極悪非道の剣士の転生先が保育士の為

@caka415

第1話 誰にも負けない力

架空のドラゴンの如く、人間離れした体力と力を持つ彼の名はドラゴン。戦場では、敵とみなすと容赦なく命を奪う。それが例え友人や仲間、家族であっても。


「目の前に出てくる人間は、すべて倒す。戦場の掟のようなものだ。敵と分かった時点で、息の根を1秒でも早く止めること。それが、俺の使命だ。」


得意げに大きな剣を怯える男性に向ける。


「許してください。帰らなければ、私がいないと子供達が。。。」


剣を両手で抱えて怯える男性。


「問答無用!」


怯える男性に剣を振り下ろすドラゴン。


「ぎゃーーー!」

ピクリとも動かなくなる男性。


「次は、どこに隠れているのやら。」


ドラゴンは、体格にも恵まれスピードも速い。彼の素早さは迷いの無さからくるものだ。戦いの中で、敵とみなせば全てを薙ぎ倒す。その中に間違いがあったとしても。



戦いを終え、家に帰るとそこには小さな女の子が泣いている。少し驚きながらも、剣を彼女に向ける。


「なんだ?なぜおまえのような少女が我が家にいるのだ?答えろ!」


「お腹が空いたんだよ。もう、歩けないよ。」


「腹が減ったなら、出て行け。自分の家に帰るんだ。10秒以内に出ていかないなら、斬る!」


大きな剣で、構えに入る。


「やっぱり、ダメだね。君。子供にまでそんなに大きな剣を向けるなんて、怯えすぎだよ。今日君が切り刻んだ人達とおんなじだねぇ。何が怖いの?」


彼女の言葉を一切聞き入れない。


「あと5秒だ。5、4、、、1!!!」


剣を振り下ろすドラゴン。その瞬間、眩い光とともに少女が光り輝く美しい女性になる。


「く!人間ではなかったのだな!化け物め、我が剣に沈め!!!」


彼が斬りかかろうとした時、彼女の目に涙が溢れその涙がドラゴンに降りかかる。


「な、なんだ!!何をした!う!目が、目がぁ!」


彼女が静かに口を開く。


「あなたは、命を奪いすぎた。ずっと戦いの中にいたせいで命の意味、繋がりを忘れてしまったのでしょう。戻りなさい、人間に。」


「俺は、人間だ!くそ!くそ!!う!!なんだ、なんだこの姿は!?」


薄目を開けて窓ガラスに映る自分に驚く。恐ろしいモンスターになっていたのだ。


「なんだ!?なんの妖術だ!やめろ!俺は、こんな姿ではない!違う、ち、ちがう。俺は。」


するとドラゴンの目から涙が溢れ、止まらなくなってしまう。


「な、なんだ。なんだこれは。」


それは、まるで今まで彼が容赦なく斬りすててきた人々の悲しみが一様に集まってくるようだった。


「やめろ、やめてくれ。俺は、誰よりも強いんだ。皆俺の強さを敬い、褒めてくれた。何がいけなかったんだ!」


ドラゴンに近づき、彼の顔を両手で覆う女性。


「誰よりも強い力。誰にも負けない力。本当の強さを、しっかりと学んでいらっしゃい!」


彼女とドラゴンのおでこが付き合わさせた瞬間、光の渦ができ二人がその場からいなくなる。

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