社内恋愛禁止です?!

@cakucaku

第1話 出会い


 外は寒くコートが必須な季節。


 ガタンゴトン ガタンゴトン


 (んー!毎朝しんど〜い!)


 毎日満員電車に揺られ通勤する。

 柏木加奈25歳OL彼氏なし流されやすい性格。

 

 「おはよう」


 「おはようございます、加奈さんストッキング伝線してますよ」

 この子は後輩の石田まり。

 

 「やだ、ほんとだ」


 「替え持ってます?」


 「持ってるよ、ありがとう」


 予備のストッキングを持ってトイレに入る。


 「これでよしっと」

 加奈はストッキングを履き替えるとトイレを出た。


 ドンッ


 誰かとぶつかる。


 「あ、すみません!」


 「‥‥」

 ぶつかった男は無言無表情で加奈を見て去って行く。


 (えっ今の何?態度わるー)



 そうこうしている間に朝礼が始まる。


 「おはようございます」

 みんなで挨拶をする。



 「みんなに紹介したい人がいる、今日からこの営業部を任せる坂口君だ」

 社長が呼ぶと歩いて来たのは。


 「今日からよろしくお願いします」

 坂口部長が短く挨拶する。


 (あっ!さっきの!)

 それはさっきトイレでぶつかってきた男だった。


 実は、以前までいた部長は部下との不倫がばれ、地方に飛ばされてしまっていた。


 「加奈さん、坂口部長ちょーイケメンじゃないですか?」

 まりが目を輝かせて言った。


 「さっきトイレの前でぶつかったけど、何も言わずにどっか行くし態度悪かったよ」


 「初日だから緊張してたんじゃないですか?」


 「そうは見えなかった、ありゃ冷酷だな」


 朝礼も終わり、仕事を始める。


 「柏木おはよ」

 そう言ってコーヒーを持ってきたこの男は同期の田口あおい。


 「ありがと、なんの用?」


 「冷たいなー、ちょっと相談があってさ」


 「何?」


 「ここじゃなんだからちょっと来て」

 そう言って田口は加奈を屋上に誘った。


 「最近おふくろがさ、結婚はまだかってしつこくてまいってんのよ」


 「彼女のフリならしないからね」


 「なんでだよー」


 「面倒くさいじゃんー」


 「お願い!一回だけでいいから!」


 「あんたモテるんだから誰でもいいじゃん」


 「モテないから!誰もいないし!マジでお願いだよーなんでもゆう事聞くから!」


 「もー仕方ないなぁ」

 田口の必死の頼みに断りきれなかった加奈。


 「マジで?助かるわー!」


 「で、どうすればいいの?」


 「次の休みに来る予定になってるから、一瞬だけ顔出して!」


 「わかった」


 「時間はまた言うから、おしゃれしてきて!」


 「はいはい」



 加奈が戻ってくるとまりが興味津々に聞いてきた。

 「田口先輩なんだったんですかー?」


 「彼女のフリしてって言われた」


 「そんなドラマみたいな話本当にあるんですね」

 

 「変なやつだよねー」


 「田口先輩モテそうなのに彼女いないんですね」


 「バカだからじゃない?」


 「加奈さんひどーい、私顔はタイプなんですよねー」

 まりが田口の席の方を見ながらうっとりしている。


 「やめときな?疲れるよ?」


 「加奈さん田口先輩と同期なんですよね?」


 「そうだけど」


 「ずっと彼女いないんですか?」


 「ごめん、興味ないから知らない」


 「私狙おうかな」


 「まりちゃん彼氏いなかったっけ?」


 「この前別れました、浮気されたんで」


 「うわっひどいね」


 まりと会話をしていると坂口部長がこっちを見てくる。


 「まりちゃん、仕事仕事」


 「あっはい」


 (なんか怖そうだし苦手だなぁ)


 

 夕方仕事も終わり、加奈は不動産屋に向かっていた。


 「いらっしゃいませ、どんなお部屋をお探しですか?」


 「築浅でバストイレ別でここから徒歩10分圏内でお願いします」


 加奈は一人暮らしを始めようとしていた。


 運良く会社から近くの所に綺麗なマンションを見つけ、即決した。


 「ありがとうございました」

 不動産屋を出て電車に揺られ帰宅する。


 「ただいまー」


 「おかえり、先ご飯にする?」


 「うん、そうする!」


 今は両親と三人暮らし。


 「そうだ、住む所決まったよ!」


 「決まったよって早くない?」


 「条件がぴったりな所が運良くあったから即決したの」


 「いつ引っ越すの?」


 「丁度一ヶ月後だよ」


 「そう、寂しくなるわね」


 「私もそろそろ自立しないと」


 「そうね、仕方ないわよね」

 少し寂しそうな顔をする母。


 「そんな顔しないでよお母さん」


 「早く食べてしまいなさい」


 「うん」


 

 翌日会社


 「おはようございます」


 「おはよう」

 加奈はまりの横に座る。


 「あっそうだ、部長の歓迎会があるらしいんですけど加奈さん行けますよね?勝手に丸して出しときましたよ」


 「ありがと、どうせ何も用事ないから大丈夫だよ」



 田口がこっちを見ながらスマホを指差すジェスチャーしている。


 (なに、スマホ見ろ?)


 田口からメールが来ていた。

 《明日昼の一時に俺んち集合で!》


 《わかった》


 田口の家には同期仲間と何回か行った事がある為知っている。

  

 田口とメールしていると部長がまたこっちを見ている。

 (また見られてる、仕事しなきゃ)


 その時部長がこっちに来て言った。

 「柏木さん、これコピーして配っといて」


 「はい」


 加奈は書類をコピーして配るが、まだ部長はこっちを見ている。

 (何見てんの?顔になんか付いてる?もしかして私の事、いや、ないない)


 書類を配り終え席に戻る。


 時計の針を見るともう昼だ。


 「加奈さーん、ランチ行きましょ!」


 「そうだね!」


 加奈はまりとランチに出掛ける。


 「今日は何食べよっかなぁ」

 まりが店を選んでいると


 「ん?あれって部長じゃない?」

 加奈がテラス席に座る部長を見つける。


 「本当だ、さっきまでデスクいましたよね、瞬間移動?そうだ!このお店入りましょ!」

 加奈の手を引いて店内に入るまり。


 「いらっしゃいませ、何名様ですか」


 「連れがいますので!」

 まりはそう言って部長の方を指さした。

 

 「まりちゃん!何言ってんの?」


 「いいから、いいから」

 加奈の言う事も聞かず部長の方に行く。


 「部長、ご一緒していいですか?」


 (まりちゃん、チャレンジャーだなぁ!部長なんて言うんだろ)


 「もちろん」


 (もちろん、なに?)


 「いいって事ですか?ありがとうございます」

 まりが強引に座る。


 「加奈さんも座って下さいよ!」


 「あぁ、失礼します」


 (気まずいなぁ)


 「加奈さん何食べます?」


 「じゃあカルボナーラにしよっかな」


 「私はボロネーゼにしますね、すいませーん、注文お願いします!」


 三人は雑談しながらランチを済ませた。


 部長は終始ドライな返答ばかりだったが、嫌な顔をする事はなく無表情なだけで悪い人ではない様だった。


 三人は会社に戻る。


 (今日は金曜日だし、帰ってドラマでも見ようかな)


 そんな事を考えながら定時に上がり、家路に就く加奈。


 (そうだ、明日何着て行こうかなぁ)


 加奈はベッドに服を並べて悩む。


 (おしゃれしてきてって言っても派手なのはやっぱやめといたほうがいいよなぁ)


 結局綺麗めなワンピースに決めた加奈。



 翌日


 ピピピ、ピピピ


 目覚ましを止め、大きく伸びをする。


 「よし、用意するかな」


 (メイクは薄めで、髪はふんわり巻こうかな)


 仕方ないと言いながらも少しワクワクしている加奈。


 コートを羽織り、田口にメールを送る。

 

 《これから向かうよ》


 《わりぃ!やっぱ俺んちじゃなくて喫茶店でもいい?住所送るから!》


 《わかったー》


 加奈は言われた喫茶店に向かう。


 カランコロン


 「こっちこっち!」

 田口が手を振っている、隣には母親らしき人が座っている。


 (うわっ急に緊張してきた!)


 加奈は席に向かい挨拶する。


 「はじめまして、柏木加奈と申します」


 「あおいの母です」


 「とりあえず座って」

 田口が加奈に言った。


 「あおいにもったいないくらいの綺麗な人だね」

 田口の母親がそう言って笑った。


 「ちょっとおふくろ!」

 少し恥ずかしそうにする田口。


 「食事はまだかしら?」

 母親が聞く。


 「済ませて来ましたので」

 長居するつもりのない加奈はそう答えた。


 三人はしばらく、たわいのない会話をしていた。


 「そうだ、今日はこれから仕事なんだよね?」

 田口が加奈に向かって言ってくる。

 

 加奈もそれに合わせる様に答える。

 「お会いできて嬉しかったです」


 「あら、そう?じゃあまた時間がある時に食事しましょう」

 

 「はい、では」

 そう言うと加奈は足早に店を出る。


 (緊張したなぁ)

 加奈はホッと胸を撫で下ろした。


 (せっかくおしゃれもしてきたし買い物でもして帰ろうかな)


 加奈は夕方まで街をふらふらしながらウインドーショッピングを楽しんでいた。


 ピロン


 加奈のスマホが鳴った。


 《さっきはありがと!飯奢るよ!今どこ?》

 田口からだった。


 《まだ外いるよ》


 《じゃあさっきの店の前まで来れる?》


 《わかった》 

 加奈はそう返信すると店に向かった。


 辺りは暗くなっていた。


 「ごめん、待った?」


 「こっちこそ今日はありがとな」


 「別に暇だったしいいけど」


 「とりあえず腹減ったからいつもの居酒屋行こうぜ」


 そう言うと二人は行きつけの店に向かった。


 「おつかれー」

 田口がビールを片手に乾杯する。


 「おつかれ。てか今日緊張したー」


 「あーなんか柏木の事やけに気に入ってたわ」


 「それはよかったのかな?」


 「とりあえず安心して帰ってったからよかったんじゃね?」


 「でもあんた本当に付き合ってる人いないの?社内でも時々噂されてるみたいだし」


 「どんな噂だよ」


 「イケメンなのに気取ってなくて優しいって」


 「まぁ正直告白されたりはするけど、みんな本当に俺のこと好きか?って感じでさ嘘っぽいんだよな」


 「なにが?」


 「自分で言うのもなんだけど顔だけで近づいてきてる気がして」


 「ハハハ、最初はみんなそんなもんでしょ、性格なんて分からないんだから」


 「だからだよ!普通性格知ってから好きになるもんじゃねーの?」


 「好きになるポイントなんてみんな違うんだから性格重視の人もいれば見た目重視の人もいるよ」


 「その点柏木は性格も見た目も完璧だよな」


 「急に何言ってんの?もう酔った?」


 「酔ってるかも」


 「お酒弱すぎでしょ」


 「飲めないの忘れてたわ、気持ち悪」


 「そろそろ解散しよっか」


 「そうだな」

 立ち上がるも足元がおぼつかない田口。


 「フラフラじゃん、大丈夫?」


 「うん、情けないな」


 「会計しとくから待ってて」


 「これで払ってきて」

 田口は財布を加奈に渡した。


 「わかった」

 財布を受け取り、会計を済ます。


 「払ってきたよ、ごちそうさま」


 「うん」


 二人はタクシーに乗るため、店を出る。


 「タクシー捕まらないなぁ」

 

 「週末の夜だから仕方ないよな」

 加奈の横にちょこんと座っている田口。


 「歩ける?」


 「大丈夫だよ、それよりタクシー捕まえないと柏木帰れねーじゃん」


 「だね、田口は家近いから帰れるもんね」


 「‥‥泊まってく?」

 田口が加奈を見上げながら言う。


 「何言ってんの?バカじゃない」


 「いやガチで、正直すぐ帰りたいけど柏木置いて帰れねーし、俺んち来たところでなんとも思ってねーから心配すんな」


 「そう言われても」

 困る加奈。


 「眠い、もうここで寝そう」

 道端に寝転ぼうとしている田口。


 「わかったよ、本当に何もしないでよ」

 慌てて、田口を支える加奈。


 「自意識過剰だな」


 「さっきは完璧とか言ってたのに」


 「冗談もわかんないの?」


 「はぁ、呆れた、さっさと帰ろ」

 

 二人は田口の家へと歩き出す。


 「待って、コンビニ寄って帰る」


 「そうだ、私もメイク落とし買いたい」


 「ラーメン食う?」


 「深夜のラーメンはきついよ」


 「じゃあ俺だけで食うか」


 5分ほど歩くと田口の家に着いた。


 「おじゃまします」


 「どうぞ」


 「相変わらず綺麗にしてるね」


 「そうか?普通じゃん」


 「洗面所借りるね」


 「シャワーは?」


 「着替えないもん」


 「着替え適当に貸すから入ってこいよ」


 「それはさすがに、ね?」


 「もしかして変なこと考えてる?」


 「考えてないけど、なんか」

 加奈が返答に困っていると。


 「風呂も入らず寝るつもり?汚いからそれはやめて」

 田口は苦笑いで言った。


 「汚いって失礼ね!じゃあ入ってくるよ」

 (なによ、人をバイ菌扱いして!)

 

 加奈はメイクを落とし、シャワーを浴びる。


 風呂から上がると着替えが用意してある。


 「お先ー」

 加奈は田口に借りたパジャマを着て部屋に戻る。


 「俺も入ってくるから楽にしといて」


 「私ソファで寝るから」


 「はいはい」

 そう言うとシャワーをしに行った田口。


 (普通こうゆう時ってベット譲ってくれるよね、はいはいってなんなの)

 加奈は少し不満そうだ。


 しばらくして田口が出てくる。

 「あーさっぱりした、ってもお寝てんじゃん」


 グーグー


 加奈は疲れもあってソファで眠ってしまっていた。


 「髪も乾かさずねると風邪ひくぞ」

 加奈は起きる気配がない。


 「ったく仕方ねーな」


 田口は乾かせる所までドライヤーで乾かしてあげる。


 「よいしょっと」


 田口は加奈を持ち上げ、ベットに寝かす。


 「お前ほんと可愛いな」

 田口が呟く。


 「うーん」

 加奈が目を覚ます。

 (えっ、いつの間にベット来たんだろ)


 「わりぃ、起こした?」


 「私いつの間に?」


 「ソファで寝てたから運んだ」


 「えっ、重くなかった?」

 加奈は恥ずかしそうに言う。


 「寝てる人間は重いに決まってんだろ」


 「そうだよね、ごめん」


 「いいから、寝ろよ」


 「田口は?」


 「俺はどこでも寝れるやつだから」


 「ありがと」

 (なんかいざ寝かしてもらうと申し訳ないな)


 「端っこで寝ていいよ」

 加奈が小さい声で言う。


 「は?」


 「ベット広いから離れて寝るなら来てもいいよ」


 「俺寝相悪いからわざわざダブルのベットにしてんだよ」


 「そうなの?」


 「てか来ていいよって誘ってんの?」


 「違うよ!もういい寝るね!おやすみ」

 (本当だ私何言ってんだろ、誘ってるって思われてもおかしくないよね)


 グーグー


 田口はすぐいびきをかいて寝ている。


 「寝るの早っ」

 加奈も眠りにつく。


 暫く寝ている二人。


 「うーん」

 加奈が寝返りを打った時何かに当たる感覚がした。

 目を開けると目の前には田口がいる。

 

 「なんでいんの?」

 ビックリする加奈。


 「ソファ狭いから落ちるばっかして寝れなかった、わりぃ」

 田口は寝ぼけながら言うとまたいびきを立てながら眠った。


 (近いよ、どんどん寄ってくるし)

 加奈は隅っこの方で小さくなっていた。


 「うーん、柏木‥‥」

 田口が寝言を言っている。


 「寝言?夢の中でも私絡まれてるの?」

 加奈は寝れずにいた。


 暖房のタイマーも切れ、寒くなった加奈は布団を肩まで被り目を瞑る。


 (!!)

 田口も寒くなったのか、寝ぼけながら加奈に後ろから抱きついてきた。


 「田口?離れてよ」

 加奈は小声で言う。


 すると田口は加奈の耳元で囁くように言う。 

 「まだ酔い覚めてないから許して」


 「いいから離れてよ」

 田口の腕をどかそうとする加奈。


 「こっち向いて」


 「ふざけてるの?怒るよ」


 「ふざけてないから」

 田口はそう言うと加奈の肩を持って自分の方に向かせた。


 「なに?」

 

 

 「こんなに近いのになんとも思わない?」

 田口が言った。


 「どうゆう意味よ」

 


 「好きなんだよ」


 「また冗談なんでしょ」


 「本気だよ、お前が好きだから彼女作ってないんだよ」


 「反応に困ること言わないでよ」

 

 「ドキドキしない?」


 「本当に冗談じゃないの?」


 「そう言ってんだろ」


 「どうだろ、急すぎて分からない」

 加奈は戸惑いを隠せない様子。


 「試してみる?」

 田口が加奈に近づきながら言う。


 「なにを?」


 「何も感じないか」


 「えっ?」


 田口はそう言うと加奈にキスをした。


 加奈は自然と受け止めた。


 キスがだんだん激しくなる。


 「んっ」

 加奈の声が漏れる。


 「感じてんの」


 「あっ」

 加奈は恥ずかしそうに目を瞑った。


 「ギュッてしてもいい?」


 「うん」


 加奈はドキドキしていた。


 「俺の心臓やばい」


 「急展開すぎて体がついていかないよ」


 「俺に任せてくれたらいいから」

 そう言うとパジャマのボタンを一つずつ外していく田口。


 「それはダメ」

 加奈がパジャマを押さえる。


 「少しだけ、お願い」


 「やめてって言ったらやめてよ」


 「わかった」

 そう言うと再びボタンに手をかける。

 「心臓の音聞いてもいい?」


 「うん」


 田口は加奈の胸に耳を当てる。

 「心臓バクバクいってるよ」


 「言わなくていいから」

 加奈はその日、田口に抱かれた。



 翌朝


 「うーん」

 加奈が目を覚ますと田口はいなかった。


 (あれ、どこ行ったんだろ)


 「やっと起きたか」


 キッチンから顔を覗かせる田口。


 「何してんの?」


 「朝飯作ってんの」


 田口は手際良く朝食を作り並べる。


 加奈は顔を洗いそのまま椅子に座る。


 「今日が日曜でよかったな」

 田口は笑顔で言った。


 「なに笑ってんのよ」

 

 「いや、昨日の柏木可愛かったな」

 

 加奈は昨日の事を思い出し赤面する。


 「さっさと帰るわ」

 加奈はそう言うとそそくさと朝食を食べ、着替えを済ませた。


 「おじゃましました」


 「気をつけて帰れよー」


 (なにやってんだろ私)

 電車に揺られながら反省する加奈。


 「ただいま」


 「おかえり、珍しいわね朝帰りなんて」


 「うん、ちょっとね」


 加奈は自分の部屋に直行する。


 「今日はゆっくりしよ」


 部屋着に着替えベッドに転んでスマホをいじる。


 改めて昨夜の事を思い出す。

 (明日からどんな顔して会えばいんだろ)



 翌日


 「おはよー」


 「おはようございますって加奈さんテンション低くないですか?」


 「まぁちょっとね」


 「なんかありましたねー?」


 「あっそういえば歓迎会って今週の金曜日だっけ?」


 「話そらせないで下さいよー」


 「ごめんごめん」


 「金曜日ですけど、絶対来てくださいよ」


 「わかってるって」


 「柏木!」

 向こうの方から来る田口。


 (げっ田口だ)

 「おはよ」


 「おはようございます、田口先輩!」


 「おはよう、まりちゃん」


 「なんか用?」

 加奈は冷たくあしらう。


 「冷たいなー顔見に来ただけだよ」


 「えっ私の顔見に来てくれたんですかー?」

 まりがすかさず言う。


 「じゃああとで!」

 そう言うと田口は自分席に戻って行った。


 「えっもしかして私無視されました?」

 まりは少し怒っていた。


 「あいつバカだから」

 適当な返事をする加奈。


 「なんか怪しいなー」


 「そうかなー」


 まりと話をしていると部長が近くを通った。

 「あっ部長おはようございます」


 「柏木さん、これコピーして配っといて」


 「はい」

 

 加奈は言われた通り配り終えると席に戻る。


 「そういえば部長の家この辺なんですよ」

 まりが横から言ってきた。


 「なんで知ってるの?」


 「休みの日に私見ちゃったんです」


 「なにを?」


 「部長が近くのマンション入って行くの」


 「それで?」


 「それだけですけど、えっ冷たくないですかー」


 「そりゃ部長がどこに住んでるとか興味ないから」


 「加奈さんクールですねー」


 「まりちゃんがお喋りなだけだよ」


 「でも私服の部長かっこよかったですよ」


 「そうなんだぁ」

(確かに口数は少ないけどイケメンなのは確かだよね)


 それから部長は毎日加奈にコピーを頼んでくるようになった。


 最初は何も思わなかったものの、なんで毎回頼んでくるのか不思議に思う加奈であった。


 

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