第189話 夏に向けての作戦

 六月下旬の土曜日。綾佳は目の前に迫っている夏に向け、外堀大作戦のメンバーを集めてレストランで作戦会議をすることにした。


 座席は綾佳&楓と麗音&レイナで座った。

 

 それぞれ注文を終え、ドリンクバーで好きな飲み物を取りいよいよ話し合いが始まった。

 

「それでは"告白大作戦"の話し合いを始めたいと思います」


 レイナが一つ咳払いをしてから話し始めた。


「"告白大作戦"って…これってそんな名前だったか?」


「名前は無かったから、レイナちゃんがいま適当に作ったんじゃない?」


 麗音は苦笑いをしながら言うと、綾佳も苦笑しながら彼女に言った。そして二人はレイナの方を向いた。


「そうですわよ。だって綾佳さんが夏休みまでに告白する=告白大作戦で何が悪いのですか?」


「悪くはないけどね…」


 綾佳は苦笑しながら言うと、「あと」と言葉を続けた。


「夏休みまでにとは言ったけど、夏休み中まで期限を伸ばすことにしたんだよね。海里くんのことだから夏休み中に告白する可能性もあるし。なんなら、同時に告白も楽しそうだなって…」


「優柔不断すぎるだろ。そんなことでは、いつまで経っても告白なんて出来ないぞ?」


「分かってるんだけど… ほら、理想の告白とかもあるじゃん」


 綾佳は視線をずらしながら、左右の人差し指をツンツンしていた。


 それに対してレイナは、「理想の告白は以前聞いたプールのことですか?」と言ってきた。ピンとこない麗音は首を傾げていた。


「そうそう。楓ちゃんが言っていた話。それで楓ちゃんに聞きたいんだけど」


「………」


 綾佳は隣にいる楓に話し掛けたが、彼女はコップをずっと見つめていた。


「楓ちゃん?大丈夫?」


「………っは!はい。大丈夫です」


 綾佳は楓の肩をトントン叩くと、彼女は綾佳の声に気づいて返事をした。それに対して綾佳、麗音、レイナは微笑んだ。


「楓ちゃんが以前プールで告白って提案をしたじゃん?」


「はい。ダブルデートの提案もしましたね」


「それでね、プールの後に花火はあるのかな?」


「花火ですか。ちょっと待っててください」


 楓は携帯を取り出し、提案したプールのホームページを見ることにした。


 その間、麗音とレイナは綾佳に『花火』の理由を聞くことにした。


「どうして花火なのですか?」


「花火にこだわる理由が気になるな」


「それは…花火が上がった時に告白するのがロマンチックだなって思って…」


 綾佳は下を俯きながらボソッと呟いた。その顔は赤く染まっていた。


「綾佳さんが可愛すぎますわ。麗音さん!!私、ニヤニヤが止まらなくなりそうです!!」


「私もだよ。瀬倉がここまで可愛いことを言うとは…動画を番組に売ったら高く売れそうだな」


「麗音ちゃん?!それはダメだからね!!」


「ふっ…そんなことをやる訳ないだろ。綾佳のこの顔を見れるのは私たちだけの特権だからな」


「そうですわね」


 麗音とレイナは微笑し合い、綾佳は二人に対して頬を膨らませて拗ねていた。


「お、お待たせしました。花火大会のこと分かりましたよ」


 ちょうど調べ終えた楓が話し掛けてきた。


「おっ!楓ちゃんありがとう!!それでどうだった?」


「綾佳さんの望み通り、夜の7時過ぎから花火大会はありました。ただ土日なので、人混みがありそうですが」


「それは想定内だから、特に問題はないよ」


「ですが…ロマンチックを求めるなら穴場を探したいですね」


 楓は綾佳の一世一代の告白を大成功させたいと思っていた。これまで彼女の相談相手になっていたので、最後まで楓は自分の力を注ぎたいからだ。


 そう思っていると、レイナが口を開いた。


「分かりました。私が何かしら考えておきますわ。それでプールはどこに行く予定なのですか?」


「ここに行く予定です」


 レイナに聞かれて、楓は携帯の画面を彼女に見せた。今の所予定なのだが、綾佳と二人で話し合って決めた場所である。


「分かりました。続報を待っていてください」


 レイナは微笑し、鞄から手帳を取り出してメモを取り始めた。


「私も何か手伝えることはあるか?」


 麗音はレイナのことをチラッと見てから、対面にいる二人に声を掛けた。


「そうだね〜 麗音ちゃんは私たちと一緒に楽しく遊ぶ…とか?」


「なんだよそれ(笑)ダブルデートをするのに、私がいたら邪魔だろ」


「そうかなー?楓ちゃんも麗音ちゃんやレイナちゃんが来てくれたら嬉しいよね?」


「嬉しいですね。はや…私の彼氏は驚くかもしれませんがね。あとは海里さんも」


 楓は口元に手を当てながらしのび笑いをした。


「それでも告白までの時間は皆んなで楽しみたいじゃん?折角のプールだしさ!」


「そうですわね。私もプールを行きたいので、その案には乗りますわよ」


 するとメモを書き終えたレイナが言った。


「ほら、レイナちゃんも賛成だって!麗音ちゃんはどうかな…?」


「分かったよ。一緒に行けばいいんだろ」


 麗音は後頭部を掻きながら呟いた。


「うんうん!!ということで、皆んなで水着を買いに行こうね!」


「はい!現役アイドルの御三方と買い物出来るの嬉しいです!!」


 楓は満面の笑みをしながら、胸の前でガッツポーズをした。


「私もだよ」


「私も楓さんと買い物行けるのを楽しみにしてますよ」


 麗音とレイナも微笑しながら返事をした。


 それからメッセグループを今更ながら作り、水着を買いに行く予定を立てた。

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