第15話 モンスター
扉が閉まる。どうやらボーリンさんが戻って来るようなことはなさそうだ。
「・・・ふぅ~」
やれやれ、面倒な手合いだったな。
世の中、ああいう表面(おもてづら)がちゃんとしてる奴の方がたちが悪いのだ。
そのことを俺は前世の経験からよく理解している。
今回だってなんやかんや言いつつも、自分たちの外交能力のなさを、冒険者や俺といった市井の人間の命で補おうとしているだけなのだ。
はっきり言って正義を標榜する分だけ、より虫唾(むしず)が走るというものだ。
「ふう、とは言えちょっと言い過ぎたかな?」
と、少し冷静になって思い返す。
「そうですよ。隣で聞いていてハラハラしました・・・」
そう言いながら寝室からラナさんが出て来た。
どうやら俺たちのやりとりをずっと聞いていたようだ。
うーん、やっぱりか。いやあ、相手が勝手なことを言うから、ついつい言い返してしまった。
「でも宜しかったんですか? 御主人様ほどの方であれば、凶悪なモンスターの退治も容易だと思います。そうすれば、お金とや名誉も手に入ったかもしれませんが?」
ラナが首を傾げて質問してきた。
ふむ、まだ俺という人間を理解しきれていないようだな。
「そんなものに興味はないよ。俺はこうやってダラダラと過ごせれば、それで良いんだ」
怠惰こそ至高ゆえに!
・・・いや、あとは美少女が必要だな。
そして、その少女が身の回りの世話をしてくれれば、それこそ最高だ!!
「無欲なのですね。それに魔術師として常に高みを目指される姿勢、本当に素敵です!」
ラナさんはうっとりとした表情を浮かべて言う。
彼女には俺がダラダラするのは魔術師として精神修養だと伝えているからな。
まあ、実際にそうなので嘘ではない。
何もしないことこそが俺が怠惰ポイントを充電する唯一の手段であり、そして、そのことが強力なスキルを使用することにつながるのだから。
従って、俺はすぐにでもダラダラとした日常に戻るべきだろう。
具体的にはベッドでラナさんを抱き枕にしてまどろむ生活に帰るべきだ。
そう、より高みを目指す魔術師としては、それが正解である。
「ところで、ラナさんは俺が動けない騎士団の代わりに、モンスター討伐に向かうべきだと思うかい?」
俺はベッドに戻りラナさんのおっぱいに顔を埋めながら聞いてみた。うーん、柔らかい。そして甘い匂いがする。
が、ラナさんはなぜかオッパイを俺の顔から離すと、俺の頬に手を添えて来た。
何だ何だ?
と、ゆっくりとラナさんの綺麗な顔を迫って来て。俺の口を塞いだ。
「むぐ!」
い、いきなりだな。
「もうお昼ですよ、御主人様。ちゅ、ご命令の通りキスさせて頂きます。ちゅっちゅ、あ、キスさせて下さいませ・・・。ね、ご主人様ももっと舌を伸ばして下さい。レロ、はぁ・・・私の舌も食べて下さい」
貪るように吸い付いて来るラナさんに言われるがままに舌を伸ばす。
「あ、やだ、ご主人様の味がして、すごい・・・。ん、それに何だかご主人様の舌、甘い気がします、レロ・・・おいしい・・・」
そう言ってずっと俺の舌を、自分の舌で転がしている。
いや、、絶対ラナさんの舌が甘いんだと思うぞ?
「癖になりそう・・・、私、馬鹿になっちゃうかも・・・。レロ、ね、ご主人様、ご主人様もちゃんと気持ち良いですか? わたしみたいな端女(はしため)にこんなことをされても本当にお嫌ではありませんか? ん、ちゅう」
相変わらず自己評価が低いんだよなあ。
「そんな訳ないだろ? ラナさんみたいな美人にキスされて喜ばない男はいないよ?」
俺がそう言うと、ラナさんはぎゅっと強く抱き付いて来る。
「お世辞でも嬉しい! 今日もいっぱいいっぱいご奉仕させて下さい。他の男なんかどうでも良いんです。ご主人様にさえ喜んでもらえればラナは幸せなんです。愛していますご主人様」
そう言って深い口づけをしてきた。
何でこんなに好かれているのか、今だによく分からないが、とにかく俺を甘やかしてくれて可愛くてオッパイが大きいのだから言うことはない。
「ん・・・はぁっ・・・。あ、そう言えば御主人様が騎士団に代わってモンスター討伐に行くべきかどうかでしたね?」
しばらく俺の口を貪って満足したのか、顔を紅潮させたラナさんが思い出したように言った。
だが、金髪がほつれていて白い肌に張り付き、全身に軽く朱が差していて、しかも唇からは唾液が生生しく糸を引いているものだから異様に色っぽい。
っていうか、ちょっと人間には思えないレベルだな。
「私から言わせれば御主人様の邪魔をする方は、いりません。ミヒキコ様だけがこの世界にいれば良いんです。ミヒキコ様が幸せなら私は幸せです」
・・・ちょっと好かれ過ぎているような。っていうか愛が重い!
うーん、少しばかり盗賊や貴族から助けただけなのだがなあ。
まあ、嫌われているよりは無論、嬉しいわけだが。
「ま、いいか。さて、何はともあれ今日も今日とてゆっくりしよう。抱き枕になってくれよ?」
俺がそう言うとラナさんは嬉しそうに微笑む。
「はい、どうぞ私の体を御布団と枕代わりにして下さい」
そう言って優しく微笑むと、俺の頭を抱える様にして抱き寄せる。
オッパイに顔を埋める形になり、甘い匂いに包まれた。
うん、いい夢が見られそうだ。
まだ昼ではあるが、お腹は減ってない。
とりあえず空腹を覚えるまでは、こうやって時間をつぶすとしよう。
俺はラナさんのオッパイを揉んだり、キスしたり、少し遅れた昼食をラナさんに食べさせてもらったりしながら、その日もダラダラとしながら過ごしたのであった。
そして、その翌朝・・・。
「ぎゃああああああああああああああああ」
「い、いやああああああああ」
「えーん、えーん」
バキィッ!! グシャ!!
そんな阿鼻叫喚の声と建物が破壊される音とともに、起こされることになったのである。
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