを想い続けて欲しかった。そして、私は彼に愛されたまま、死にたかった。彼に想い続けてもらえると思ったまま、愛されていると思ったまま。彼が私を想い続けてくれるなんて、都合のいい思い込みかもしれない。実際そんな保証はどこにもない。…それでも良かった。自分が幸せを感じているうちに、死んでしまいたかった。これから起こるかもしれない不幸が訪れる前に。
家に帰れば、私は真っ先にカッターナイフを取り出した。
こんなもので死ねるのかはわからない。でも、昔何かのドラマで、お風呂場で手首を切って血だらけで死んでいるシーンを見たことがある。きっと、物凄く深く切って水につけておけば、出血多量とかで死ねるんじゃないのか。…わかんないけど。
私は一心不乱に自らの腕を切りつけた。
何度も。何度も。
真っ赤な血がうっすらと滲む。
でもどれも致命傷になるほど深くは切れなくて。
どうしても大好きな彼の顔が浮かんだ。
ここまで育ててきてくれた両親の顔が浮かんだ。
一緒に過ごしてきた姉弟の顔が浮かんだ。
その顔を搔き消すように私は何度も何度も切り続けた。
…でも、ダメだった。
段々手が震えてきて。
死にたいのに死ねない。そんな自分が情けなくて、ただただ涙が出た。
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