第26話 3Dプリンター

『名状しがたい』注意報――この話は冒頭から文体がけばけばしく、改行が極端に少ない。


登場人物

―ウォーロード/ヌレットナール・ニーグ…PGGのゴースト・ガード、単独行動の青年。

―切断された部位群の基幹、フレースヴェルグ…未知の邪神から切り離され機能が狂った群れの統括器官、本来『ファンシー』なはずの外見表示に異常が生じた四足歩行の怪物。



計測不能:不明な領域


 ウォーロードは恐るべき衝突を繰り出した事でやや優位に立っていた。見ればアーマーの修復が始まり、なおかつシールドも再充填され始めた。悪くない結果であった。うんざするような不浄極まる怪物は大ダメージを受けたし、その上で先程の時点までに召喚していたより下位の一部の群れは文字通り全滅していた。

 この状況を活かす必要があろう。彼は右腕を上に向けて見上げ、ある種のランチャーへと変形させた腕部装甲からイーサーの塊を射出した。それは案の定、天井のように上を覆っている魔法陣に阻まれてそこで止まった。だがそれでよかった。そのイーサーは自動で簡素な変形を行ない、イーサーそれ自体を発射するターレットとして機能するようになった。とは言えこうした武装の展開はエネルギーを消費するから、それは常に回復しているとは言えども考え無しに戦ってはすぐに枯渇し、回復まで待たされる事となる。機動やその他の機能に必要なエネルギーは別口で確保されるよう設定されているので、武装用のエネルギーが枯渇しても動けなくなる事は無いにしても、ある種の『戦闘経済』としてやりくりしなければならない。特に今は大量破壊兵器にもアクセスできず、ガード・デバイスを変形させているこのアーマーの機能は大幅に制限されている。

 故にターレットの類いを大量に展開すると手元に展開しておく武装のためのエネルギーの回復待ちというなんとも言えない事態に陥るので、様子見も兼ねて一基に留めた。ターレットからはイーサーがバースト連射され、制圧力よりは断続的な攻撃補助を優先した。ターレット自体がヘイトを集めて攻撃を受けるのも想定内である。囮目的でもあるし、その間に本体でも火力を叩き込んでおく必要がある。

 ウォーロードは右腕側に大きな砲身を持つ、極小金属弾を連射する加速兵器を形成し、逆側にはクラスター炸裂式のランチャーを形成した。両肩には浮遊して追随する近接防御用の散弾ランチャーを形成した。これで一端エネルギーは尽きたので、しばらくは回復するまでこれらで戦う事になる。

「衝撃を伴うイルミネーションのサービスはいかがですか?」

 皮肉っぽく言いながら急激にブーストダッシュし、先程まで彼が立っていた所をあの連打が通過した。機動しながら主に機銃的な加速兵器で攻撃し、炸裂しつつ分散するグレネード弾をぶつけて猛攻を仕掛けた。少し距離を詰めた事で自動制御の散弾ランチャーが攻撃をし始め、上部に設置されたイーサーのターレットもまた射撃していた。敵もまた猛反撃をしてきたが、今のところ雑魚を呼び出す気配は無かった。大量の弾丸が撃ち込まれ、信じられない加速によって凄まじい破壊力を帯び、発射の都度特殊な液体金属から『プリントアウト』されている極小の金属片及びグレネードが到達して敵を打ちのめし、激しい銃声が鳴り響いていた。

 熟練の機動によって敵の素早く回避の難しい攻撃を避けるヌレットナールはHUD上の敵のヘルスバーが五割を切りそうな事に気が付いた。よし、かなり効いている。

 敵の冷気を制圧射撃で粉砕し、それからグレネードを連射した。発射されたそれは爆発しながら小型の子弾を撒き散らし、それらもまた爆発してダメージを与えていた。ウォーロードは敵のヘルスバーが五割を下回ったのを確認した。

 すると唐突にその狂った獣は嘶き、それと共にその姿はスライドするように掻き消え、離れた位置で再出現した。立て直しつつ何かの兵器を起動してくるかも知れない。ウォーロードは警戒を強めつつ火力を投射し続けた。

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