拝啓、1年後の貴方へ

撫子

第1話

新中学生、新高校生、新社会人、新学期、新学年。


どれも「新」という文字が付くだけでそこから働くところがいちいち変わったりクラスや学年の面子がガラッと変わることも無い。だから春は出会いと別れの季節だと言われても実感する人はそうそういないだろう。


僕の高校生最後の日常生活も去年と変わらないものになるはずだった。


「よっ、郁里。1週間ぶりだな!」


「ああ、伊織か。おはよう。」


「なんだよまたゲームのイベント走ってたのか?」


「別にいいだろ何やってたって…」



「あ、そういえば郁里聞いたか?今日から転校生来るらしいぜ!しかも女子!」


「変な時期に転校なんだな、高3の春に珍しい。」


「なんか訳アリらしいよー、そこまで俺も詳しくないけど。」


「ふーん。」


「あ、あとその子…」


キーンコーンカーンコーン


「あー、鳴っちゃった。んじゃまた後でな郁里!」


「おー。」


転校生か、この歳まで生きてきたけど転校生って案外初めてかもな。

どんな子なんだろうなと人並みに気にしていると担任が入ってくる。


「お前らー席つけー、HR始めるぞ。とその前に、お前らもう知ってる人がいるとは思うが今日から新しくこの学校に転校生が来た。おーい、入ってこーい。」


ガラガラと扉を開けて入ってきた転校生はとても凛としていた。


「じゃあ自己紹介よろしく。」


と担任が転校生の名前を書きながら言ってきた。


「はい。皆さん初めまして、今日からこの学校に転校してきました長井叶音です。来年のこの時期にはもう死んでると思いますが仲良くしてください!よろしくお願いします。」


とにこやかに言い放った彼女のおかげで、いつもの何も無い日常がガラッと変わってしまった。


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