隣国の人質ですが溺愛され、更に私への母国の扱いに激怒した公爵殿下が罰を下すと言ってます。私は気にしていないので、母国の重鎮は早く謝りに来てください。許す準備は出来てますから、はぁ
初枝れんげ@3/7『追放嬉しい』6巻発売
第1話 婚約破棄と罵倒と冤罪
「カナデ・ハイネンエルフ! 貴様との婚約はこの場をもって破棄する!」
様々な国の重鎮や貴族たちが集まる大規模なパーティー。
いわば王国の最も重要な社交の場で宣言されたのは、なんと私ことカナデに対するこの王国の皇子による一方的な婚約破棄だった。
だが、私は意味が分からない。
何か自分に致命的な粗相があったのだろうか?
それとも、大きな政治的な思惑が動いたか?
だが、何が理由であれ、こうした社交の場で婚約破棄を宣言するなどとは、常識をもってすれば考えられない行為であるし、もっと言えば、まだ未婚の女性に対してこんな公衆の面前で婚約破棄するなど最大の恥辱を与える行為であろう。
この王国で永遠に肩身の狭い思いをしなければならないほどの、あまりにむごい仕打ちだ。
「ペルシニカ皇子……。何をいきなりいうのですか? 私たちの婚約は王国が正式に決めたもの。それを勝手に破棄することは王国の……、ひいては諸外国との外交関係にも影響が……」
私は現在の国家の状況を踏まえて、常識的な言葉を告げようとしたのですが……。
「黙れ! 女のくせに出しゃばるな! 私は貴様のその出しゃばりなところが目ざわりだったのだ!」
ええ……。
私は思わず息をのみます。
なぜなら、彼の言った言葉がただの感情論でしかなかったからです。
とても王族から出た言葉とは思えないほど下卑た言葉で罵倒されたわけですから。
いえ、それはまだいいのです。私自身が傷つくことは、まだ私が我慢すれば済む話。
ですが、私は更に嫌な予感がしてきたのです。
私を袖にした理由がせめて、もっと政治的な、何かしらの理由ならばともかく、もしかして……。
そして、残念ながら、その理由は見事的中したのです。
「私はこのシルビア・アノワンク嬢と正式に婚約することにした! よって、カナデ・ハイネンエルフ! 貴様との婚約は破棄する!」
彼は演説するように大声で一方的に宣言した。そして、
「彼女は本当に素晴らしい。聖魔術の使い手であり、傷ついていた私の心を癒してくれた! 巷では聖女と名高い! そして、余計なことは言わず、女性らしく甘えてもくれる。お前のようなでしゃばりで訳の分からないことを度々言ってきたりもしない! まったく魔女のごとき貴様とは真逆の素晴らしい女性なのだ!」
その言葉と同時に、待っていたかのように、数々の令嬢の間から、ひときわ輝くような美しい少女が現れた。
(いや、現に待っていたのでしょう)
彼女のしつらえられたドレスや髪の毛、出てくるタイミングと言い、すべて私を陥れるために整えられたもの。
(ならば、この状況は全て私を貶めるための皇子の策略であり、私を最大限の侮辱を行い、社交界から追放しようとする魂胆に他ならない)
シルビアと呼ばれた少女は、確かに一見するとおっとりとした、しかしどこか可愛らしい雰囲気を持つ少女です。
出身は庶民ですが、聖魔術を使えることから貴族学院へ編入した優秀な方で聖女とも言われているとのこと。
殿方がひかれるのも分かりました。
そう言えば、最近よく彼女の姿を王宮内や学院で見かけましたが、その時に皇子と彼女は
ただ、私は同時にくらくらとしました。
その様子を見て、皇子は私が婚約破棄されてショックを受けていると思い、ニチャリ、と笑みを浮かべました。
「どうした、私に婚約を破棄されたのがそんなにショックなのか?」
「……いえ、そうではありません」
「ふん、そういう可愛げのないところがまた気に障るのだ!」
皇子は言い捨てるように言います。
ただ、本当に私がショックを受けた理由と言うのは別の理由だったからです。
「皇子。本当に可愛らしいなどと、そのような理由でその方を選ばれたのですか? 私たち貴族の婚姻はこの国の安寧のために様々な意味があってのことで……」
「うるさい! お前の話など聞いていない」
もはや発言権もないかの如く、居丈高に罵倒されます。
「それに、私は知っているのだぞ? お前のした彼女への悪行の数々をな!」
えっ?
私は本気でぽかんとします。
「しらを切ろうとしても無駄だ! この悪女カナデめ! お前が隠れて、このシルビアを平民の出てあるという理由だけで、ひどいイジメをしていたという証拠が上がっている!」
「えっ⁉」
またしても意外な事実を告げられ、私は困惑に言葉に詰まってしまいました。
その隙をついてというべきか、皇子はまくしたてるように、私の罪状……。もちろん冤罪ですが、それを次々に並べ立てます。
「シルビアの備品の盗難や破壊! 階段から落とされそうになったという噂もある! そしてテスト勉強の時はそれを邪魔して学年1位の彼女の成績を落とそうとした! まさに悪魔の所業そのものだ!」
ざわざわ、と周囲の方々も騒ぎ始めます。
「皇子! 婚約破棄も他の女性を選ばれたことはあなたの意思! ですが、この私がそのような下らない所業に手を染めていたという嘘だけは否定させてもらいます!」
それは我がハイネンエルフ公爵家の沽券にもかかわることだからだ。しかし。
「やだ! 怖い! 助けて、ペルニシカ皇子!」
シルビアという少女はこれ見よがしに皇子へと体を寄せる。その時、彼女の唇がうっすらと笑ったように見えたのは気のせいか?
ともかく、その仕草に気をよくしたのか、さらに皇子は語気を強めた。
「いい加減にしろ! お前とは違ってシルビアは可憐な少女なのだぞ! それに! ふん! ことここに至ってよくもまだそのような強弁がはけるものだ! この醜い魔女め!」
皇子はそう言うと、
「おい、お前たち」
そう言って周囲に声をかけました。すると、3人の男性が彼の周囲に現れたのです。
一人目は、赤い髪が特徴的なワイルドな印象の男性。ペルニシカ皇子の弟。ロズイル公爵家次男のアレックス様。
二人目は、銀髪をオールバックにした知的な風貌の男性で、ロズイル公爵家とゆかりの深い、エホール公爵家の次男ルイス様。
三人目は、栗色の毛を持ち、その姿はまるで天使とまでうたわれた天真爛漫と言った幼い風貌を持つ、カルデイ侯爵家長男、ハイネ様。
いずれもペルニシカ皇子と交友関係の深い方々です。
そして、その三人はそれぞれ、剣と白い手袋を持っていたのです。
私はその光景に、まさかと思い、思わず絶句してしまいました。
その様子に堪えられないとばかりにペルニシカ皇子や他の男性たち、アレックス様、ルイス様、ハイネ様も嘲笑らしきものを浮かべました。
そう、なぜならそれは、
「そら、受け取れ、カナデ・ハイネンエルフ! この魔女め!」
手袋と剣が私に乱暴に投げつけられます。
そう、それは決闘の申し込みなのです。ただ、こんな公衆の面前で決闘……。しかも、先ほどまで婚約者だった相手にこのようなむごい仕打ちは聞いたことがありません。
あまりの現実感のなさに青ざめざるを得ません。
【後書き】
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