第93話 同じクラスで安心したよ!
四月になり綾佳と海里は昇降口にいた。
二人の目の前には複数の生徒がいて、扉の所に一枚のプリントが貼られていた。
そこから様々な声が聞こえてくる。
「俺の名前はどこにある」
「やったー!同じクラスだよ!」
「今年もよろしくね!」
「担任変わらなくてよかった…」
貼られていたのはクラス替えのプリントだった。
「クラス替えのプリントらしいね」
「そうみたいだな。なんだか緊張するな…」
「だよね。私もクラス替え始めてだから、凄い緊張してるよ」
「それじゃあ、俺たちも見に行きますか」
海里の言葉に綾佳は頷いた。
そしてプリントの元へ向かった。
「えっーと、俺のクラスはっと…」
海里は一クラスずつ上から下へ探していき、三組の所で自分の名前を見つけた。
「三組だ。てことは、一年の頃とあまり変わらないな。担任も同じだし。綾佳はどうだった?」
「私も同じ三組だったよ!また海里くんと同じクラスで安心したよ!」
「俺もだ。だって、俺が目を離したら綾佳が何しでかすか分からないし」
「まさかの監視役として!?」
「当たり前だろ。だって俺は———」
海里は綾佳の耳元に近寄り
「(綾佳のマネージャー(バイト)だろ?)」
綾佳は耳元で話された事で、顔を赤く染めながら「そうなんだけど…」と呟いた。
「それに同じクラスなら、困った時に助けられるし同じタイミングで帰れるぞ?」
「そ、そうだよね!うん、一緒に帰れる事が大事だよね!」
綾佳は視線をずらしながら言った。
どうやら先程の台詞で、海里の顔が見れなくなったらしい。
海里も恥ずかしながらも頑張って言った言葉に反応してくれて、なんだか嬉しくなった。
「さてと、そろそろ教室に向かお———」
「お二人さん、おはよう」
と言おうとした時、後ろから声を掛けられた。
後ろを振り向くと颯斗が立っていた。
「おはよう。それじゃあ」
「おいおい、もう少し俺のクラスに興味持ってくれよ」
「おはよう颯斗くん。で、クラスはどうだった?」
「瀬倉さんも少し扱いが雑な気がするけど、聴いてくれたから俺嬉しい…」
颯斗はすすり泣きそうな声で呟いた。
そんな姿を見て海里は、早く教室に行きたいなっと思っていたので仕方がなく聞くことにした。
「それで颯斗はクラスはどこなんだ?」
「俺も二人と同じ三組だったよ」
「二年連続同じクラスか。(腐れ縁にならなければいいんだけど…)」
「おい、ボソッと呟いたつもりと思うけど全て俺の耳には聞こえているからな」
颯斗は海里の腕を強く握った。
「痛いんだけど…」
「なんのことかな?」
満面の笑みで返答する颯斗。
「颯斗くん、私は同じクラスで嬉しいよ!今年も楽しい一年にしようね!」
「瀬倉さん…!俺、瀬倉さんの為ならいくらでも頑張ります!!」
綾佳の助け舟のおかげで、海里は颯斗から解放された。
「えっーと… 私の為に頑張ってくれるのは嬉しいけど、マネージャーではない人には難しいかな〜?」
綾佳はそう言いながらチラッと海里の方を見る。
何故自分の方を見ると思いながら、二人の様子を海里は見ていた。
「そうゆう事だから、颯斗には無理な事だ。それより早く教室行こうぜ」
「う〜ん… マネージャーのバイトとかないか…いたっ」
「馬鹿か。颯斗は綾佳のマネージャーではなく、どうせやるな翼さんのマネージャーを志望しろよ。彼女とかに頼めば行けるんじゃね?」
「そんな簡単には無理だろ」
「それと同じで、綾佳のマネージャーも無理だ」
颯斗は「そうか…」と言いながら落胆していた。
二人の会話を見ていた綾佳は微笑み、そして海里の元へ近寄って耳打ちしてきた。
「(海里くんの場合は、特別枠だけどね!)」
この言葉に綾佳と同じように顔を赤く染めて、海里は呆然と立っていた。
「てことで、二人とも教室に行こうっか!」
海里、颯斗は綾佳に引っ張られて、新しい教室へと向かっていった。
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