第36話 語られる歴史
登場人物
―ウォーロード/ヌレットナール・ニーグ…PGGのゴースト・ガード、単独行動の青年。
―八目鰻じみた種族…先ライトビーム文明を築いた種族。
計測不能:不明な領域、先ライトビーム文明の避難所
言葉に詰まったウォーロードに対して、ゆっくりと異種族の一個体が語り始めた。
「我々は元々、別の種族によって創造された生物でした。創造主達は我々を、己らの
「我々は創造主達に代わってあの惑星を引き継ぎ、そこで文明を作り上げました。創造主達の作った文明はそこに組み込まれたエネルギー性のウイルスによって砂や岩石、水や大気やその他様々な資源へと変換されて消え去りましたが、それら豊かな資源を使って我々は文明を創造しました。我々は常に、顔もわからない創造主達への独特の感情を忘れる事はありませんでした。彼らが奉じた『創造主達の創造主達』である神々もまた姿を消し、我々のモデルとなったそれら異邦の神々は我々と独特の距離を保ちながら存在していました。我々は彼らが創造した生物ではありませんが、しかし独特の敬意を払い、そうする事で彼らもまた我々に独特の親近感を持っている事を知っていました。
「ですが、結局のところ…結論から言えば我々は傲慢であったのかも知れません。我々は高度な知覚を備えた種族として創造されました。それは異種族との円滑なコミュニケーションを可能にする事を意味しましたが、しかし文明崩壊前の我々は、幾つかの異種族との接触で彼らが破壊的で、野蛮であると考えたのです。我々は単一の星系内で鎖国体制を作り、星系そのものを覆い隠し、そしてそこから出ようとしませんでした。接触を絶ち、種族として己らが円熟したと考えた我々は、人口をコントロールする事にしました。ある時点で我々は新たな個体を生み出す事を完全に辞めました。そしてこれらこそが、今にして思うと傲慢であったのかも知れません。
「あの群れが出現して殺戮が吹き荒れた時代、我々と同じ姿をした異邦の神々はそれでも戦う事を選びました。我々とは直接の繋がりが無いにも関わらず、独特の信仰によって生まれた縁を理由に我々の側に立ちました。通常であれば死ぬ事も老いる事も無い彼らですら一人ずつ倒れ、我々自身もまた、ある種の傲慢の上に立脚した平和性故に戦いを知らぬ身でありましたから、急拵えの軍隊とテクノロジー、付け焼き刃の戦術や戦略では無力そのものでした。傲慢さの結果は大勢の死でした。神々はまだ残っているのでしょうか。それすらわかりません。
「我々は結局のところ、異種族というのはその中身は残虐で好戦的な怪物だと考えていたのです。自らを穢れを知らない無垢な種族だと思い込んだのです。我々自身が他ならぬ、姿もわからない滅んだ異種族によって創造されたものであるにも関わらず、『独自性』『特殊性』に根拠した中心主義に身を任せたのです。その選択が宇宙の何かしらの作用へと繋がり、そして最終的にはあの殺す群れを呼び込んだのだと、我々は終わらない後悔の日々で確信しました。
「ですが我々はあなたを見付けました。安全圏の城塞の外側で、あの狂った恐ろしい殺戮機械に引き摺り込まれながらも、一歩も退かずに戦い続けるあなたの姿を我々は内側から見ていました。あなたが顔も名前も知らない我々のための報復をも視野に入れて戦っていたのは、先程の接触で察知できました。異種族を見下す我々は皮肉にも、そうとは知らない異種族の手でこの日々から抜け出す事ができたのです。我々はやはり過ちを犯したのだと思いますが、あなたは我々に異種族を、己らでは無い他者を信じる事を教えてくれました。というのも結局は、幾ら後悔しようとも、それと異種族を信じるのはまた別問題でしたから」
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